たとえば日本って、 まわりとの関係を大切にするじゃないですか。 調和、平和。 イタリア人はそういう意味で、 倫理的、心の中で大切にしてるものって、 なんでしょう? 「明るく楽しく」ってことですか? |
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「明るく楽しく」はあるけれど、 それは和を保つためではなくて 自分自身がそうでもしなきゃ 死んじゃいたくなるからだけど。 で、「和」もね、 たとえばすっごい田舎の小さな村で犯罪が起こって、 犯人が誰なのか、だいたいみんな、 分かってるはずなのに 誰も口を割らないっていうのはある。 だから捜査がそれっきりどうやったって進まない。 地元のおまわりさんだって、 みんな、分かってるんだけど、 起訴できない、というようなことは起きる。 そういうところが残ってるところは、ある。 あ、でもこれも「和」じゃなくて、 自分を守るため、自分自身のためかな‥‥。 |
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イタリアの人が、外から見てると、 すごく明るくて、ちいさなことは 気にしなくていいよっていうような、 大らかさがありながら、 でも何かそれが悲しみとか絶望とかと つながっているというのは とても面白いと思って。 |
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それはもう、紀元前から歴史があるわけだからね。 血みどろの世界史なわけじゃない。 人間にはすっごくいいところもあるけど、 すごく恐い部分もある。 その抱き合わせの部分はもう、 歴史の遺産として 代々引き継いで教えられてると思うのね。 大人っぽいヨーロッパの大学生たち、 もう高校生ぐらいから、 達観しちゃってるようなことを 言えるの、口では。 まだ15年しか生きてないでしょ、あなた、 とも思うから、 自分の人生の裏付けが取れているかどうかは別として、 知識とか観念的にはもう、 相当達観したものを10代の頭ぐらいからもう持ってる。 |
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それは、あの、たとえば小学校とか、 親からの教育によってもそういう? |
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教えられると言うよりは 自然に見聞きしているんでしょうね。 冗談の中にもそういうのが出てくるし、 実際に滅びちゃった遺跡なんかが 目の前にあったりするわけだし。 |
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古代ローマ帝国の大きさってすごいじゃないですか。 | |
うん。地図見るとビックリするよね、 当時の勢力図。 |
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うん、びっくりする。 | |
ああいうのを見ると、 織田信長が今川義元と対決したのって近場ですよね。 |
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(笑)。 | |
(笑)そうよ、ほんとにそうよ。 | |
規模が違う! それを思うと、わたし、 モンゴルもすごいなって。 |
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うん、そりゃそうだけど、 あんた飛躍するね。話が。 それって「朝青龍にはかなわない」 ってことになるんじゃないの。 |
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御名答。 | |
じゃああやちゃんは、モンゴルのほうに 行きたいわけ? |
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いや、イタリアです! なんとなくですけど、 イタリアはヨーロッパのなかでも 「よそ行き」でなくても 受け入れてくれそうで。 |
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よそ行きね。 | |
たしかに普段着で行けば普段着で受けてくれるし、 よそ行きで行けばよそ行きで、 それ相応に受けてくれるし、 インテリで行けばそのように接待をしてくれるし、 それは全部、「私」の責任になるわけ。行く側の。 |
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はあ、はあ、はあ。 | |
あー。 | |
あなた、これだけのものしか 観てこなかったって言ったら、 あなたがそれだけのものしか 観られないような様子と知性で 行ったからでしょっていうことなの。 |
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えー! あ、でも、うん、 ヨーロッパってそうだ。 |
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恐いよ、ある意味。 | |
この夏行ったフィンランドは違ったけど、 それはいずれ「ほぼ日」のコンテンツにしますから、 おいといて、 いわゆる階級社会のあるヨーロッパの国はそうだ。 こっちの責任だ。 ぼくね、このごろ生意気なことを思うんですよ。 |
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なあに? | |
外国に行くと 日本人の旅行者が、 とってもあやうく見えるんです。 中国の旅行者の元気さとくらべると みんなが「おとなしく、めだたなく」っていうことを すごく強調しているように思えて。 そういう服装なんです。 OLふたりぐみなんかもね、 それはハイキングに行く格好だろうというスタイルで 町を歩いていたりする。 日よけの帽子被ってリュック背負って、 ブルゾンのジッパーを顎まであげて着て、 運動靴履いて、うつむいて歩いてるわけ。 そうするとね、うららさんの言うとおりで 「そういうふうに」扱われるだろうと思う。 |
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そう、そういうふうに扱われる。 | |
そりゃそうですね。 | |
うん、だからそんな格好でね、 ブランド店に行っちゃだめだし、 レストランに行ってもだめだと思うんだよ。 ちゃんと楽しい思いができないと思う。 それって自己責任でしょう。 |
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そうです。 | |
