ほぼ日刊イトイ新聞 フランコさんのイタリア通信。アーズリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

2009-11-25-WED

イタリア人になった外国人選手たち。

W杯の代表チームには、
みなさんもご存知のように、
その国の国籍を持っていないと参加できません。
しかし、たとえばイタリア代表チームである
アズーリのユニフォームを着るのに、
家系や生まれや育ちなどが
100%イタリア人である必要はありません。
選手がイタリアに帰化すればよいからです。
じっさい、これまでに
アズーリが勝ち取った4大会のうち、
3回、そのケースがありました。

そして次回の南アフリカ大会でも
いま、イタリアに帰化申請をしているアマウリを、
アズーリのメンバーとしてW杯に出す、
という計画があります。
イタリア代表チームであるアズーリ監督の
マルチェッロ・リッピが、
ブラジル人両親のもと、ブラジルで生まれたアマウリを、
W杯南アフリカ大会に連れていきたがっているのです。

franco
▲アマウリ

現在、ユヴェントスでプレイしている彼ですが、
外国出身でありながら
アズーリのユニフォームを着たことで
人生が変わった過去の選手たちと同様に、
アマウリの人生も、おおきく変わろうとしています。

1930年代、話題になったモンティ。

イタリアが最初のW杯を勝ち取ったのは1934年。
その時のアズーリには
イタリア生まれではない選手が4人いました。
モンティ、グアイタ・デ・マリア、そしてオルシです。

特にルイス・モンティが、大きな話題になりました。
アルゼンチン出身のモンティは、
1930年のW杯決勝戦で
対アルゼンチン戦を戦いました。
優勝はなりませんでしたが、
当時のイタリアを統率していたファシスト党の
ムッソリーニ党首が、命令をくだします。
彼にイタリア国籍を取らせよう、
そうすれば1934年の大会には
アズーリの選手としてプレイできる、と。

franco
▲ルイス・モンティ

はたして、結果はその通りになりました。
モンティはイタリア人になり、
1932年から36年まで
アズーリの選手として活躍しました。
1934年のW杯イタリア大会では、
イタリアは優勝しています。
こうして彼は、
2つの大会に異なる国の代表としてプレイした、
史上唯一の選手となりました。

franco

1934年イタリア大会には、
モンティのほかにも、
イタリア人ではない両親を持つ
選手たちがいました。
グアイタ、オルシ、デ・マリアは、
祖父らが仕事を求めてイタリアに渡ったという
経歴を持ちます。

franco
▲オルシ

その4年後の1938年、
イタリアはフランス大会でもW杯を勝ち取りますが、
イタリア系のウルグアイ人である
アンドレオーレをアズーリに参加させました。

W杯3回目の優勝は1982年で、
この時のアズーリには
帰化して参加した選手はいませんでした。
しかし4回目の2006年には、
カモラネージにイタリア国籍を与えて優勝したのが、
記憶に新しいところです。

franco
▲カモラネージ

アマウリの活躍を期待!

次回の南アフリカ大会でも、カモラネージは
またアズーリのユニフォームを着るでしょうが、
来年の3月5日にイタリア人になるアマウリも、
ここに加わることになりそうです。
アマウリ・カルヴァーリョ・デ・オリヴェイラは、
今のところブラジル国籍ですが、
3月にはイタリア国籍になる予定なのです。

アマウリの両親や祖父はブラジル人ですが、
妻はイタリア人です。
そのこともあって、すでにイタリア国籍取得の
申請をしています。
もちろんアズーリに入りたいからであり、
いっぽう、ブラジル代表チームは
W杯で彼にプレイさせるつもりがありません。
アマウリも最初は、
ブラジル代表から招集されることを
待っていたのですが、
一向に呼ばれる気配がなく、
イタリア人になることを選んだのです。

彼はこう表明しています。

「私の夢はW杯に出場することです。
 私の妻はイタリア人であり、
 アズーリのユニフォームが、今、
 私のサッカーの夢になりました」と。

アマウリのこの発言は
全ての人々の気に入ったわけではありませんが、
ものを言うのはイタリア代表を直近の優勝に導いた
マルチェッロ・リッピの思わくです。
彼は何が何でもアマウリを欲しがっています。

ちょっと行き過ぎのナショナリズム主義者たちも、
なんらかの理屈をつけて賛成せざるを得ないでしょう。
イタリアが5度目のW杯優勝を果たすとして、
イタリアに帰化したブラジル人選手アマウリが、
名を連ねることになる可能性が、大です。


訳者のひとこと

ちなみに、1934年イタリア大会の時の
ルイス・モンティ選手も、
ユヴェントスに所属していたようです。

日本では昨年、川崎フロンターレの
ジュニーニョが、帰化を断念したと
報じられましたね。

イタリア勢は大丈夫なのでしょうか‥‥。

うららさんイラスト

翻訳/イラスト=酒井うらら



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