糸井 今日は、いろいろと楽しかったです。
お会いできただけでも、光栄でした。
上田 こちらこそ、おもしろかった。
ありがとうございました。
糸井 ほんとにね、いちど、先生が教えてらっしゃる
ものつくり大学
コッソリ忍び込もうかと思ってたくらいで‥‥。
上田 あはははは(笑)。
糸井 だって「ホームズとワトスン君」という以上の
間柄じゃないですか。

だから「なんだこの人は?」と思ってたんです。
「まるで本人じゃないか!」と(笑)。
上田 いやぁ。
糸井 今日、お話させていただいた内容は
「はじめてのドラッカー」という連載にまとめて、
読者に紹介しようかなと思ってます。

「まずはここからはじめたら?」という感じで。
上田 ほぉ、すばらしい。
糸井 で、興味を持てたら、
次に、上田先生の『ドラッカー入門』を読んだら
いいんじゃないかな。

すくなくともウチの会社では
必読文献にさせていただこうと思ってますし。
上田 ああ、ありがとうございます。
糸井 ぼく、本当にこの本、活かしたいんですよ。

つくりは親切だし、先生の熱情は感じるし、
ドラッカーが体系的にわかるし、
もっと売れていい本だと、思うんですよね。
上田 じゃ、この本をイトイさんが改訂するとしたら
どんなふうにやるか、
ちょっと、アドバイスをいただきたいなぁ。
糸井 そうですね‥‥、あくまでひとつの方法ですけど
ぼく、昔、吉本隆明さんのところに通って
いろんな話をお聞きしたのを
『悪人正機』って本に、まとめたんですね。
上田 ええ。
糸井 その本では、各章の冒頭に、
「ここには、だいたいこんなことが
 書いてありますよ」という
中学生にもわかるような文章を、載せたんです。
上田 ほう、ほう。
糸井 ちょっとした「ドア」をつけてあげたと言いますか‥‥。
上田 ええ。
糸井 先生のこの本の場合にも、
「ここでは、こういうこと言いたいんだよね」とか、
「読んでほしいのは、ここなんだよ」とか、
そこがわかれば、
たどる道が、わかってくると思うんです。読者の。
上田 はい、はい。
糸井 逆に言えば、そうやって「道」をつけてあげれば、
本の内容は確かなわけだから、
それくらいでもう、十分かもしれないですしね。
上田 ははぁ。
糸井 「はじめてのドラッカー」を、はじめる本。
上田 なるほど。
糸井 もし、いつか、将来的に
増補改訂版をおつくりになるようなことがあったら、
何かお手伝いさせていただいても、いいですし。
上田 ああ、そうですか。それは、うれしいなぁ。
糸井 ‥‥先生はいま、お仕事としての分量としては、
何にいちばん、時間を使ってらっしゃるんですか?
上田 翻訳ですね。
糸井 あ、やっぱり。1日10時間ですもんね。
上田 いま抱えてるのが‥‥4冊かな。
糸井 そんなに。
上田 翻訳が2冊に、自分で書くのが2冊ね。

『週刊ダイヤモンド』に連載していた
「3分間ドラッカー」ってコラムも
こんど、1冊にまとめる予定なんです。
糸井 おみごとですねぇ。
上田 そうそう、
最近はじめてね、肩書に「翻訳家」って書かれたの。
糸井 いままでちがったんですか?
上田 いままでは、ものつくり大学名誉教授だとか、
立命館大学客員教授だとか、
経団連ナントカ部長とか、そんな類のもので。

ところがこないだね、
はじめて「翻訳家」って書かれたんですよ。

これがうれしくて、うれしくてねぇ‥‥。
糸井 肩書きが「翻訳家」になって「うれしい」とは
ほんとにお好きなんですね、翻訳が。
上田 まだゴチャゴチャついてるんだけど。
糸井 ちなみに「ドラッカーの翻訳」以外の楽しみって、
どういうところにあるんですか、先生は?
上田 ‥‥誘惑と戦ってるんですよ、いつも。
糸井 え?
上田 いや、アホみたいな話なんだけど‥‥
あのね‥‥ぼく「碁」が好きなの。
糸井 ほー、碁ですか。
上田 たとえば、ゴルフで
シングルのやつと勝負するなって言うでしょ。

勝てやしないから。

シングルのやつらは、どうせ仕事なんかやらずに
ゴルフばっかりやってるんだから‥‥って。
糸井 はぁ‥‥(笑)。
上田 いや、あのね、ぼくの好きな碁もそうなの。

段数をある一定ていど以上持ってる人は
やっぱりね、
まともな仕事なんかしてやしないと思うよ。
糸井 そんな乱暴な(笑)。
上田 だって、ものすごく時間食うんですよ、あれ。

だから、逆に言うと、
「碁を打つのやめた!」って決心できたとすると、
自由にできる時間が、どーんと生まれるの。
糸井 ははぁ‥‥。
上田 本を読む時間くらい、ぽっとできちゃうと思う。
糸井 10年越しの本を(笑)。
上田 だから、ゴルフでいえば「シングル」とか、
碁なら「6段以上」とか、そういう人はダメです。

きっと、たいして仕事やってないんだから。
糸井 ちなみに先生の碁は、どのあたりなんですか?
上田 いわゆる5段ぐらいです。
糸井 ほとんどダメなレベルじゃないですか(笑)。
上田 ‥‥微妙ですね。
糸井 おもしろいなぁ(笑)。
上田 ちなみにね、
「碁を打つと頭よくなる」だなんて言うけど、
あれも信用ならないのね。
糸井 あ、そうなんですか。
上田 碁を打ちながらボケーっとしてる人、ちゃんといるし。
糸井 ‥‥(笑)。
上田 みるみる弱くなってる人いるから。
糸井 あの‥‥(笑)、先ほども言いましたが、
今日のお話は
「はじめてのドラッカー」という連載にまとめようと
思ってたんですけど‥‥。
上田 ええ。はじめてのドラッカー。
糸井 いまの「碁の話」も「込み」でいこうと思います。
上田 え? ああ‥‥っと、大丈夫かな?
糸井 大丈夫だと思います。おもしろかったんで(笑)。
上田 そうですか?
糸井 はい。今日は、ありがとうございました(笑)。
上田 いやあ、こちらこそ、ありがとうございました。


在りし日のドラッカーとドリス夫人の、食卓の風景。

<おわります>






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2009-09-29-TUE

(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN