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智慧の実を食べよう。
300歳で300分。

「ほぼ日」創刊5周年記念超時間講演会。

ずっと現代の詩人
谷川俊太郎さん


さあ、4人目の長老をご紹介いたしましょう。
詩人、谷川俊太郎さんです

1931年生まれ、73歳。
1952年、第一詩集である『二十億光年の孤独』を発表。
以後、『日々の地図』や『ことばあそびうた』など
現在まで数多くの詩集、作品を発表なさっています。
『マザーグースのうた』や
スヌーピーの名前で一般に知られる
『ピーナッツ』などの翻訳も手がけられ、
詩作に限らず、幅広い分野で才能を発揮されていることは
みなさんもご存じかと思います。
今年の2月には、
息子、谷川賢作さんとのコラボレート作品、
『kiss』のリリースが話題となりました。

さて、今日は
イベントに出ていただくにあたっての
打ち合わせ風景をご紹介いたします。
場所は、「ほぼ日」のある東京糸井重里事務所。
谷川俊太郎さんは、ジーパンにTシャツという姿で、
ひとり、ふらりと現れました。
まるで、近くまできたからちょっと寄ってみた、
というような軽やかさでした。
入口にその姿を認めた糸井重里も
「あ、谷川さん、来たわ」とつぶやき出迎えました。



天気のいい午後に交わされた、
軽やかなやり取りをどうぞ。

糸井 要するに、とっても簡単に言ってしまうと、
現代の長老の集まりだと思うんですね。
なにしろ、いちばんお若いのが谷川さん(笑)。
谷川 そうですねー。
でも、うれしいな、長老かぁ(笑)。
糸井 そのレベルに早く行きたいと思って(笑)。
谷川 ドント・トラスト・アンダー・エイティ」って、
いいなと思ったんですよ。
これはうまいなーと思ってさ。
糸井 実際には70代の人が集まってるんですけどね(笑)。
80歳になってるのは小野田さんだけかな?
谷川 81歳ね。


打ち合わせは、ほんとうに軽やかに進みます。
誤解を恐れずいえば、まるで他人事みたいに。
そういえば、藤田さんのときも、
小野田さんのときもそうでした。
「──で、なにやろうか?」
そういう、懐が深いゆえの軽さみたいなものがあって、
聞いているほうとしては非常にわくわくするのです。

谷川 300分、やるわけでしょう?
糸井 300分くらいにはなると思うんです。
谷川 この4人で決まりですか?
糸井 いまのところはそうですね。
ただ、まだ交渉中の人もいます。
まあ、深く考えずに、「ようがす!」って
言ってくれる人がいれば成り立つと思うので。
谷川 休憩はさみながら、
ひとり1時間くらいですか。
糸井 そうですね。
やりやすい形でやっていただければ。
谷川 ぼくは、まあ、ひとり演説って
あんまり得意じゃないんですよね。
糸井 らしいですね。
谷川 だから、詩、読んでもいいでしょ?
糸井 あ、もちろん。
谷川 そのほうがぼく、楽なんで。
こんど、ぼくはアンソロジーを出すんですよ。
それは、「死」についての詩を
集めたものになると思うんですけど。
たぶんそれが9月には出てると思うんです。
それを、話しながら、
読ませてもらうといいかなあって。
糸井 あー、いいですねぇー。
谷川 ちょっと長老っぽいでしょ(笑)。

というわけで、方向性は
ほんとうにあっさりと決まりました。
なんというか、深ぁい信頼関係が最初にあって
そこから自然に流れていくようなやり取りでした。
ふたりの話はときに横道にそれながら続き、
やがて、イベントそのものの
意義についての話になりました。
このイベントの意義や、催す動機について
糸井重里はこんなふうに説明します。

