怪・その9

「お盆前の引っ越し」

我が家は最近引っ越したばかりなのですが、
お盆を前に、一つ心配な事があります。

もう何十年も前のことですが、
おじが現在の家に引っ越した年のお盆の事でした。

当時おじの家には仏壇はなかったのですが、
引っ越したその家には仏間があったそうです。

元いた家のすぐ近くで、
以前そこに住んでいた家族とも
面識があったということもあり、
何事もなく過ごしていたそうですが、

お盆の夜、奇妙な事が起こったそうです。

おじ達の寝室は二階にあったのですが、

深夜、玄関から

誰かが家に上がり込む足音が
聞こえてきたというのです。

その足音はそのまま居間のドアを開け、
居間を抜けて
奥の仏間の方へと歩いていったそうです。

おばはとっくに寝ていて、
おじは泥棒ではないかと
息を殺して様子を伺っていたそうです。

足音は居間と仏間をうろうろ歩き回ると、
やがて玄関へと戻って聞こえなくなりました。

気味が悪かったのですが、
おじはおばを起こして
そっと一階へと降りてみました。

玄関には間違いなく鍵がかかっていました。
家の中は荒らされた様子もなく、
取られたものもありません。

結局、おじの気のせい、
ということにその日はなりました。

しかしその足音は
お盆の間じゅう毎晩やってきて、
一階を歩き回って帰って行き、
お盆明けと共に来なくなったそうです。

おじによると、
以前住んでいた人の仏壇に入っていた
仏さんではないか、との事。

引っ越した事がわからずに、
毎晩うろうろしていたのではないか、と。

その後、
その足音が来ることはなかったそうですが、
亡くなった人に住所変更を教えるのは
どうすればいいのか。

うちの祖父母は無事に新居にたどり着けるのか、
ちょっと心配です。

何故なら、以前の実家には
もうすでに違う家族が住んでいるからです。

迎え火の習慣って、
こういう時のためだったのかも、
なんて思いました。

(独)

こわいね!
2016-08-08-MON