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質問:
カイエ・ソバージュ・シリーズ、
ものすごくおもしろいですよね。 |
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カイエ・ソバージュは、
ほんとうにおもしろかったです。
今までの中沢さんの仕事の
総まとめという感じを受けました。
二十年近く書き続けてきた
中沢作品の全体への
すばらしい解説になっていると思います。 |
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中沢さんの本は
ぜんぶ読んでいると思っていたのですが、
そのときになって
半分くらいしか読んでないことに気づいて、
あらたにすべて読みました。
すると昔の著作のバックグランドに
すごく一貫したテーマを感じました。
そのひとつの中心テーマが
先ほどお話をした「無意識」です。 |
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選書本が全体的に
薄く読みやすくしようという流れの中で、
カイエ・ソバージュ第五巻に関しては
「もう、中沢さんに
好きなだけ書いていただきたい」
ということで、
五巻目の『対称性人類学』は
中でも特に分量が多いし
内容もドスンと来るものです。
中沢さんのこれまでの歩みを総括して、
これからどういう方向に行くのかを
宣言したすばらしい本なんです。 |
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実際に
中央大学で行われた講義にも出席しましたが、
頭がぴりぴりするような
切れ味のいいものなんですね。
「人間は言葉を使ってものを考えます。
だけどたとえば『コップ』と言っても
現実のコップというのは無限にあるわけで、
『コップ』という観念自体は
空っぽのままなんです。
つまり人間は宿命的に空っぽのものを……
神のような概念を考えざるをえません」
というようなことを、
中沢さんはドーナツの絵を描きながら
説明するわけですけど、
自分がこれまで持っていた疑問が
解けるというか、「あぁ、そうだ!」と
納得するような瞬間が何度もあって、
ほんとにすごかったんです。 |
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暴力はなぜ発動されるのか。
神のような存在を
否定できない感覚は、なぜ生まれるのか。
国家とはいったい何なのか。
権力というのはなぜイヤなのだろうか。
ぼんやり感じていた疑問に
いちいち答えてくれるような講義でした。
おおきな問題をかなり
明確に答えてくれるという魅力がありました。
(次回に続きます。) |
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Photo : 大森克己
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