フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

ユヴェントスとルチアーノ・モッジをめぐる
イタリアサッカー界の史上最悪のスキャンダル。


近年のイタリアサッカー界の最悪な部分の
すべてが集結したような、
サッカー史上もっとも大きなスキャンダルが、
そのベールを脱ごうとしています。

その中心人物はだれあろう、
イタリアサッカーのゴッドファーザーと目されている
ルチアーノ・モッジです。
そう、彼はイタリアサッカー界の
「ドン・ヴィート・コルレオーネ」だったのです。
(みなさんは映画「ゴッドファーザー」を
 おぼえていらっしゃいますか?
 アメリカに渡ったイタリア系マフィアの映画として、
 もっとも有名ですね。
 映画の中のゴッドファーザーは、
 マーロン・ブランド演じる
 “ヴィート・コルレオーネ”でした。)


▲渦中のルチアーノ・モッジ

モッジの壮大な買収劇。


もともとルチアーノ・モッジは、
ユヴェントスの単なる総監督として、
イタリアでもっとも有名なファミリーであり、
FIATやフェラーリのオーナーの
アニェッリ一族に直属して働いていました。
しかし、イタリアの警察は、
この2年間のモッジの電話のすべてを盗聴録音しており、
これ以上ありえないし想像もできない、いや、
それ以上にひどい腐敗のすべてを暴き出しました。

まずモッジは、審判たちを買収しました。
ユヴェントスを優遇するように、そして
ユヴェントスの対戦相手には好意的にしないように、と。

警察によるこの告発を受けて、
審判の長であるパイレットは、
UEFAとFIFAから即座に追放されました。
彼は、ある電話でUEFAチャンピオンズ・リーグの
いくつかの審判をユヴェントスが優位になるよう保証し、
その見返りとして
マセラティのセダン1台を要求する電話をかけました。
(この要求は、すぐに満たされました。)

2004〜2005年のカンピオナートの
29試合が「仕組まれたもの」であり、
このスキャンダルは、
そのシーズンに優勝したユヴェントスの
18試合にもかかわることも判ってきました。
もう一方で、このスキャンダルの渦中には
ACミラン、ラツィオ、そして靴のTOD'Sのオーナーである
デッラ・ヴァッレのチーム、フィオレンティーナもいます。

▲左がオーナーのディエゴ・デッラ・ヴァッレ

そして今ユヴェントスは
最も重い罰則をうける危機にさらされています。
あろうことか、セリエAのトップ中のトップである
ユヴェントスが、セリエBへ降格の危機です。

この事件は司法府が究明中であり、
事はスポーツだけにとどまらないでしょう。
ともかく審判や選手などの現場だけでなく、
フェデレーション会長のフランコ・カッラーロは、
副会長のマッツィーニと同様に辞職しました。
こうしてイタリアは、
W杯が目前だというのに
疾風怒濤のまっただ中にいます。

カンナヴァーロも、ブッフォンも!


もちろん何人かのアズーリのメンバーも渦中にいます。
まずキャプテンのカンナヴァーロは、2年前に、
「インテル会長のところへ行ってケンカをするように」
とモッジから薦められました。
放り出してもらってユヴェントスに来い、
というわけです。

カンナヴァーロは、当時まだ就任後2週間しかたっていない
マンチーニ監督と、すでに上手く行っておらず、
脚の手術のために1年間休むと
脅迫めいた事を言ったそうです。
モラッティは自分自身を説得して、
彼がユヴェントスに行くことを許しました。
嘘をつき、自分を放り出させるために
ケンカまで売ったカンナヴァーロ‥‥。
迫るW杯に向けたアズーリのキャプテンとして、
なんと堂々たるものではありませんか!!

そして、八百長のゲームには、
いかさま賭博がつきものです。
このいかさま賭博に打って出た選手がいます。
ユヴェントスとアズーリのキーパーである
ジャンルイジ・“ジージ”・ブッフォンです。
(ジージはブッフォンの愛称です)
世界一のキーパーと目されている彼が、
買収された審判たちのおかげで
ゲームが八百長になると知っていたあるゲームに、
わざわざイギリスで賭けさせていました。

▲ブッフォンまでもが‥‥!

ジュールガーデン対ユヴェントス、
モッジに買収された審判によって
ユヴェントスが1対4で勝った試合に、
ブッフォンは50万ユーロも賭けました。
彼は今、資格剥奪の危機にあります。

マフィアがその触手をのばし、
事実上イタリアサッカーを破壊した
この巨大な規模のスキャンダルは、
つぎつぎと新たな展開を見せ始めています。

インテルはコッパ・イタリアで優勝しました。
マンチーニは、この時に、
いかさまなユヴェントスがいるので
カンピオナートで勝利するのは不可能だろう、
という言い方をしています。

ACミランのシェフチェンコは、
イタリアを離れようとしています。
彼はベルルスコーニ会長から、
チェルシーに行っても良いという許可をもらいました。
4500万ユーロが支払われるでしょう。

イタリアサッカーは信用性を失っただけでなく、
ひとりの優れたチャンピオンをも失いました。
当然と言えば当然です。
スキャンダルまみれのサッカーに、
だれが喜んでとどまりますか?

▲デ・サンティス審判にも、今回のスキャンダルの影響が?!

訳者のひとこと
うそっ、ブッフォン、お前もか?!
という感じです。
失礼いたしました、ついつい個人的な
感情が出てしまいました。
この事件は、イタリアの新聞でも
連日のようにトップで
報道されているようです。

それにしても無気味な暗黒の世界です。
とことん暴き出せるのでしょうか‥‥
紀元前からの歴史を持つ文化は、
光も影も強烈です。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2006-05-16-TUE

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