フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

ジェノア続報、セリエC降格の真相。



イタリアサッカーの歴史が、また、書き直されました。
それも、悪いほうに。

ジェノアとトリノのこの歴史が‥‥


イタリアのプロサッカー・全国リーグである
カンピオナートの歴史は19世紀末にさかのぼります。
1898年5月8日、
イタリアのカンピオナート最初の決勝戦を闘ったのは
ジェノアとインテルナツィオナーレでした。

ジェノア・クリケット&フットボール・クラブは、
その頃ヨーロッパの重要な港のひとつであったジェノヴァに、
仕事のために移っていた数人のイギリス人たちによって
作られたチームでした。
そしてジェノアは延長戦の後に、
2対1で最初のカンピオナートに勝利しました。
つまり、イタリアサッカーの初代チャンピオンですね。
その日から今日に至るまでに、
ジェノアは9回イタリアチャンピオンの座につきました。

初回決勝戦にジェノアの対戦相手であった
インテルナツィオナーレは
FCトリネーズと合併してFCトリノとなり、
第2次世界大戦後には4回続けて
カンピオナートに優勝し、
快進撃をつづけていました。

そして、1949年5月4日、
遠征先のポルトガルから帰国しようとしていた
FCトリノを、悲劇が襲います。
この最強のチームをイタリアに連れ帰る途中の
飛行機に故障が起き、それが原因で飛行機は
スペルガという丘に墜落します。
全員が亡くなったこの事故は、
イタリア、いや世界中を涙させました。

イタリアサッカーの歴史の中で、
カンピオナート優勝9回のジェノアと
7回優勝のFCトリノは、
重要なページを書き記したと言えます。

ところが今、
カンピオナートの初期を制した彼らが、
セリエAから姿を消してしまいました。

トリノは破産、そしてジェノアは
買収が発覚し‥‥


FCトリノは破産し、
名前は同じでも歴史の異なる別のチームが、
低い階級から再出発しようとしています。
たぶん昨年のナポリと同様に
セリエCからの再スタートとなるでしょう。
FCトリノは文字通り「破産」しました。
イタリア国家に支払うべき6000万ユーロを超える
税金を、支払えなかったのです。
税金だけでなく、あらゆる支払いが滞っていました。
そして不渡手形を出し、破産しました。
こうしてFCトリノは
イタリアサッカーから永久に姿を消しました。
そのポストとチームカラーと名前を継ぐチームは、
歴史まで引き継ぐことはできません。

ジェノアは、
もっと悪い結末をむかえました。
プレツィオージ会長が
カンピオナートのシーズン最後日の試合に勝って
セリエBからセリエAに昇格するために、
対戦相手ヴェネツィアの数人の選手たちを買収した話は、
ここでも書きましたね。

ついに警察が動きました。
警察は、あらかじめ電話を盗聴し、
この買収劇の現場を押さえたのです。
買収された選手たちに支払う25万ユーロの入った
ワニ革のバッグを持ったヴェネツィアの要人が
ジェノア会長のオフィスから出て来たところを、
取り押さえたのです。
裁判は大議論を呼び起こし、
イタリア中の新聞やテレビがこの事件を追いかけました。
結果は、ジェノアはセリエC1への降格と、
来期のカンピオナートで差し引かれることになる
勝ち点3の剥奪処分を受けました。

ジェノアのプレツィオージ会長と
ヴェネツィアのダル・チン会長は、
5年間の資格剥奪処分です。

イタリアサッカーは、
その歴史の重要なページを書き直そうとしています。
つまり重大な局面をむかえていると言ってよいでしょう。
ジェノアとFCトリノのティフォーゾたちは
サッカーの管理機関に抗議すべく、
広場にくりだしています。
でも、このふたつのチームが許されるのは
難しいことでしょう。

もうひとつ、税金の不払いで
セリエAからセリエBに降格したチームがあります。
メッシーナです。
日本の柳沢敦選手が昨年いたチームですよ。

ジェノア、FCトリノ、そしてメッシーナ、
栄光と歴史と情熱に満ちた3チームが、
厳しく罰せられました。

ここ最近、イタリアサッカーは
信用と良いイメージを失いつつあります。
だからこそ、ゼロから再出発することを願い、
最初からやり直すために
自らの衿を正そうとしているのです。
道は遠いでしょうけれど‥‥。


訳者のひとこと
FCが「フットボール・クラブ」の
省略であることは、みなさんご存じでしょうが、
イタリアには、もともとローマ時代にもあった球技の
流れをくむ「カルチョ」が存在していたそうです。
それがフットボール(サッカー)に似ていたのでしょう、
カルチョが現代のサッカーを表すイタリア語として
定着しました。

新聞の見出しを左上から行きましょう。
ガッゼッッタ・デッロ・スポルト紙
「判決:ジェノア、C1へ」
 
右上、トゥット・スポルト紙
「なんという棒たたき(衝撃)」
小見出しは
 3点のペナルティーとともにC1に終る
 プレツィオージには〜(この先は見えない)

左下、コリエレ・デッラ・セーラ紙
   スポーツ面
「棒でなぐる」
このstangata(スタンガータ)という、
猛烈なシュートも表す言葉は
ポール・ニューマンと
ロバート・レッドフォード主演の映画
「スティング」のイタリア語タイトルにも
使われました。

右下、コリエレ・デッロ・スポルト紙
「革命」
小見出しは、写真をはさんで左
 ジェノア、Cへ
 アスコリ、Aに復帰
 そしてナポリはBへ!
写真の右
 審判、全てが変わる
 くじ引きは、もう無し
 マッテイ、立案者
その下の、少し太い小見出しは、
 ムトゥー:ユーベは微笑む

ふ〜、今週はぜんぜん「ひとこと」じゃ
ありませんでしたね。
ぜんぶ読んでくださったかた、
ありがとうございました!!
翻訳/イラスト=酒井うらら

2005-08-02-TUE

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