アースダイバーの経験論!
経験論について プロフィール
04 質問:
中沢さんの本を読んでいると、
実際にどこかに出かけたくなりますね。
古代人にとって洞窟は、
いつもと違う世界にすべりこんで
もうひとつのいつもは見えない世界を
体験してくる儀式のためにあったそうです。
中沢さんに影響されて、ぼくは去年
フランスで四箇所の洞窟巡りをしてきました。
最初に訪れたのが
フォン・ド・ゴームと呼ばれる洞窟で、
旧石器時代に描かれた壁画を見たとき
不思議な感動を覚えました。
とっても上手なんです。
落書きや暇つぶしで描かれたとは思えません。
それからおもしろいのが、
デコボコした壁面上に描かれていて、
そのデコボコを利用した絵になっているんですね。
だから近代の絵画のように
ゼロから生みだすというよりは、
既に何か浮き出ているものを
こちらの世界とつなぐために
描いていたのかもしれないなぁとか、
なんだか深読みをしたくなるような
何かがあるんです。
そういうことは
写真で見ているとわかりません。
またカンテラを消した時のあの暗さ……
漆黒の闇が目から入ってくるような
あのおそろしさの中で
描かれているものだというのも、
現地に行かなければわからないなと思いました。
中沢さんが実体験でものを知るように、
こういうものはどれだけ実地で
ものを見ていけるのかなんだなぁ、と考えています。
編集者が著者に
本を書いていただく場合
いろいろなケースがあると思います。
でもその一番のベースには、
興味があるかないか、
好きか嫌いかということがあると思います。
自分の興味のないジャンルを開拓しようとか、
売れている分野だからやろう
というようなことはありますが、
すこしでも好き、
すこしでも興味があるというのが、
大前提になると思います。
自分の見聞できる世界は
限られていますから、
価値のあるものも
取りこぼしてしまうことも
あるのではないでしょうか。
またたまたまある時期に
自分が抱えていた問題に関連する分野に
強い興味を持っては、
偏った立場から依頼することもあります。
自分の出会ったものの範囲、
自分のおかれている状況、
自分の好き嫌いということも、
どんな本を作るかに
関係したりするんですよね。
それはそれで仕方がないと思うんです。
世の中にたくさん編集者がいるということは、
多分ぼくがたまたま好きではないものも
他の編集者が好きだったりし、
またその逆もあって、
それで多様な本が出るということに
つながっているのだと思います。

(次回に続きます。)
photo
Photo : 大森克己
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2005-07-20-WED

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