糸井 |
ぼくも、そんなに
整理できているわけじゃないんだけど、
テレビ局がつくっている朝から夜中までの
あのとんでもないむちゃくちゃさを、
一本につくれっていったら、大変なことですよね。
それで、衛星ができたことで、
一本に馴化できるんじゃないかみたいな、
あるコンセプトで縦軸一本切れるんじゃないか、
みたいな幻想があって、案外それが
甘えになっているのかなぁ・・・もしかしたら。
これはぼく、外にいて言っているから、
わからないことなんでしょうけれども、
なんかね、CSって、生まれた時から
生まれなくてよかった子に思えて、
それをみんなが薄々気づいていて、
だったら、一本ずつかたづけていこうよ、
赤く塗ったり青く塗ったりしていこうよ、
ってやっているように見えて、仕方がないんです。
すべてのCSが「埋めた」って見える中で、
この電波少年的放送局が、はじめて
埋めていないように見えたんですよね。
なんか、ぬれないからぐしゃぐしゃさせよう、
みたいな雰囲気を感じたんです。
そこに自分がかかわったら
何か見えるかもしれないなぁ、という気持ちで、
この番組に関わらせていただいているんですけど。
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T |
イトイさんってたぶん、
リードしていくっていうことを
ずっとやってらっしゃったじゃないですか。
ぼくらの場合は、
「何が求められているんだろう?」
っていうところから
スタートする癖があるんですよね。
そこが若干のニュアンスの差になっている。
ぼくらの場合には、視聴率というのが
ものすごいプレッシャーとしてあるから、
それをずっと言われてきているから、
「いま、何が足らないことだろう?」
「いま、テレビがしていないことって何だろう?」
そう考えたところの部分を
やっていくしかないわけで・・・。
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糸井 |
視聴率主義って、母数主義ですよね。
それは大量生産品の発想だから、
「視聴率主義を変えられないから
そこで戦うんだ」という発想になったり、
そうじゃないんだ、とつっぱってみたり、
きっと、視聴率という言葉から
離れられていないんです。
その軸一本で、ほかの軸を出せていないじゃないか、
というのが、なんか、気になるんですよ。
そうじゃないところに、
すでにお客さんの目は行っているのに。
例えば、いまの若い女の子たちは、
「カリスマ店員になりたい」
と言うじゃないですか。
デザイナーでもなく、スタイリストでもない。
それがいいことか悪いことかではなくて、
もうすでに価値観の体系がかわっていますよね。
稼ぎに関しても、長者番付が出ても、
こっちよりこっちのほうが優秀とは思われない。
量ではかるみたいなことに関して、
あたらしい軸を提案できていない、
というのがいちばん大きくて、
企業にしても、売り上げがいい会社になりたいのか、
ひとりひとりの給料を高くしたいのか、
いろいろな軸があると思うんですけど、早い話が、
「売り上げを伸ばしたい」「利益をあげたい」
に埋め込んじゃうから、
他の軸が見えにくいんですよね。
でも、実際は、あの会社いいよね、っていうのは
売り上げの多寡じゃないよね。
企業自体がそうなっている時に、
コマーシャリズムでいる民放というのが、
まだ、母数をのばす大量生産的な
視聴率主義ということを言っているけれど、
そうじゃない軸を、どれとどれが
どうなっていると調べられたとしたら・・・。
Tさんの仕事になると思うんだけど。
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T |
スポンサーのかたがたは、
どの年齢でどの性別の層がどう見て、
ここを変えましょうあそこを変えましょう、
と言ってくるわけですよね。
そこを尺度に変えるしか、われわれとしては
やりようがない。数字をあげるしかない。
それ以外のやりかたが、ほんとうにないですよね。
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糸井 |
それはね、Tさん。
そういうやりかただけじゃない企業もありますよ。
たとえば、宣伝で、テレビを使わないで
2億円を使うとしたら、けっこう使えるんですよ。
いろいろなことができる。
それをわかる企業って、増えてきている。
その会社が嫌いだとしたら、
どんなにCMを見ても買わないですよね。
会社が支持されるということが要る。
好感度という甘ったるいことではなく、
売り上げをあげるだけでもなくて、
人が、自分たちのやっている仕事を
よろこんでくれるとはいったいなんだろう?
つとめている人たちは、そのへんを、
ほんとうは考えていますよね。
こいつらは何をやってきたか、とか、
こいつらはほんとに考えているな、とか、
ものすごくくそまじめなことに、
人の求めていることがあるというか。
Tさんの表現としても
アンコールワットの道のセリフの中に、
こいつまちがってるけどイイとか、
誰が好きかといったら、
道をたくさん舗装する人を選ぶんじゃなくて
いろんな要素で、あの中から選ぶはずで。
商品も、おなじ構造だと思います。
そこのところに、希望を持っているんですよ。
そうじゃないところで諦めたくはない。
会社でそういう気概を
持っている人もいるよ、と。
今日はキリンビバレッジの佐藤さんが
いらしていたけれども、
あの人のやってきている仕事って、
ぼくはずっと見ているけど
やはり、とんでもないですよ。
常識じゃないっていうことでも、
「そのほうが、みんながよろこぶ」
ということを、どことどこをつなげたらできる、
というやりかたで発想していきますよね。
そういう人が増えてきていると思うし、
ジョイントするチャンスが、
今までなかったけど、あると思うんですよね。
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T |
増えているのはなぜですか?
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糸井 |
ひとつは、行き詰まったからでもあるし、
もうひとつは、もうそれを言ってもいいほどに
今までのやり方が脆弱になったということでしょう。
これまでのセオリーがダメだったとわかったとか、
1位になったけど尊敬されなかったとか。
「もう死んでるね」とか言われているとか。
不滅願望とか、大きいと言われたいとか、
実感として満足がほしいとか、とにかく
今までの体勢や価値観が壊れてきていることを
実感しているから、なんじゃないですかねぇ。
値段のヒエラルキーとか、
出世だと思われてきたヒエラルキーでは
ないところでわかられてくるということが、
広がっているんじゃないかと思うんです。
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