質問:
スペインにおける
サッカー選手の育て方は、どのようなものですか?
一般的に
スペインサッカーについて言われるのは
「守らないよね」ということですが、
確かに守備には重点を置かず、
攻め、攻め、攻め、がよしとされています。
守りに重点を置くと
「さすが、守備が堅い」とほめられずに、
「イタリアのサッカーみたいでセコイ。
 ぜんぜん、おもしろくない!」
と批判にさらされるわけですね。
それぞれの色や味が出ることこそが
サッカーのすばらしさで、
それでおたがいに違う国のサッカーを
けなしあいながらやっていれば、
それでいいわけじゃないですか。
だから日本のサッカーも
「何を言われようが日本はこれでいい」
という形が出てきたら、ほんとに
文化として根づくのではないでしょうか。
今は
ドイツの形も
アルゼンチンの形も
ブラジルの形も
取りいれているような状態で、
さらにスペインの形もイタリアの形も
取りいれたいという
試行錯誤の成長過程にあるわけでしょうけど、
「日本色」みたいなものができたとして
「ほんとにあいつらはセコイ」
と世界でケチョンケチョンに言われて、
はじめて互角になれるのかなぁとは思いますね。
最近、私は日本からの
高校生や大学生のクラブをスペインで受けいれて
コーディネートをしたりするんですけど、
日本人は決まりに当てはめた動きが得意かもしれません。
高校生レベルでも、
どこもラインナップやラインダウンを
ディフェンスにさせると異様にうまいわけですね。
ちいさい頃から
「前へならえ」「休め」「体育座り」
と軍隊のように育てられるせいか、
われわれ日本人は
明らかにそういうことに長けているようなんです。
スペイン人に守備の動きを
しっかり覚えさせようとしても
むずかしいというような差はあります。
集団意識とかシステムみたいなことが
極端に苦手なので
そこを求めても選手がついてこられません。
私は決まりを守ることが得意な日本人ですが、
スペイン人には「決めごと」や「約束ごと」を作っても
うまくいかないとは思います。
だからチームでは
「私が監督でいる以上
 これとこれとこれだけは譲りません」
と絞って伝えておきます。
最小限のルールの中で
二十人の選手たちがバラバラの方向にあるのを
すこしずつ修正してゆくみたいなことをしています。
あとは選手の輝きをひきだせるかどうか、
というだけですからね。
輝きがない人は選手として限界があるし、
輝きというのは、
個人の心の中からしか生まれてこないのだから
「これさえやればいいから、
 あとは好きなようにやりなさい」と伝えるわけで。
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2005-07-25
Photo : Yasuo Yamaguchi
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