日野原 |
ぼくは、朝も忙しいから
食べれない方が多いの。 |
糸井 |
先生自身が? |
日野原 |
ええ。
だから、テレビをやっていて、
「健康の話をしてください」
というときに、
「朝、起きて、そしてゆっくり
これとこれと何種類食べて、
十分に食べてくださいね」
というふうに言うでしょう?
もしもぼくがテレビで
そんなこと言ってたら、家内が見て
「あんた何いってるの」と言われるでしょう。
だから、言えないの(笑)
ぼくは夜の1時、2時に寝て、
それで5時に起きるとか、朝の4時まで起きて、
朝の6時に起きるなんてことがしょっちゅうです。
起きた直後なんて忙しいですし、
アー行かなきゃ、と思ってパーッとやると、
コーヒー牛乳とジュースを立ち飲みするぐらいだから、
だいたい朝食は2分ぐらいあればいいぐらいで。
よく噛んで何かをそろえてというと……。 |
糸井 |
(笑)とんでもないですね。 |
日野原 |
きょうも、
牛乳1杯とクッキー2つ飲んで来たわけです。
きょうは、7時半まで研究会をやるものですから、
帰ったら夜の8時半です。
8時半になって初めて食事をするわけです。
だからその間、お茶を飲むこともなくてね、
お昼牛乳1杯だけで、ほとんどモノを入れない。 |
糸井 |
(笑)人が聞いたらむちゃくちゃですね。 |
日野原 |
そしたらね、ある患者さんは、私が
「脳卒中だから、血液が濃くなると
サラサラしないから水を飲め」と言うので、
「先生、水飲まないでよく元気ですね」
と言われる。僕はあんまり飲まないんです。
あまり飲まないし、あまり食べない。
何も仕事がなければ充分に食べたり飲んだりできる。
でも、戦争中はそんなことはできないし、
私の仕事というのは、まるで戦争中のように忙しいの。
ただ、戦争中と違って、
自分がやりたいようなことをやっているんだけど。
法律でこれ以上働いてはいけない、
というのに従っていたら、ぼくなんか
3日ぐらいで過労死してしまうぐらいよ。
だいたい19時間ぐらい働いてるものね。
しかも、それを1年じゅうやってるんだものね。
それはもう、「働いている時間」ではないんです。 |
糸井 |
なるほど。
「労働」じゃないんですか。 |
日野原 |
心の持ち方によって、
ホルモンも免疫力も変わってくるわけです。
そういうことが、だんだんわかってきた。 |
糸井 |
先生、いまお話をしていても、
なんか楽しそうに見えますよね。
それがコツでしょうね。 |
日野原 |
「寝ないと大変だなぁ」なんて思うでしょう?
でもぼくは忙しくて、そして
外国に手紙を書いたり講演の準備をしたり、
それから本を書いたりするのは、
夜じゃないとできないから、
11時ぐらいからそういうことをはじめる。
朝6時ぐらいになると
原稿用紙が25枚ぐらい書けて、
それをまとまって書けたことを、
「あぁ、よかったねぇ」と思うのね。 |
糸井 |
うれしいんですね? |
日野原 |
ものすごくうれしいの。
それで病院に来るでしょう?
朝の7時半とか8時半に会議ですよ。
すると研修医がおくれて眠そうにして、
「ゆうべ忙しかった……」と言う。
「君、もっと早く」とぼくが告げるとね、
「いやあ、きのう遅かったし……今、食事してきた」
こっちは、食事しないで来ているでしょう?
寝ないで来ているんでしょう? |
糸井 |
しかも90歳過ぎてる(笑)。 |
日野原 |
それだからね、私は自分がそういうふうに
気持ちよく仕事をできるときというのは
「寝なかったけどよかったなあ」と思うと、
ホルモンが頭にできて、1日がハイになるの。
眠くて、ボヤッとしてるんでなしに、興奮するの。
過度に興奮する。それは、私は自分でできる。
僕はほんとに運動ができないからよくないと思うし、
人には運動しろというけれども、駅に行ったり、
毎週飛行機は乗るし、新幹線も何回も行くし……
そこで歩くというのが、ぼくの運動です。
空港のベルトを歩いている人を
追い抜いてやろうということをいってるの。
乗ってゆっくりしている人なら
すぐに追い抜けるけど、そうでなくてね。
そうすると物すごい速歩が必要になってくる。
そのうえ、わたしはいつも
10キロぐらいの重さの荷物を持っているんです。
飛行機や新幹線で原稿書いたり、
本を読んだりするからね。
だから相当重いんだけど、それでガーッと歩くと
猛烈なトレーニングになる。
北海道や九州から帰るときね、
9時半ぐらいに東京に着くと、
前の晩も寝てないから、身体的には疲れているから、
自動のベルトに乗ろうかなと思うと・・・
「いや、だめだよ」という声が心から聞こえる。
じゃ、頑張る。
こないだの帰りもやったなあ、追い抜いたなあ。 |
糸井 |
ある種の達成感があるわけですね。 |
日野原 |
達成感、達成感。
達成感は物すごいエネルギーをくれるの。 |
糸井 |
つまり、人が仕事だと思っていることを、
先生は、ある種のプレーとして
楽しんでいらっしゃるんですね。 |
日野原 |
プレー。そうですよ! |