フランコさんのイタリア通信。 |
不運の金曜日、ドーピング裁判と不正告発。 金曜日、それは一週間のうちで最も呪われた日と、 イタリアでは伝統的にそう言われています。 そしてまさにこの11月26日の金曜日と12月3日の金曜日、 イタリアサッカーにとって重大で危険な知らせがふたつ、 舞い込みました。 まずひとつめの重大ニュースとは、 ぼくがこの夏にここに書いた ユベントスのドーピング疑惑裁判に、 ひとつの判決が出たのです。 この事件の発端は1998年にさかのぼります。 チェコ出身の監督であるゼーマンが、 イタリアサッカー全般と、 特にユベントスに対しての重大な告発をしたのです。
ユベントスはイタリアで最も愛されているチームです。 イタリア全国リーグのカンピオナート、 セリエAで最も多く勝利しているチームです。 そして新聞やテレビの批判から、最も守られてもいます。 それはユベントスが、イタリアの主要な民間企業である Fiatの影響下にあり、そのFiatの経営陣が、 新聞やテレビのみならず、 政府にさえも影響を及ぼすことのできる アニェッリ一族で構成されているからです。 そしてこの告発は、 1998年当時に一番のアイドルとみなされていた ジャンルーカ・ヴィアッリと アレッサンドロ・デル・ピエロの名前を ゼーマンが出したことで、一大キャンダルに発展しました。 ゼーマンは 「イタリアサッカーは薬局から出るべきだ」と言いました。 そして、ヴィアッリやデル・ピエロなどの選手たちが 短期間で、目に見えて驚くほどに筋肉を発達させた、 とも言いました。 「薬局から出るべきだ」 このゼーマンの短い言葉は、 ユベントスが選手たちの健康を危険にさらしながら 薬物を使っているというドーピングの告発だと、 だれもが分かりました。 ユベントスのホームであるトリノ市の裁判所は尋問を開始し、 長い長い裁判が始まりました。 立証からは、少なくも2人の選手 (タッキナルディ、コンテ)が 1994から1998年の間、 規定量を超える薬物投与を受けており、 彼らの能力を高める為にEPO(エリスロポエチン)も 投与されていたという結論が出ました。 結審までに6年もかかる大変に長い裁判でしたが、 まさに去る11月26日の金曜日に、 ユベントスの医師であるアグリーコラに 1年10ヶ月の禁固刑が下されました。 いっぽうユベントスの経営責任者は、 彼の責任を立証できなかったとの理由で赦免されました。 選手にドーピングをさせた、この医師の動機は、 実力以上の結果を出させたかったということです。 「スポーツ的なごまかし」ですね。 この医師は1994から1998年の期間に、 サッカーの試合の勝利を目的に 選手たちに投薬を続けていました。 アグリーコラ医師は控訴しましたから、 2回めの裁判が始まるまで、 そしてそれはイタリアの裁判の遅さからすると いつになるか分かりませんが、 それまでは投獄はされません。 これを受けて多くの人びとが、マルチェッロ・リッピに イタリア代表チームであるアズーリの監督を 辞任するように要求しました。 まさにその期間のユーべの勝利が 当時ユーべの監督だったリッピを有名にし、 その成績を買われて 彼は代表チームの監督になったのですから。 でもリッピは辞任していないのですけれど。
そしてイタリアサッカーを、 すぐにもうひとつの危機が襲いました。 経営面の不正です。 このふたつめの「悪いニュース」が流れたのも 次の「金曜日」、12月3日のことでした。 2002年にフランコ・センシと セルジョ・カニョッティによって犯された 収支決済の偽装について調査が行われました。 その期間にセンシはローマの会長で(今もそうです)、 カニョッティはラツィオの会長でした。 カニョッティはその後、 ラツィオを売らざるを得なくなりましたが。 告訴によると彼らは、 選手たちに数百万ドルを支払ったと収支決済に載せながら、 実際にはその10分の1しか 支払っていなかったとのことです。 ローマとラツィオはミラノの株式市場に 上場している企業です。 2002年当時もそうでした。 実際にこの二人の会長が収支決済を偽って 私腹をこやしていたとしたら、 有罪は免れないでしょう。 こんなふうに、 イタリアのサッカーの堕落を示すようなニュースが、 ふたつとも金曜日にもたらされました。 魔の金曜日! 偶然でしょうか。 ■□■■□■■□■■□■■□■■□■■□■ ところで私事ですが、 ぼくから読者のみなさんに、ちいさなお知らせがあります。 じつは先日、イタリアのジャーナリズム界の、 イタリアでは重要な賞のひとつ、 ジャンニ・ブレラ賞をぼくが受賞しました。 言いようもないほどのこの喜びを、 みなさんとわかちあえたらと思います。 ぼくの思いを、本当に自由に表現することが許されている 「ほぼ日」への訪問者であるみなさんに、 ぼくに与えられた賞をささげます。 いつも読んでくださり、ほんとうにありがとう!
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2004-12-06-MON
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