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質問:
中沢さんの本を読んでいると、
実際にどこかに出かけたくなりますね。 |
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古代人にとって洞窟は、
いつもと違う世界にすべりこんで
もうひとつのいつもは見えない世界を
体験してくる儀式のためにあったそうです。
中沢さんに影響されて、ぼくは去年
フランスで四箇所の洞窟巡りをしてきました。 |
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最初に訪れたのが
フォン・ド・ゴームと呼ばれる洞窟で、
旧石器時代に描かれた壁画を見たとき
不思議な感動を覚えました。
とっても上手なんです。
落書きや暇つぶしで描かれたとは思えません。
それからおもしろいのが、
デコボコした壁面上に描かれていて、
そのデコボコを利用した絵になっているんですね。 |
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だから近代の絵画のように
ゼロから生みだすというよりは、
既に何か浮き出ているものを
こちらの世界とつなぐために
描いていたのかもしれないなぁとか、
なんだか深読みをしたくなるような
何かがあるんです。
そういうことは
写真で見ているとわかりません。 |
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またカンテラを消した時のあの暗さ……
漆黒の闇が目から入ってくるような
あのおそろしさの中で
描かれているものだというのも、
現地に行かなければわからないなと思いました。
中沢さんが実体験でものを知るように、
こういうものはどれだけ実地で
ものを見ていけるのかなんだなぁ、と考えています。 |
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編集者が著者に
本を書いていただく場合
いろいろなケースがあると思います。
でもその一番のベースには、
興味があるかないか、
好きか嫌いかということがあると思います。
自分の興味のないジャンルを開拓しようとか、
売れている分野だからやろう
というようなことはありますが、
すこしでも好き、
すこしでも興味があるというのが、
大前提になると思います。 |
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自分の見聞できる世界は
限られていますから、
価値のあるものも
取りこぼしてしまうことも
あるのではないでしょうか。
またたまたまある時期に
自分が抱えていた問題に関連する分野に
強い興味を持っては、
偏った立場から依頼することもあります。 |
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自分の出会ったものの範囲、
自分のおかれている状況、
自分の好き嫌いということも、
どんな本を作るかに
関係したりするんですよね。
それはそれで仕方がないと思うんです。
世の中にたくさん編集者がいるということは、
多分ぼくがたまたま好きではないものも
他の編集者が好きだったりし、
またその逆もあって、
それで多様な本が出るということに
つながっているのだと思います。
(次回に続きます。) |
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Photo : 大森克己
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