質問:
小説をどんなふうに書いていますか?
ぼくは手書きで書いているときは、
ほとんどの時間は
家の中を、動きまわってます。
手書きは集中しにくいんです。
その点パソコンはだめなんです。
簡単に集中できちゃうから、
時間があるかぎり
いじくってモニタを見つづけちゃう。
これから小説を書こうと
思っている人には、特に
「パソコンがあるから
 それで書くというのではなくて、
 一度は手書きも試したほうがいい」
と言いたいですね。
手書きのほうが
その世界に入りにくいんですよ……
たとえば専業主婦の合間に書くには、
パソコンのほうが
アタマの切り替えはしやすいし
その世界に入りやすいんですが、
入りにくいというのがいいんですね。
書くバーが高くなるということですから。
バーが低かったら、
多少おもしろくなくても書けちゃうでしょ。
手書きだと、やっぱりただ
モニタを見ているだけではなくて
まわりの風景を見たりすることになるんです。
ぼくの場合は部屋の机の前が窓だから、
いつもかならず風景を見ているわけです。
小説を書いてるより
風景を見てる時間のほうが長いんですよね。
特にぼくは昼間にやるから、
雲の動きとか光の変わりかたとかが
おもしろくて……
だから手書きとパソコンって、
いちいち違うんですよ。
手書きは書きはじめるのに時間がかかって、
その集中力がまたなかなか持続しない。
そしてその気が散っているあいだに
外の風景を眺めていたりする。
パソコンは簡単に集中が作り出せて、
書いているあいだも集中力が持続するから、
外の風景なんか見たりしない。
手書きは結局ずうっと
外の世界とつながっているんだけど、
パソコンは簡単に
自分の世界に閉じこもることができる。
でもその「自分の世界」っていうのが、
小説にとって本当にいいのか?
ということなんです。
「そんな簡単に『自分の世界』なんて
 言っちゃっていいの?」って。
明日に続きます。
感想を送る 友達に知らせる ウインドウを閉じる 2005-06-23
Photo : Yasuo Yamaguchi All rights reserved by Hobo Nikkan Itoi Shinbun 2005