今週はPitti
Immagine Uomo
第76回ピッティ・イマージネ・ウオモ、
通称「ピッティ・ウオモ(Pitti Uomo)」の
レポートをお届けしましょう。
ピッティ・ウオモは、
フィレンツェのピッティ宮殿の中で
繰り広げられることからこう名付けられた、
メンズファッションの国際見本市です。
年に2回、夏と冬に開かれており、
今回が76回目の開催になるというわけです。
ピッティ宮殿は、魅惑的なフィレンツェの中でも
最も魅惑的な建物のひとつです。
来年2010年の春夏シーズンに
エレガントに装いたい男性は、
このピッティ・ウオモは必見だとぼくは思います。
ほとんど義務と言ってよいほどに。
今回は、およそ900のコレクションをたずさえて、
700社が参加しました。
この数字はこれまでの最高記録です。
この世界的経済危機にみまわれて、
人々は日に日に苦しくなっているはずですが、
エレガンスと美の世界からは
疎外されたくないと思っているのかもしれません。
むしろ、自分がどう存在するかより、
どう見えるかの方が重要になり、
ぜいたく品の方が最低限の善行よりも
必要な物になったと言った方が良いでしょうか。
ファッションは、まさにそれゆえに、
経済危機の中にあっても撃沈することなく、
競い合いをつづけているのです。
さて、2010年春夏のファッションには、
過去へ回帰する傾向が圧倒的です。
男性たちは美しくエレガントである一方で、
スポーティーな動きやすさを求めます。
ここ数年来、
虚栄心は女性の特権ではなくなりました。
いや、むしろ、男性は
「女性に支配されている」と感じないためにこそ、
数年前には女性だけのものであったような
細心の注意と入念さで、自身を装います。
日本のUNDERCOVERのデザイナー
Jun Takahashi(高橋盾)は、
つねに人気を増していますが、今回は
とても軽くしなやかなコレクションを見せました。
自分の年齢に気付きたくない40代の男たちを、
まるで青年に見えるほど若返らせてくれるでしょう。
それらは夏の暑さと戦うにはもってこいの麻や綿で、
さわやかな薄手の生地が使われています。
靴のアルベルト・グアルディアーニは、
ピッティのために「Toki」という、
ジーンズ生地とカモシカ革のコンビの靴を発表しました。
グアルディアーニは、ジーンズの歴史に
敬意を表したかったようですね。
最新世代から最も信奉されている
マッシモ・レベッキは、スコットランドと、
そこで生まれたショーン・コネリーを
思い浮かべたのでしょうか。
彼が見せてくれたのは、
スコットランドの伝統的な柄、
タータンチェックの生地のジャケットなどでした。
ほんもののgrobetrotter、
つまり世界中を飛び歩く人は、
こちらの飛行機からあちらへと旅する間に
服にアイロンなどかけてもいられません、
でも自分のスタイルでお洒落をすることを、
あきらめるわけにも行きません。
それなら、Zed Twisterという、
シワにならない布地のジャケットやパンツがあります。
旅行バッグにつめこんでも、
なんの心配もいらないジャケットやパンツです。
バッグから引っぱり出せば、あら不思議、
シワひとつ無い状態で、
まるできれいにアイロンをかけたばかりのようです。
トリノに本社をおくBrooksfieldは、
とてもイタリア的なブランドですが、
珍しいノガモのロゴマークで有名です。
今回は画家のウーゴ・ネスポロに頼んで、
その伝統的なロゴマークを
生き生きとした色彩で描きなおしてもらい、
シャツやTシャツに刺繍しました。
Latitudine 45 (緯度 45)のデザインは、
アメリカ海軍からヒントを得ました。
来年には、ひと昔前のアメリカの
水兵さんのようなマリン・ルックの若者たちを、
あちこちで見かけることになりそうです。
ということで、ファッション界の習わしとして、
すでに1年先のことを先取りして
あれこれ考えるわけですが、
果たして、1年後にまだ、
自分を見せびらかしたい気持は
残っているでしょうか?
そんなふうに考えるぼくをよそに、
フィレンツェでは、
まるで古代ローマ時代のように、
未来はバラ色だと言わんばかりの
日々の暮らしが続いているように見えます。
夢とファッションのパワーが、
また次の夢とファッションを創り続けながら。