ほぼ日刊イトイ新聞 フランコさんのイタリア通信。アーズリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

2009-04-28-TUE

おぉ、アドリアーノよ‥‥!

きょうは、アドリアーノ選手について、
残念なことを書かなければなりません。

アドリアーノの、
おとぎ話のようなサクセスストーリーは、
ハッピーエンドにはなりませんでした。

adriano

インテル、苦渋の決断。

古代ローマ時代のアドリアーノは、
偉大な皇帝のひとりですが、
2001年に19歳のブラジル人が
インテルでデビューするや、
そのアドリアーノという前向きな印象の名前から、
すぐに、Imperatore(皇帝)と呼ばれるようになります。

サッカー選手として
凄まじいほどに素晴らしかった彼は、
世界に冠たるブラジル代表や
インテルのティフォーゾたちのアイドルとして、
全てのサッカーファンたちに夢を見させ、
またたくまに、過去の偉大な有名選手たちと
並び称されるようになりました。

adriano

そのアドリアーノが、今や、
埃にまみれてキャリアを終えようとしています。
彼の堂々とした彫像のような肉体も、
アルコールの悪影響に耐えられず、
彼の精神は名声と金銭に、
美しい女性たちに、
悪い習慣のエスカレートに抵抗できず、
たった27歳で、
事実上サッカーに別れを告げようとしているのです。

adriano

1ヶ月以上前にブラジル代表に招集され、
帰国していた彼が、元気でイタリアに戻って来るのを
インテルは待っていました。
しかし、それも今は空しい願いです。
インテルはついに彼を解雇すると決めました。

石油業者でありインテル会長のマッシモ・モラッティは、
今までいつも、彼を許して来ましたが、
今回は強い手段に出ると決心せざるを得ませんでした。

2ヶ月前にはアドリアーノの
特別な療法について語っていた
モウリーニョ監督も、もはや
彼が運命に流されるのを止められません。

「サッカー選手としては見込みが無いが‥‥
 ひとりの人間として、彼が落ちてしまった地獄から
 抜け出せることを願っている」と、
モウリーニョは言います。

堕ちた偶像。

リオ・デ・ジャネイロの
貧しい地区に生まれたアドリアーノは、
彼の多くの同国人と同様に、
ボールを蹴ることで
自分の素性家柄から解放されました。

そして、まるでサッカーの神様のように
祭り上げられましたが、
彼はプレッシャーに耐えることが
できなかったのです。

2002年、彼を成熟させるために、
インテルが彼をパルマに貸し出した時、すでに、
アドリアーノは大きな気がかりの兆候を見せています。

彼は日曜の夜、試合の後で、
しばしば車でミラノへ向かい、
まるで映画「甘い生活」の主人公のように
振る舞っていました。

ディスコと、美女たちと、
浴びるほどのシャンパンの夜を過ごし、
月曜日の夜明けに、
彼をパルマまで連れ帰っていたのは、
モラッティの運転手でした。
アドリアーノは酔っぱらっていて、
車を運転できなかったからです。

このスポーツ選手らしからぬ振る舞いは
数年に渡って続いていましたが、
スーパーマンの肉体と、サッカー選手としての
並みではない才能とで、彼はいつも立ち直り、
偉大なプレイを見せてもいました。

adriano

パルマとフィオレンティーナへ貸し出されたのち、
2004年1月にインテルに戻り、
その時はまだ、彼のキャリアは、外見上は
素晴らしいものになりそうな気配でした。

そして、
その裏側の真実を知っていたのは、
わずかな人たちにすぎません。

じつは彼は隠れてカジノへ行き、
ルーレットで遊び、
例によってインテルの運転手が
夜明けに彼を迎えに行き、
麻薬の売人や娼婦たちと一緒にいる
怪しい写真が出回り始め、
ここ1ヶ月で、いよいよ事態が
急転直下しました。

adriano

ブラジルの医師たちは、
彼をアルコール中毒専門の病院に
収容するべきだと言い、
インテルは彼に電話をかけつづけましたが通じず、
まるまる何週間も連絡がとれませんでした。

リオ・デ・ジャネイロで、
彼は警察に拘留されていたのです。
大規模な麻薬取引業者の元に通い、
ポケットにピストルを入れて
徘徊していたとのことでした。

彼は絶望から自暴自棄になり、
もう何も知ろうとも分かろうとも
しなくなっていました。

彼は崩壊してしまったのです。
サッカー選手としても、事実上、終わりです。
最後の望みをかけられるとしたら、
それは、彼が普通の青年にもどることです。

しかし彼にとって、それは、
サッカーのフィールドでゴールを入れるよりも、
ずっと難しいことでしょう。

adriano


訳者のひとこと

訳していて、とてもつらい記事でしたが、
事実から目を背けても何も変わりません。
彼が立ち直ってくれる事を、
それを手伝ってくれる人がたくさんいる事を、
願うばかりです‥‥‥これも
口先だけの空しい言葉にすら思えます。
でも、祈りましょう、どうか立ち直ってと。

うららさんイラスト

翻訳/イラスト=酒井うらら



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