ほぼ日刊イトイ新聞 フランコさんのイタリア通信。アーズリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

2009-01-27-TUE

ミラノ・メンズコレクション 2009秋冬。


franco

寒波と雪に見舞われたミラノですが、
そうでなくともこの季節に代表的な衣類は、
厚手のセーター、ジャケット、コート、帽子、
脚をすっぽりと包むパンツなどです。
アイテムは毎年似たようなものでも、
デザインは年ごとに新しいものが発表されます。
そしてファッション界では、
もう、来シーズンの秋冬ものの
ミラノ・メンズコレクションが出そろいました。
流行を追いかけたい人々が、
先を読んで備えるためにショーを見に行きます。

ファッションの中心地のひとつであり、
いつもの有名ブランドが「流れの傾向」を造り、
生きた流行を生み続けるミラノには、
世界各地から人々がやってきます。
ジェットセット族たちも来ますよ。
ミラノの2大シンボルである、スカラ座と、
大聖堂の天辺にいるマドンニーナ(マリア像)が
影を落とす街を、
この人たちが大挙して移動しておりました。

アルマーニ vs. ドルチェ&ガッバーナ!

そんなミラノの2009年のメンズコレクションには、
始まる前からひと騒動というオマケ付きでした。
それも、重要なデザイナー同士の、です。

ファッションの世界で
もはや「聖人」の域に入っている
ジョルジオ・アルマーニは、
何年にも渡って男たちの装いをエレガントに替えてきた
デザイナーの一人です。
そのアルマーニが、
なんとドルチェ&ガッバーナに対して
論争を突きつけたのです。
来秋には、他の人たちより
エレガントでありたいと願う若者たちの
シンボルになるであろう幅広なベルトを、
ドルチェ&ガッバーナが真似したという非難でした。

ドルチェ&ガッバーナは、
ドメニコ・ドルチェと
ステーファノ・ガッバーナという
2人組みのブランドですが、
彼らは論争を避けて逃げることなく、
「今は彼らは真似をしても、
 しばらくしたら学習するだろう」
というフレーズを引用しながら、
アルマーニに返答し、コメントしました。

ドルチェ&ガッバーナの返答は、
ある公式発表としてなされました。
「私たちがまだ多くを学ばねばならないのは事実です、
 でも、彼から、でないのは確かです。
 アルマーニのスタイルが、
 私たちのデザイナー的インスピレーションの
 泉であったことは、ありません」
というものでした。
彼らは言います
「もう何年も、私たちは彼のショーを見ていません」と。

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▲▼ドルチェ&ガッバーナ
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そして、彼らのファッションの
オリジナリティーを守るために
「私たちは、
 ドルチェ&ガッバーナのスタイルを作るという幸運を
 築くために、服を仕立てる技術の他にも、
 ドメニコの故郷であるシチリアと
 その伝統にスタイルを結びつけてきました。
 このスタイルは世界中に知られているものです。
 間違いなく私たちには
 まだ学ぶべき事がたくさんありますが、
 アルマーニからではないのは確かです」と説明し、
こうしめくくりました。
「その他のことについては、
 ピカソが言っていた通りです、
 『他を真似をすることは避け難い、
  でも自分自身の過去を真似し続ければ、
  不毛を招く』のです」

この論争には、
ドナテッラ・ヴェルサーチも割って入りました。
「真似されるということは名誉なことです」と
彼女は言います。
この論争の火に水をかけて、
しずめようとしたのでしょうね。
「私の今は亡き兄のジャンニは、
 本当によくコピーされていましたし、
 今でもコピーされ続けていますが、
 ヴェルサーチはヴェルサーチとして残るのです」と
付け加えました。

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▲ヴェルサーチ

よく言われるように、
それぞれのブランドは独自のアイデンティティーを持ち、
それを横取りするのは難しいものです。
彼女も
「はい、独自のアイデンティティーが
 大きなブランドの成功の鍵です。
 しっかりとしたアイデンティティーがあれば、
 他にどれだけ多くのブランドがあっても、
 自覚という大切なことが付いてきますから」

なるほど。

これからのメンズモードは手首とくるぶし?

ところで先日のミラノ・コレクションについて
先読みの人々は、こんなふうに評しています。
くるぶしが美しく、
華奢な手首を持った男たちが
優位に立つだろう、と。
これは、このところの傾向で、
次の冬には何もかもが短めになるでしょう、
パンツもジャケットもね。
そのために「くるぶしと手首の美しさ」が
重要になるという意味です。

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▲グッチ

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▲ミッソーニ

そして、前面に出されるのは、
1984年以降に生まれた、
背が高く、痩せてすらっとした
若者向けのファッションです。

ショーには常連のVIPたちも現われ、
ベッカム夫妻もフォトグラファーたちに
囲まれていました。
彼らはミラノの街を侵略した巨大なポスターのための、
世界記録な契約にサインしたのです。
それはヴィクトリアとディヴィッドが、
ほとんど裸に近いかっこうで、
世界各地のカップルたちに夢を見させるために、
ベッドの上でカメラに納まっているというものです。

franco

先ほどの話しを蒸し返せば、
アルマーニの下着シリーズは、
ドルチェ&ガッバーナに勝利しているわけですが‥‥。

この世界経済恐慌の真っただ中に、
ファッションのメゾンらは会社の将来を
世界中の大金持ちたちの反響に賭けています。
ショーからも、その前の論争からも、
大金のうごく気配が漂っています。

ぼくらは、みんなもっと貧乏になるのでしょうか?
だとしたら、着る物なんか
どうでも良いような気もしますが、
でもほんのちょっとのエレガンスは持っていたい‥‥。
そうでしょう?


訳者のひとこと

先日来日していたミラネーゼの友人、
50代後半の男性ですが、
「ムジ」の愛用者だそうです。
安くてシンプルで大好きだそうです。
どのブランドだか、
読者のみなさんも、お分かりでしょ?
ミラノにもあるのですね、ムジのショップが。

うららさんイラスト

翻訳/イラスト=酒井うらら



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