ほぼ日刊イトイ新聞 フランコさんのイタリア通信。アーズリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

2010-03-16-TUE

力を持った、元ピッツァ職人と
ACミランの追走。

カンピオナートのトップを走っていたインテルに、
ACミランがヒタヒタと追いつきつつあります。
両チームの背後に見え隠れする事情を、
ちょっと整理してみましょう。

選手代理人、ライオーラ。

まずインテルですが、
ある「選手代理人」の影が
忍び寄っています。
彼の名前はカルミネですが、
ミーノと呼ばせています。
苗字はライオーラ、
そう、サッカー界で重要な
選手代理人のひとり、
ミーノ・ライオーラです。

ライオーラはそんなに多くの選手を
扱っているわけではありませんが、
彼が代理人をつとめるのは、
昨年の夏に、マックスウェルのオマケ付きで
インテルからバルセロナに移籍させた
ズルタン・イブラヒモヴィッチを筆頭に、
全てが一級の選手たちです。

franco

そして、ライオーラと
インテル会長のモラッティの関係は
ぜんぜん良くありません、むしろ最悪です。
それはそうでしょう、あの時、
モラッティはライオーラの手腕の前に
何のなすすべもなく、
マックスウェルを事実上バルセロナに
プレゼントすることになったのですから。
「あの人とは、
 これ以上の関わりを持ちたくないね」と、
モラッティは側近たちに話しています。

franco

その敏腕ライオーラとは
いかなる人物かというと、
もともとイタリア人の彼は、
若いころにオランダのアムステルダムに移住し、
ピッツァ職人として働きはじめました。
そうするうちにアヤックスの
何人かの選手と仲良くなり、
彼らの代理人を頼まれるようになります。
そして現在は、FIFAのエージェントとして
イタリアより税金の安いモンテカルロで暮らし、
スペイン、イタリア、オランダ、ブラジルに
事務所を持つまでになりました。

そして、モラッティにとって
このミーノ・ライオーラは悪夢となりました。
ここへきて、
インテルとイタリアサッカーにとっての
偉大な希望の星である19歳のバロテッリが、
新しい代理人として、
まさにこの「元ピッツァ職人」を選んだからです。

バロテッリ選手とモウリーニョ監督間のバトルは、
もうここ1年以上、おおっぴらになっています。
この若いアタッカーは、
監督が彼を叱責するたびに、
かたくなな態度で嫌みのある反論をし、
その破天荒な性格を見せています。

モラッティはバロテッリに
大きな愛着をいだいているのですが、
ミーノ・ライオーラが
あまりに無理を言ってくるのではないか、
イブラヒモヴィッチをバルセロナに譲渡した時の
二の舞を踏むことになるのではないかと、
目下のモラッティは戦々兢々としています。

もしモウリーニョがインテルに残るのであれば、
バロテッリは間違いなく
インテルから出て行くでしょう。
モウリーニョはといえば、こちらも
レアル・マドリードやリバプールと、
大変に金額の高い契約のために接触しているようですが、
インテルはこのことについて何もできません。
このポルトガル人監督は、
600万ユーロをペナルティとして支払えば、
自由の身になるのですから。

同じことが、これ以上モウリーニョには我慢できない
バロテッリにも言えるのです。
このアタッカーは2013年6月までの
契約をインテルと結んでいますが、
3000万ユーロを支払えば、自由になります。
そして3000万ユーロという金額は、
チェルシーであれ、
マンチェスター・シティーであれ、
バルセロナにとっても、
難なく支払える金額です。

追うACミラン。

先週金曜日の夜、インテルは
カターニャに3対0で酷く負けました。
そしてACミランは順位を
危険な位置まで近づけており、
ベルルスコーニは今や
スクデット獲得を信じています。

franco

ACミランは、UEFAチャンピオンズ・リーグで、
マンチェスター・ユナイテッドに敗退しましたが、
政治的な選挙を控えているベルルスコーニは、
自身に「勝つ男」のイメージをつけようとしています。
つまり、ACミランのスクデット獲得のために、
ベルルスコーニが何でもするのは確実です。
「良からぬこと」を忍び込ませる、
というような圧力を審判にかけることも、
まったく無いとは言えません。

franco

カンピオナートの今シーズンは、
スクデットが繰り上げでインテルに渡って
終了したかのような気分でしたが、
センセーショナルな方法で再開された格好です。
つまり、ACミランのまさかの逆転勝利の影が、
ヒタヒタと迫っているのです。
インテルのサイドでは、
会長から選手、ティフォーゾたちに至るまで、
今から5月中旬にかけては、
熱く恐ろしい日々が続くというわけです。


訳者のひとこと

ライオーラがモラッティに
「無理を言ってくる」ところですが、
tirare troppo la corda というフレーズが
使われています。
直訳すると「ロープを引っぱりすぎ」です。

私はこのフレーズを見るたびに、
「鵜飼い」を連想してしまいます‥‥。

うららさんイラスト

翻訳/イラスト=酒井うらら



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