糸井 一般的な企業の定年っていうのが、
長いところで65歳なんですよね。
で、そこから別会社に出向してどうのこうので、
ま、せいぜい2年なんですよ。
そうすると、67歳の人が、
まったく役割を要求されなくなるんですよ。
つまり、特別に講演を商売にしてる人以外は、
役割がなくなっちゃうんです。
そうなると、年寄りの話を聞くっていうことが、
なんか、こう、アウト・オブ・ファッション
みたいな扱いを受けてて。そこが、変ですよね。
谷川 なるほどね。
糸井 それをずーっと思ってて。
ぼくは、年上の方から話を聞いては、
こう、元気づけられて生きてるもんですから、
それを分けてあげようかな、と。
それがテーマのひとつなんです。
たぶん、20代や30代の、若い人たちも集まるんで、
その人たちをビックリさせたいんですよ。
イベントが終わったあとで
観られなかった人に、
「もったいなかったーっ!」て言わせたい(笑)。
谷川 そこまで、長老たちに
魅力があるといいんだけどねー(笑)。
糸井 いや、でもやっぱりね、
打ち合わせでひとりずつお会いしてますけど、
アナーキーですよね、みなさん。
谷川 まあ、そうですね。
それは、ほんとそうですよ。
だんだん楽になってきますね。
糸井 子どもの持ってるよさに、
もう1回、こう、
つながってきてるっていう感じがして。
谷川 そうですね。
糸井 4人の方、どなたも、会ったときに
「なんでもいいんじゃない?」って
言ってるような人ばかりなんですよ(笑)。
小うるさいこと、言わないんです。
谷川 それでぼくも糸井さんの
お眼鏡にかなってるわけだ(笑)。
糸井 だって、そっちがほんとでしょ?
谷川 ねぇ、歳取ったら、
絶対そうなるんだと思うけどさ(笑)。
糸井 そっちがほんとだと思うんですよ。
谷川 いや、でも、2種類いるんですよ、人って。
小うるさくなる人と、どうでもよくなる人と。
分かれますね、こう、Y字型にね、どっかで。
おかしいねえ(笑)。
糸井 三叉路なんですよねー。
でも、いまこの企画を人に話すと、
みんなものすごくおもしろがるんですね。
じゃあ、誰かが実際にやったかっていうと、
やってないんで、ちょっと、
客入んなくてもいいから、
思い切ってやってみようと思って。
いちおう、ちゃんと入場料も取るつもりですし。
場所も東京国際フォーラムですし。
谷川 けっこうデカいでしょう?
糸井 ちょっとね、怖いんですよ(笑)。
谷川 それは心配だ、なんかね(笑)。
糸井 たっぷり入ると1500人くらい入るんですけど。
でも、まあ、この企画で1500人集まったら
気持ちいいだろうと思うんですよ。
谷川 それはすごいですよねぇ。
糸井 こうやって、ひとりずつね、
打ち合わせでお会いするとね、
もう絶対にやりたくなるんですよ(笑)。
谷川 (笑)

けっきょく30分くらいでしょうか?
そういったやり取りが、
晴れた日の午後に、金魚の泳ぐ水槽の前であり、
谷川さんは、来たときと同じように
軽やかに席を立たれました。

谷川 まだ9月だから時間もあるし、
ぼくも、何か思いついたら、また連絡します。
糸井 そうですか。わかりました。
あ、谷川さん、ハラマキ使いますか?
谷川 ハラマキ?
ときどき、お腹壊したら使うけど。
糸井 あ、じゃあ、ちょっと、
おみやげに持って帰ってください。
ハラマキ、いいですよ。
谷川 ああ、ありがとうございます。
糸井 ……谷川さんって、
なんにもスポーツやってないのに、
いい体格してらっしゃいますねー。
歩いてらっしゃるのが、いいのかな。
谷川 いや、これは父親の遺伝なんですよ。
糸井 あ、たんなる遺伝(笑)。
谷川 ほんと。あの、こうやって横から見ると、
けっこう、奥行きがあるんですよ。
糸井 ある。
谷川 それは、父親の遺伝で。
あと、ハトムネは母親の遺伝なんですよ(笑)。
糸井 頭も奥行きがあるというか……(笑)。
谷川 頭も奥行きがあるんですよ。
これは父親系かもしれない。
糸井 ヨーロッパ人の血が入ってるんですかね?
谷川 知らない(笑)。どうして?
ヨーロッパ人は奥行きがあんの?
糸井 ヨーロッパ人の特徴でしょ?
谷川 あ、そうなんですか?
糸井 ええ。
谷川 そういえば、こないだ、
ピテカントロプスの頭蓋骨見たら、
けっこう奥行きがあった(笑)。
糸井 へええ……。

立ち去り際に、そんな愉快なやり取り。
ハラマキをバッグに滑り込ませて、
4人目の長老、谷川俊太郎さんは、
また颯爽と帰っていきました。

2003-07-11-FRI

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