アースダイバーの経験論!
経験論について プロフィール
質問:
中沢新一さんの魅力は
どういうところにあると思いますか?
「なぜ生まれたのか。
 死ぬとどこへ行くのか。
 こういった超難問をめぐって
 すべての神話(物語)は紡ぎ出されてきた。
 すべての人間の知の営みは、
 この問いに結びついている」

中沢さんが講義か講演で言っていて、
すごく心に残っています。
本だけではなくて
すべての表現(映画でも演劇でも)も
同じだと思うのですが、
人類がずっと考えてきて
何千年も何万年も答えが出ない問題に、
何らかのかたちで答えようとすることが、
本当の意味での知というものではないか、
とぼくは思っています。
学問研究についていえば、
心理学、歴史学などの分野の枠があるから、
「なぜ生まれたのか」
みたいな問いに触れなくても
研究をできるようになっています。

そんな枠の中で満足する研究が多い中、
「人間とは何か」
という根本的な問いを
迫力満点で追求する中沢さんの著作は、
読書の醍醐味というものを堪能できます。
なんというか、本を読みおわった後に、
世界の見方が変わりますからね。
また逆に
高尚な神話の話をしていても、
ふだんの生活に関係づけることを
決して忘れないところも、
中沢さんの大きな魅力のひとつだと思います。
電車に乗ると片手に夕刊紙、
片手にレヴィ=ストロースの原書なんて感じですよ。
中沢さんは、
老若男女を問わずどんな人にも、
モテたいとか受けたいという気持ちが
強い方じゃないかなあと思います。
おもしろい本を書く人は、
この「モテたい」という気持ちを
いい方向に出せるんじゃないでしょうか。
中沢さんは賞も総ナメしているし、
本を出せば売れるし、評価も高いのに、
それでも原稿を送ってくださった時に、
こちらがすぐに読んで返事をしないと
気にされるんです。
読んだかどうかの電話もいただいたり……。

あれだけのかたでも評価を気にするのか
というふうに最初は思いましたが、
むしろあれだけの人だからこそ、
読者の評価をちゃんと知りたいのかもしれません。
読者をよろこばせたいという気持ちを
ポジティブに出せるところも、
中沢さんの魅力だと思うんです。
そういえば、
山奥の村で道に迷っちゃって、
みんなでまいったなあと言ってたら、
突然道をたずねるのに、
「おばちゃーん! 新野ってどっち」
と、笑顔で呼びかけたんです。
おばちゃんもごく自然に
「こっちだよ」と教えてくれました。
絶妙の間合いでした。

ああいう感覚が、すんなりとしかも
一気に心に入ってくる
文章のベースにあるのかななんて感心しました。
いつもおしゃれで
「五十歳過ぎてから調子がいいんだ」
とご本人もおっしゃってますが、
見た目も、すごく若い。
「二十一世紀、中沢新一は、生まれ変わった」
とご本人もおっしゃってましたが、
今、中沢さんはやるべきことが
しっかり見えて、仕事がおもしろくて
仕方がないという感じがびんびん伝わってきます。
ますます、目が離せない方だと思います。

(次回に続きます。)
photo
Photo : 大森克己

感想を送る 友達に知らせる ウインドウを閉じる

2005-07-14-THU

All rights reserved by Hobo Nikkan Itoi Shinbun 2005