質問:
華のある選手はどこがちがうのでしょうか?
輝きというのは
自分ひとりで輝くわけではないと思います。
「やっぱり華があるなぁ」という選手は
心を外に向けているし、聞く姿勢も持ってます。
もちろん聞く姿勢を持ちながら
言われっぱなしではなくて……
そういうコミュニケーションの行き来があってはじめて、
人と人は輝きあったり照りかえしあったりするんですね。
くすんでいる子やいじけている子や
笑顔の少ない子というのは、
人の話を聞く以前に心を外に向けないわけで、
外を見た時には他の人の持っているものが
ねたましくうらやましくなる……
スペイン人の長所の創造性は
ほんとうにすばらしいのですが、
スペイン人の短所の「嫉妬」の感情は
ものすごく強いものだなぁと私は実感しています。
妬みあいや恨みあいは
チームに確実に悪影響をおよぼしますし。
私は周囲のスペイン人の監督仲間に嫉妬されて
ずいぶんいろんなことをやられましたし、
私の成功を絶対によろこんでくれない人とかが
周囲にはいますね。ただ、他者を認めることが
できなくなったら、やはり人間は
もう終わりだよなぁとは思いますけど。
「選手のポジティブなところを見つけたら、
 すべて言葉にして伝えてあげる」
というのは徹底しています。
練習場や試合場では声が聞こえない場合があるので、
その時には私は聞こえるまで言いつづけます。
選手を呼びとめて、振りむかせても
「今のオッケーだからね!」と伝えます。
聞こえないかもしれないけど、
私は言ったからいいや、みたいなことはありません。
伝わらなければ、
ほめる意味がないんです。
サッカーの上達の近道って、
そこにしかないと思うんですよね。
サッカーというスポーツは
長年続いていますから、
訓練方法も出つくしているわけです。
戦術研究、ボール、スパイク、グラウンド……
すべて改善されている情報社会において、
監督が選手に何をしてあげられるかと言えば
「すばらしく高度で最新の練習メニュー」
とかではないわけですよね。
むしろ単純な練習でも、
そこで監督がどんな言葉をかけているのかが重要でして。
かけた言葉が、選手にどう伝わっているかの方が、
見ていると結果につながるような気がするんです。
つまり、一部リーグの選手も
小学生がするような練習をしていてもいいわけです。
何が違うのかと言えば、指揮官が
そこで選手に何を伝えてフィードバックしているのか、
言葉が実際に伝わっているのか伝わっていないのか……
そういうところが勝負なのだと思うんですよね。
「スペインサッカーならではの練習方法の本とか、
 もしもあったら送ってください」
と日本の指導者に言われるんですけど、そんなものは、
はっきり言ってどこからでもインターネット上からでも
ひっぱってこられるわけですよ。
マニュアルは日本にも沢山あるでしょう。
そういうところではないところに、
ほんとは気を使わなければいけないんじゃないかな、
と思います。
トップへ戻る
2005-07-27
Photo : Yasuo Yamaguchi
All rights reserved by Hobo Nikkan Itoi Shinbun 2005