国家の政治を運営するには巨額の資金が必要ですが、
イタリアでは、サッカーチームの運営も
巨額の資金が必要です。
カンピオナートの新シーズンが開幕し、
数試合しか終わっていない段階ですが、
おどろいたことに、
イタリア三大チームのうちで上位にいるのは、
ユヴェントスだけでした。
今期も優勝圏外であろうと思われていた
ユヴェントスと共にトップ集団を作っているのは、
サンプドリア、ジェノア、ラツィオです。
その下に、2点差とはいえ、連覇をねらう
インテルがいるという事態なのです。
もっとも、数試合が終わった時点で、
人々の大きな興味は、
来年のW杯南アフリカ大会に向け
予選通過に挑んでいる
アズーリに向けられているのですが──。
チーム作りに巨額を投資している
インテルとACミランが、
トップクラスにいないというシーズン開幕ですが、
今後のカンピオナートの展開はどうなるでしょうか。
8月23日にバーリと引き分け、
たいへん意気消沈していたインテルにとって、
8月29日のACミランとのダービーへの
期待は大きなものでした。
そして、インテルはベルルスコーニのACミランを
4対0で打ち負かしました。
ダービーでのこの大差の結果は
イタリアのサッカー史に残ることでしょう。
ベルルスコーニは試合前に、
シードルフをパトやロナウジーニョと
一緒に配置するようにと、
レオナルド監督に直に要求していました。
しかし、レオナルド監督は彼に耳をかさず、
結局は大差で負けてしまったのですから、
イタリア首相でもある会長とチームの
バランスが崩れてしまいました。
ベルルスコーニ会長はレオナルド監督を、
完璧に戦略をまちがえた未熟者と決めつけており、
今後の試合ですみやかに順位を上げ、
インテルに追い付けないようであれば、
解雇しそうな気配です。
トップ集団にいるユヴェントスのオーナーで、
FIAT副会長のジョン・エルカンは、
インテルはユーヴェの不運を利用したと、
今も非難しつづけています。
2006年の電話盗聴によって
明らかにされた審判買収疑惑で、
ユーヴェはスポーツ裁判において
セリエB降格の判決をうけたのですが、
その流れの裏には、
インテルがいたのだろうと言うのです。
インテルの会長は石油業者のモラッティ、
そして副会長は、テレコム・イタリアの、
つまり大きな範囲で電話をコントロールする会社の、
トップであるトロンケッティ・プロヴェーラですから。
それでも、インテルが
非常に強いチームであることは確立しており、
イブラヒモヴィッチが去った今も、
替わりのサミュエル・エトーが
予想通りの活躍をしていますから、
チームの力は弱まっていません。
インテルは、そのほかにも
ミリト、モッタ、ルシオ、スナイデルらを
購入していますが、彼らも、
バーリとは引き分けたものの、その後の
ACミランのホームでのダービーには勝てる、
立ち直れると、確信させてくれました。
(といってもダービーですから、
インテルにとっても「ホーム」ですが。)
そのACミランは、
カカが去った打撃が丸見えで、
なんだかウロウロしているように見えます。
インテルの方は、総合的な力は昨年と同じです。
ユーヴェは、ASローマをくだし、
ASローマ会長のロッセッラ・センシ女史が
スパレッティ監督を解雇するほどの、
大きな混乱をもたらしました。
あらたに採用されたのはラニエリ監督で、
これが昨シーズンの終了2日前に、
ユヴェントスが解任した人物です。
このASローマとの対戦では、
ユーヴェが新たに導入したブラジル人たちふたり、
ジエゴとフェリペ・メロがゴールを記しました。
ことにジエゴは素晴らしいゴールを2本入れて、
すぐにイタリアサッカーのアイドルになりました。
彼をジーコやプラティニになぞらえる人もいますが、
彼が2ゴールを決めた試合の直後に、
ユーヴェの永遠のライバルである
インテルに向けた言葉が、
ユーヴェのティフォーゾたちの心をつかみました。
彼はまるで中世の戦士のような大胆な眼差しで
こう言い放ったのです。
「ぼくらは最強だ、
カンピオナートはぼくらのものだ」と。
カンピオナートの新シーズンは
始まったばかりですが、
ユーヴェ、ACミラン、インテルの、
歴史上おなじみの三つどもえの決戦を、
すでに呼び戻そうとしています。
でも、本当にそうなるでしょうか?