父親の影というものは、
その父親が偉大な人物であればあるほど、
息子にとって、やっかいなものです。
偉大な父の面影を自分に負わせる息子が、
父を真似ることは難しく、
忘れ去るのはもっと難しいことでしょう。
そんな父と息子の葛藤は、
人生のあらゆる場面で起きることですが、
サッカーの場合も例外ではありません。
父が築いたチームが世界一であった場合、
息子がその偉業をくり返すのは、
ほとんど、不可能です。
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父アンジェロ・モラッティの偉業を追って。 |
100年前、1909年11月5日に生まれた
アンジェロ・モラッティは、
1960年代、史上最強のインテルを作り上げました。
イタリアで、ヨーロッパで、世界で、
勝てる試合のすべてに勝ったといわれるほどの、
インテルの一時代を築き上げた人物です。
▲右がアンジェロ・モラッティ、左はヘレニオ・ヘレラ監督
その息子であり、インテルの現会長が、
マッシモ・モラッティです。
もちろん彼は父親の功績を
存続させたいと願っていることでしょう。
▲左がマッシモ・モラッティ、右はマルコ・トロンチェッティ副会長
マッシモ・モラッティがインテルの会長になってから、
スクデットを4個勝ち取っており、
5個めも勝ち取ろうとしています。
しかし、ヨーロッパのクラブチャンピオンを決める
UEFAチャンピオンズ・リーグ優勝は、
まだ遠い道のかなたです。
そこで、彼は、この14年来の夢を実現させるために、
カルチョメルカートでも
父親を真似ようとしています。
彼の父アンジェロ・モラッティは、
インテルを最も偉大なチームにするために、
1961年6月、バロン・ドールを受けてすぐの、
当時の最高の選手だった歴史的名選手、
ルイス・スアレスをバルセロナから買いました。
Grande Inter(偉大なインテル)として
記憶されるチームは、
彼の上に築かれて行ったのです。
▲ルイス・スアレス
息子マッシモ・モラッティも。
1997年にバロン・ドール選手であるロナウドを、
バルセロナから買いましたが、
このブラジル人はUEFA杯を勝ち取っただけで、
UEFAチャンピオンズ・リーグには勝利できませんでした。
現在新たに、バルセロナには
世界一と目されるリオネル・メッシ選手がいます。
彼がこの12月にバロン・ドールを受けるのは確実です。
バルセロナがメッシを譲渡する意向は全くありませんが、
問答無用な絶対価格の予想は2億5千万ユーロで、
これを支払えば、アルゼンチン出身の、
他に類を見ないこのメッシ選手を
買えると言われています。
▲リオネル・メッシ
最近で最も高額を支払われたサッカー選手は
クリスティアーノ・ロナウドで、
レアル・マドリードが昨年、
マンチェスターUから買い受けました。
しかし、インテルがメッシを買うと想定して、
支払わねばならない金額は、
まさに金銭的狂乱とみなされるでしょう。
ただ、1961年にアンジェロ・モラッティが
スアレスをバルセロナから買った時も、
当時としては記録的な金額を支払いました。
2億5千万リラですから、現在の金額にすると、
確実に1億ユーロを超えます。
マッシモ・モラッティは毎年、
借財の埋め合わせも支払っています。
そして、ここ数年、彼はインテルのために
5億ユーロ以上を遣っているにもかかわらず、
チームはUEFAチャンピオンズ・リーグに
勝利するレベルにありません。
けれども、メッシが入ってくれれば、
たぶん、彼の夢が叶うことでしょう。
マッシモ・モラッティは、
文字通りメッシに惚れ込んでいます。
「私が軌道を逸するに足る唯一の選手だ」とまで
言っているのですから。
数日前のこと、バルセロナのラポルタ会長が
こう打ち明けました。
「モラッティとは友人だが、
メッシを売りに出しているかと、
会うたびに聞かれる。
もちろんNOと答えるが、もし欲しいと言うなら、
彼の値段は決まっている。
絶対価格で2億5千万ユーロだ」と。
▲コリエレ・デロ・スポルト紙より
“一徹なラポルタ
「モラッティは私にメッシを要求した」
バルサの会長は「彼にレオは渡さないが、
他の取引はするだろう」”
モラッティはイタリアで最もお金持ちな一人です。
Sarasという石油精製会社を
弟のジャンマルコと50%ずつ共同経営しており、
民間企業としてはヨーロッパで最大ですから、
出費のことなど気にしません。
夢を追い求めるためなら、どんな金額でも
払う覚悟があるかもしれない彼は、
2010年のW杯の後で、
メッシの購入を、本当に試みるかもしれません。
それが成功するかどうかは
誰にも分かりませんが、ここでもういちど、
彼の父親のことを想い出してみましょう。
50年前に、夢であったルイス・スアレスを獲得し、
あらゆる勝利を実現した
アンジェロ・モラッティのことを。
息子は、父親の偉業を繰り返すことができるでしょうか。