ほぼ日刊イトイ新聞 フランコさんのイタリア通信。アーズリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

2009-02-04-WED

ダーク・ビッケンバーグと
フォッソンブローネ。


franco

現代人というものは全てにおいて、
どうも見栄っ張りですね。
特にファッション。
着飾るものが毎日の暮らしに不可欠となっている中で
スポーツ選手とファッションブランドのつながりが
ますます強まっています。

サッカー選手を有名ファッションデザイナーの
広告塔的な存在として扱うことは
今や、ブランドにとってあたりまえ。
ノルマのようなものです。
たとえばアルマーニがしているように、
ベッカムやカカの世界的なイメージが
ブランドのために利用されています。

でもここに、
知名度の低いアマチュアのサッカーに
注目したデザイナーがいます。
ベルギーのアントワープ王立芸術アカデミー出身で
「アントワープ6」のひとりに数えられた
ダーク・ビッケンバーグです。
彼は、レディースのコレクションはパリで、
メンズをミラノで発表していますが、
今回のミラノ・コレクションが大成功をおさめ、
ここミラノには、3フロアー使用で14もウィンドーのある
彼のメガストアが開店することになっています。
場所はマンゾーニ通りのカヴール広場の角、
スピーガ通りから20メートル、
モンテナポレオーネ通りからは
100メートルの一等地です。

サッカー選手たちが、ランウェイに!

ビッケンバーグは若者たちに人気がありますが、
その理由のひとつには、
純粋にアマチュアでサッカーを楽しむ選手たちを
ショーのモデルに使ったところにもあるでしょう。

franco

彼はフォッソンブローネという、
イタリアのアマチュアのサッカーチームを買いました。
そして競技場を作って
自分の名前をつけようとしています。

ビッケンバーグは50歳になったばかり、
父がベルギー人で母がドイツ人です。
サッカーと彼の内面についてのプロジェクトや、
自身のコレクションが
何にインスピレーションを受けたかなど、
語ってくれました。

「2005年でしたが、
 私はマルケ州にある人口1万人の街、
 フォッソンブローネにいました。
 そしてサッカ−の試合を見に行ったのです。
 そこの観衆たちの情熱ときたら、
 カカやイブラヒモヴィッチや
 デル・ピエロに向けられる、
 大チームのティフォーゾたちの
 情熱を超えるほどでした。
 彼らは自分たちをフォッソンブローネの
 アマチュア選手たちと一体化させており、
 ここに成功を導くアイデアがあるぞと、
 私は気付いたのです」

そしてビッケンバーグは
フォッソンブローネのチームを買ったのですが、
それは何かに勝利するためというよりは、
大勝利とは縁がないけれどそこにある情熱を、
シンボルとして若者たちに与えるためでした。

「ファッションは、有名俳優や歌手、
 スポーツのチャンピオンたちのような
 特別な人たちと自分を同化させたい人のため
 考案されるべきではないと、私は思います。
 今日は普通の若者が体型を維持したがり、
 出勤前にジムに通っています。
 そこで私は、全ての普通の人々に
 受け入れられるラインを作ろうと思いました。
 それも自分自身の現実の中で調和をとるために、
 スポーツを実行している人に向けたラインです」

franco

サッカーを愛するひとりのデザイナーの挑戦。

こうして、フォッソンブローネの、
全員がアマチュアで無名な選手たちが、
白とアズーリ色のシャツとともに、
本当にシンボルに近い存在になりました。
その魅力的なユニフォームは、
もちろんビッケンバーグが彼らのために
デザインしたものです。
また、ショーに出演した選手たちは、
しなやかに静かな足取りで、
真っ直ぐな良い姿勢で進み、
ぼくたちがチャンピオンだと
言わんばかりのガッツでした。
まあ、言ってみれば、
アマチュアチームでセンターフォワードをやるのも、
ショーのモデルをするのも、
人前で何かをすることに変りはありません。

franco

franco

ビッケンバーグはこう締めくくりました。

「私は今日より明日を見つめています。
 まさに、あらゆる事が現在進行形でなければいけない
 サッカーの世界のように」

もうじきオープンする
ビッケンバーグのメガストア。
ベッカムやデル・ピエロではない
サッカーを愛するひとりのファッションデザイナーが、
彼の賭けに勝つかどうかが分かるでしょう。


訳者のひとこと

人情の厚いフランコさんらしいコメントですね。

Dirk Bikkembergsのカタカナ表記については、
ビッケンバーグスとする向きもおおいようですが、
ビッケンバーグ(スは無し)の方が
浸透しているようなので、こちらに従いました。

フォッソンブローネの場所はこちら↓

うららさんイラスト

翻訳/イラスト=酒井うらら



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