第1回 どの推理小説よりおもしろかった。 2009-09-17-THU
第2回 Theories follow events.    2009-09-18-FRI
第3回 社会生態学者の目。  2009-09-21-MON
第4回 利益とは「目的」ではない。 2009-09-22-TUE
第5回 あなたの本は分厚すぎます。 2009-09-23-WED
第6回 なぜかは、わからないけど。   2009-09-24-THU
第7回 ああ、これもドラッカーだった。  2009-09-25-FRI
第8回 芸術家だったのかもしれない。   2009-09-28-MON
第9回 はじめてのドラッカーを、はじめる。 2009-09-29-TUE




糸井 はじめまして、糸井重里です。
よろしくお願いいたします。
上田 はい、上田でございます。
糸井 とうとうお会いできちゃった。
上田 ふふふ(笑)。
糸井 あの‥‥上田先生のお名前って、
ドラッカーとセットで出てくるじゃないですか、必ず。
上田 まあ、日本で出てるドラッカーの本は、
だいたい訳してますからねぇ。
糸井 ドラッカーと「伴走してる」と言いますか‥‥。
いったいどんな人なんだろうかと。
上田 いやあ。
糸井 それに、先生がお書きになった
ダイヤモンド社の『ドラッカー入門』って本が、
本当に役に立つんですよ。

ドラッカーについては、
これ読んどけば、まずオッケーというくらいに。
上田 ‥‥悪い本じゃないと思うんだけどなぁ。
糸井 はい、いい本だと思います。
上田 あんまり売れないの。
糸井 え、そうなんですか?
上田 わたしのせい。題(タイトル)がわりィや。
糸井 そうですかね?
上田 入門って言いながら
べつに簡単だってわけでもないのかな‥‥
難しいって言われるの。

逆に、本格的なものを読もうとする人は、
「入門」は、手に取らないみたい。
糸井 でも、だとするともったいないですね。

これを読んだら、他のドラッカーの本のことが
大づかみで、わかっちゃう内容ですから。

‥‥そっかぁ、これ、難しいって言われますか。
上田 うん、難しいって言う人がいるんだな。
糸井 書いてある日本語は、難しくないですよね。
上田 そう思うんだけど。
糸井 とにかく、ドラッカーがおもしろいって聞いたり、
実際に読んで興味を持っても、
なにしろ「著作がものすごく多い」ってところで
あきらめちゃう人が多いと思うんです。
上田 うん。
糸井 でも、そこで「引いちゃう」のはもったいない。
上田 もったいない。
糸井 ぼくには、この上田先生の『ドラッカー入門』
「扉を開けてくれてる」って読めたんです。
上田 そう言ってもらえると、うれしいなぁ。
糸井 で‥‥まず、ドラッカーとの関係と言いますか、
そこから説明させていただきますと、
ぼく、ずーっとフリーで仕事してきたんですね。
上田 ええ、はい、はい。
糸井 いまみたいに、組織やチームで動くなんて
思いもよらなかった。
言ってみれば、「職人」だったわけです。

で、職人というのは、包丁の腕さえあれば、
どこでもやってけるんだ‥‥って
それが、誇りだったんだと思うんですよね。
上田 ええ。
糸井 そんなふうにしてやってきたもんですから、
正直に言いますと
「経営」って言葉には、嫌悪感すらあった。

そうですね‥‥44、5歳くらいまでは。
上田 ははぁ。
糸井 「経営」とか「マネジメント」ってのは、
なんか「うまいことやる」みたいに聞こえたんです。

当時、包丁一本の職人にとってはね。
上田 うん、うん、うん。
糸井 だから、なんとなく、
自分には縁のないものだと思ってたんです。

さらに言えば、そのまわりに出てくる
「経済」とか「利益」とか「企業」とか、
そういうワンセットが
考えちゃいけないものだと思ってました。
上田 考えちゃいけない?
糸井 ええ、それらを考えるってことは、
どうしても「効率」って話になってきますから、
職人にとっては「易きに流れる」というか、
楽してトクする方向に行っちゃうんじゃないかって、
そういう気持ちがあったんですよ。
上田 なるほど、なるほど。
糸井 でもね、そうしているあいだにも、
「ドラッカー」って名前は、知らなくはなかった。

ベストセラーに、顔を出してましたから。
上田 ええ。
糸井 とくに、有名になった『断絶の時代』って本は、
言葉として流行語にもなったでしょう?

だから、読んだつもりになってたんですが、
いま思うと、
本当は、何もわかってなかったと思います。

全然リアリティを持って読めてなかったんです。
上田 つまり「イトイさんのドラッカー」としてね。
糸井 そうそう、そうなんです。

その『断絶の時代』のほかにも
これも流行した『ネクスト・ソサエティ』だとか、
ドラッカー以外でも
アルビン・トフラーの『第三の波』とか‥‥
いちおう、読んでみたんですよ。
上田 ほう。
糸井 でもまぁ、リアリティなしに読むのって、
やっぱりダメなもんで、
知ったかぶりで、うなずくのにはいいんですけど、
何の意味もなかったと思う。
上田 そうですか。
糸井 で、ある年の正月に、バリ島へ行ったんですね。

そのときに「読み直してみよう」と思い立って、
『プロフェッショナルの条件』だったかな。
上田 ええ。
糸井 それと『マネジメント』を持ってったんです。
上田 はい、はい。
糸井 その他にも推理小説を山ほど持ってったんですが、
これがもう、どうしたことでしょう。
どの推理小説よりも、おもしろかったんですよ!
上田 ははぁ。
糸井 びっくりしまして。プールサイドで。
上田 あはははは(笑)。
糸井 それまで、ぼくのやってきた「職人仕事」も、
この人の言ってることにつながるなと思った。

ドラッカーって人の書いてることは、
他の、いわゆる「こうすると儲かるよ」って話と
全然ちがったし‥‥。

何より「おもしろいな」と思えたんですよね。
上田 そうなんですよね。おもしろいの。
糸井 だってまず、ドラッカーの人生そのものが、
ひとつの大きな「歴史」じゃないですか。
上田 しかも、その歴史は終わってないわけで。
糸井 ああ‥‥いまも続いてる。
上田 うん、いまも、これからもですね。

ぼくは、5年、10年‥‥50年経っても
「ドラッカー」だと思うんだな。
糸井 そう思われますか。
上田 うん。誰もいなくなった‥‥としても、
ドラッカーは、いるんだ。

<つづきます>






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illustration : NJTP


2009-09-17-THU

(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN