糸井 |
CS放送のようなものって、
延命するほうが毒じゃないの、と、
その意見をいったん取り入れたうえで
考えるしかないと思うんですよ。
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T |
ただ、この放送でいろいろと
考えることはあると思うんです。
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糸井 |
ええ、それはありますね。
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T |
それを地上波に還元できることはできる。
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糸井 |
ええ、壮大な実験場ではあるんですね。
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T |
強大なモデルに対しての
アンチがあったほうが健康的だろうと、
そういうことを通してやっています。
結果的にはこの実験が
1年何千万か赤字を出して、
例えば3年間かそのくらいやってみて、
「あれはダメじゃないか、つぶそう」
と言われることになるかもしれない。
だけど、その3年間というのが、
ぼくにとっては、
ここの実験というのを
地上波に持ってかえった時に
大きなものになるだろう、と。
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糸井 |
あの、だいたい、こう、
「市場から作れよと言われた覚えはない」
というプロジェクトですよね。
それって、いろんな使い道はあると思う。
ある道具は作った。使い道はあるよ、と。
指で絵を描く道具はできたよとか、
まあいろんなものがあるけれども、
求めていたところがはっきりしないものって、
変型して爛熟して妙な味を出しこそすれ、
ほんとうは要らないんじゃないか、という。
だけど、ここに飛び込んじゃったとしたら
何をする? いや、ノーリスクなんだ。
それは、1市場の人から見たら、
「何を言ってるんだか」
って気がすると思うんですよ。
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T |
ぼくはここで、今まで50年の
好景気の中でテレビが稼いだものを
吐き出すしくみ、消費する仕組み、
CSの中にその何かがあるかもしれない。
そういうことも、あると思うんです。
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糸井 |
だとしたら、損するのを前提にして
ものすごくいいことばっかりを
やりつづけるしかないですよね。
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T |
地上波のモデルの中での利益を、
今吐き出しているんです。BSとCSで。
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糸井 |
となると、いいこと、って何よ、
ということになってくるんです。
人々の求めている利益で
還元される利益、しかも
自分も満足する利益って何よ、
ということになりますよね。
それをまたイチから考えたほうが、
いいような気がするなぁ。
もちろん、この電波少年的放送局の中で
やっても、いいと思うんですけど。
なんか、半端なシッポを
つかまれているような気がするんですよ。
ぼくがここにいると、
飲みもののことで困ることっていうのは
ちっともおもしろくない。
だったら飲みもの、っていうと、
電波少年癖のついた人からしたら、
「今までせっかく、一杯の水について
考えてきたのに、もったいないじゃない」
となるかもしれない。
飲みもののことを戦う生物について
取り上げることはもう何年もやってきたから、
それはいいじゃないかと。
芸でくるしんだり、お客がおもしろくないと
言っていることに対して、おもしろさを
自分のほうで探し出す苦しみのほうに、
もうそろそろ行くべきなんじゃないかなぁ。
飲みもののことを、俺はいやだよ、と言って
飲みものはたくさん用意しました。
だけど、そうなると、そのかわりに
飲みもののドラマを使えなくなる。
コミュニケーション耐久レースになりますよね。
人とコミュニケーションしながらやる。
そしてぼくは全力を出すしかなくなって、
でも、終わった時に、きっと
百点をつけられないまま、かならず終わるでしょう。
でも、ひと皮むけるような気がするんですよ。
この時間のぶんだけ、いろいろな人と会って、
かけあっていくということは、
ぼくは変われるような気がしたんです。
Tさんの、ここのところに何かあるような
気がするんだなぁ、というのは
とても好きなんだけど、ひと皮むけて、
「もういいや」
とうつらうつら眠る自分には飽きた。
だから、やってきたんだけども、
みんながそんなふうに思ったら、
ものすごく変わるんじゃないかなぁ。
例えば、若手の子に水を奪ったらどうなるか。
そのことで芸になるんだぞ、と。
それを見せる電波少年的なものが一巡して、
こんどはぼくの番だと言われているんですよね。
そしたら、次にやるのは、
やっぱり、大勢にコミュニケートして、
自分がひっぱって、何かをやろうとしていく、
大袈裟に言えば夢とか生き方とか、
そういうものを、ふだん小生意気なことを
言っている人が、どうゼロから考えていくか、
ということを見てみたいんですよ。
塾みたいなことも、
Tさんのゲームで、あれも
セッティングしたところで終わってて、
答えを作れる人なんて、役にたたない。
問題を作れる人だけしか要らないので、
答えはまかせればいい。
そういう流れを作っていくみたいなことが、
やっぱりおもしろいと思うんですよ。
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T |
ただね、放送作家、というところで言うと、
今のテレビ業界の中のひずみがあるんです。
ひとりで二十何本も抱えている作家が
十何年もつづけてやっているだとか、
新しい力が入らないシステムができていて、
いまバリバリやっているのが
元気が出るテレビの
放送作家予備校出身だったりする。
それから14〜5年経っているんですよ。
新しいものが入っていない。
そこから、これでいいんだ、これでいいんだ、
とひっそりと放送作家たちはやってきたわけです。
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糸井 |
既得権益の集合ですよね。
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T |
そこに新しい風を入れたほうがいい。
一回募集しただけで、1000人来てるんです。
やっぱり世の中も気づいているわけです。
15秒で1000人。
これに関してはぼくのゲームでもあるけれども
テレビ界のひずみみたいなものを、
肩の力をほぐすというか。
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糸井 |
それは、ものすごく目的がはっきりしているね。
世のため人のためじゃないですか。
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T |
テレビがおもしろくありつづけるために、
少しは・・・ということでしょうか。
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