ほぼ日刊イトイ新聞 フランコさんのイタリア通信。アーズリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

2009-12-01-TUE

インテルをめぐる喧噪。

UEFAチャンピオンズ・リーグとカンピオナート、
勝利と敗退、
それをめぐる論争と、いさかい。
そんな話題でインテルは
イタリアのスポーツ紙の一面を占拠しつづけていますが、
このところ、その喧噪は、
スポーツ紙にとどまらない事態になっています。
バロテッリ選手にまつわる騒動が、
あらゆる次元の論争をあおり、
イタリア政府の介入までが
要求されるに至っているのです。

franco

マリオ・バロテッリへの“合唱”。

マリオ・バロテッリは、1990年、
シチリアのパレルモで、
ガーナの出身の両親の間に生まれ、
すぐに北イタリアにあるブレシャの
バロテッリ家へ養子に出されました。
幼少のころから、
ブレシャの小さなチームである
ルメッザーネでプレイし、
後に、インテルが彼を購入。
17歳でセリエAに出場、
正真正銘の才能ある人物として
すぐに話題になります。

その年のコッパ・イタリアで、バロテッリが、
準々決勝戦の対戦相手だったユヴェントスに
2ゴールを入れて敗退させたことを、
ユヴェントスのティフォーゾたちは、
いまだに根に持っています。
バロテッリがピッチに下り立つたびに、
肌の色のことで彼を傷つけ続けるのです。

franco

franco

そしてこの数週間というもの、
事はさらに緊迫してきました。
というのも、
インテル・ユヴェントス戦でなくとも、
ユヴェントスのティフォーゾたちは競技場に出かけ、
インテルで活躍するバロテッリに対して、
人種差別的なことを一斉に
“合唱”するまでになっているのです。
「バロテッリは黒人だ、
 イタリア人は白人だ」と。
今までこうした“合唱”のことで、
ユヴェントスは厳しい罰金を支払って来ました。

franco

11月25日のUEFAチャンピオンズ・リーグの試合が
ボルドーで行われた時にも、
この、禁じられているはずの
人種差別のヤジが起りました。
この無作法な行為は、イタリア国内のみならず、
UEFAの全ての催しにまで広がっているのです。

そして、イタリアではユヴェントスを罰するために
政府の介入が要求されました。
そしてUEFAは人種差別についての調査を始めました。

12月5日にトリノで行われる
ユヴェントス対インテル戦に、
バロテッリは出場するでしょう。
その際に大きな事故の恐れが予想されるため、
インテルの監督であるモウリーニョは、
門を閉ざす、つまり無観客にすることを要求しています。

franco

モラッティとモウリーニョの攻防。

それにしても、
インテルにまつわる論争、いさかいは尽きません。

去る11月24日にバルセロナ行われた
UEFAチャンピオンズ・リーグの試合では、
イタリアの列強チームが
ヨーロッパの列強チームと対戦しましたが、
インテルは敗退しました。

2対0という点数の差よりも問題にすべきは、
プレイそのものが総合的に冴えなかったことです。
モウリーニョ監督は
UEFAチャンピオンズ・リーグに勝利するために
インテルに雇われたのですが、
いまだに決勝トーナメント進出が決まりません。
来る12月9日の対ルビン・カザニ戦に、
ホームのサン・シーロに勝つ必要があります。

インテル会長のマッシモ・モラッティは
対バルセロナ戦の直後、
「モウリーニョを解雇する!」
というほど激怒していましたが、
契約上、あと3年間分の給料を
支払わねばならないので、思い直しました。
モラッティは、モウリーニョを
解雇こそしませんでしたが、
かわりに彼をひどく批判しました。
「インテルの選手たちは
 バルセロナの選手たちより優れているのだから、
 負けの責任は全て監督にある」と。
まったくオーバーな言いっぷりではあります。

franco

モウリーニョも、すぐに反論しました。
「インテルは1965年から
 UEFAチャンピオンズ・リーグに優勝していない。
 だから明らかに私のせいではない。
 インテルは、世界チャンピオンの監督である
 リッピすら崩壊させたが、
 私はすでにイタリア・スーパーカップや
 スクデットを勝ち取っており、
 今シーズンのスクデットも勝ち取ろうとしている。
 私には奇跡は起せない、
 ひとりの監督にすぎないのだから」と。

モラッティ対モウリーニョの平和は
長続きしないように思えます。
次にインテルが負けた時、
戦いが再開するのは目に見えています。


訳者のひとこと

困ったちゃん、でも魅力的、
というケースは、インテルに限らず
世間にウヨウヨある気もしますが‥‥

あまりに整い過ぎているよりも
アンバランスな方が、
えてして魅力的だったりします、
絵の世界でも。

それにしても、人種差別は悲しい行為ですね。

うららさんイラスト

翻訳/イラスト=酒井うらら



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