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質問:
さきほど話に出ていたメキシコ代表監督の
すばらしさを、具体的にきかせてもらえますか? |
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はい。
ハビエル・アギーレさんは
メキシコ代表監督を担当した後に
スペイン一部リーグのオサスナというチームに
監督として招聘されたので
「あの監督が来たんだ」と思って注目していたら、
インタビューでの話がものすごくうまいんですね。
調子がいいわけじゃなくて
無駄のないインテリな話をするんです。
サッカーフォーラムで私がパネリストとして呼ばれた時の
メンバーのひとりにもたまたまハビエルさんがいらして、
「新聞見たよ。君のなしとげたことはすばらしい。
ほんとにおめでとう」と彼の方から握手をしてくれました。
やっぱりいい人だと思いましたし、
フォーラムの中でも話が抜群におもしろいわけです。 |
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会場も沸きますし、彼への質問は長い……
一般相手にこれだけ話がうまいということは、
ロッカールームで選手二十人を前にした時の
声かけとかメッセージの送り方とか、
強弱のつけ方とかの技が
相当にうまいんだろうなぁと感じて、一度、
彼の選手になってみたいと思わされましたね。 |
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彼の話のおもしろさは
「笑わせればいい」ではありません。
笑いは沸いて一瞬で消えてゆくものなんですけど、
人柄がほんとに言葉にも出ていて、
謙虚さがにじみでていて、重みのある言葉が多いし、
人を惹きつける何かを持っている……
ずっとジャブを浴びているかのように
心にしみてくるんです。 |
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しかも、すばらしいレベルでやられているのに
「ぼくは何者でもありませんから」
と心から思っているのがわかる……その謙虚さが
彼の姿勢だし人間性なのだなぁと思いました。
選手も人間ですから、納得のいかないまま
シーズンを終える人もいるでしょうけれども、
あんな監督がいれば、半分は納得がいかなくても
「彼が言うからにはそうなんだろうな」
と思うかもしれないという監督なんですね。 |
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日本の方には
「佐伯さんはいづれは日本で監督やりたいの?」
とよく聞かれますが、そういう気持ちはありません。
確かに選手希望でも指導者希望でも
ものすごい数の日本人がサッカー留学という名目で
海外に出ていますけど、ただ、
私はその人たちの多くの人が考えるように
「ハクをつけて日本に帰ろう」
と思ったことは一度もありません。
そんなことのために
十三年もスペインで生活しているわけではありませんし、
私はひとりのスペインサッカーの指導者として、
スペインサッカー界に育ててもらったことに
感謝しているだけなのです。 |
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感謝というのはいろいろな意味で、
私のことを叩いたマスコミや、
噂にしたマスコミ、叩いた監督仲間、
無支払いで逃げたクラブ……
いろんなことを教えてもらいました。
私はスペインの地元の人間から
激しく叩かれた経験があります。他の日本人指導者は
おそらく叩かれたことすらないわけです。
叩かれるまでにも行っていないわけですね。
私は嫉妬の対象になったぶん
「少なくとも彼らの害にはなった」
という自負があります。
私の名を聞いてすぐに悪口を言う人は
マドリッドにいますから、
それはひとつの勲章だなぁとは思うのです。 |
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佐伯さんの談話は、今日で終わりです。
ご愛読いただいて、ありがとうございました。
感想などを、ぜひ、お送りくださると幸いです。 |
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2005-08-01
Photo : Yasuo Yamaguchi
All rights reserved by Hobo Nikkan Itoi Shinbun 2005 |
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