これは批判じゃないんだけれど、 お金のある中国の人たちはとっても目立つ。 お金を使うわよって気がもう満々で来てて、 着飾ってるわけ。 そうしたら向こうはそれなりの対応をするよね。 で、ぼくね、そのマネをしなくってもいいけど、 ふだんの生活のままで、同じように楽しむか、 あるいはちょっと背伸びするくらいの方が 面白いんじゃないかなと思うんだよ、 外国行くんだったら。 |
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あの、何かさ、海外に行くときのイメージって、 何か身軽にしてなきゃいけないとか、 鞄を、ひったくられるんじゃないかとか、 何かそういうのばっかりあって(笑)、 |
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それ日本でも同じだもん。 とっさのときに走れないみたいな 歩きにくい靴はどうかと思うけど、 ちゃんとお洒落してった方がいいよ。 |
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あ、でもイタリアで 金持ちそうにしていると スリやひったくりや、 ぼったくりに会うかも。 お金持ちそうでもなく、 でも賢そうにいましょう、イタリアでは。 |
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なるほど〜! 普段通りでいいんですよね。 普段通りの扱いをしてほしいわけだから。 そうなんですけど、急に旅行用の格好に なっちゃうんですよね。 |
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普通でいいんだよ。気候に合わせた防寒なり、 暑さ対策の格好をすればいいだけで、 日本て全部あるから、 1年のうちのどっかの格好して行けばいいんで。 極地は別だけどね。 まぁ、なんか語っちゃってすみません、 「あなたの責任」って、確かにそうだと思って。 |
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まあ、ほんとに短期間の旅行なら、 あなたの責任とばかりも言えないけど、 ちょっとでも住んだら、全部、あなたの責任。 そこまで老婆心を使ってくれない。 そこまでは、知らない。 「私」のことじゃないから。 |
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構ってられないわよって感じですか? | |
ううん、そうじゃないのよ、興味がないの。 親じゃないし、お姉さんじゃないし、 でもうーんと友達になったら、 とことん言ってくれる。 私のイタリア語が上手くなったのは 私のユダヤ人の親友のおかげ。 ほんとうによくしてもらったの。 |
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でも何か、さっぱりしてるのに、 たまにちょっと素敵なことをされるから、 どきっとしますよね。 ヨーロッパの男性って。 |
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へえ、そうなんだ! | |
へえ、どんなことされるの? | |
ルームメイトと一緒に留学の最後、 ちょっと素敵なご飯屋に行こうって おめかしをして出かけてったんですよ。 初めてお金をかけて イタリアンのコースを食べようって。 そしたら隣の席の全然知らないおじさんたちが 全然、何にも話してないのに、 食後酒の「リモンチェッロ」をおごってくれたんです。 |
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何か、わかったんだね。 つまり、この子たちは すごく大事なご飯を食べてるんだと。 何か大事な時間だぞと。 ちょっといいことしてあげたくなるんだ。 |
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それがすごいかっこよくて、そのまま、 おじさんたちは何も言わなくて、 「じゃあね、素敵な夜を」とか言って 出て行っちゃって。 |
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かっこいいー。 | |
あ、そういうの、いいね。 | |
かっこいー。 | |
すてきですね。 | |
自己責任かぁ。 | |
それは個人主義ということなのよ。 うんとちっちゃい子供ならともかく、 大人なんだし。 |
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そうですね。 | |
モテたくないって格好してたらモテないですよね。 売ってますっていうアピールしなければ 買い手はつかないっていうだけの話ですよね。 |
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でも何か日本人てそういう考え、 ちょっと薄くないですか? |
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薄いです。 | |
うん、でも日本人は日本人のすてきさがあって、 老婆心を掛け合って、助け舟を出し合って、 コミュニケーションをお互い取り合ってきたわけで。 |
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そうそうそう、でもヨーロッパは 曖昧にニッコリしちゃうと、 契約成立になっちゃうから。 僕がにっこりしたら君は笑ったでしょ、 さあまいりましょうって。 |
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嫌だって言えばもう済んじゃうわけだから。 相手が嫌だって言われたことで、 その男が傷つこうが傷つくまいが、 私は知ったこっちゃない。 それでいいの。 向こうは、お友達に慰めてもらうなり、 じつは全然傷ついてないなり、 「それは私の問題じゃない」っていう言い方は すごくする、イタリア語で。 |
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そんななかで、フランコさんて、 ちょっと涙もろい感じというか、 ポエティック、詩的なときが あるじゃないですか、時々。 すごくクールな分析と、 冷静な書き方をするときもあれば、 すごく情に厚い面がある。 |
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基本的にね、弱い者を守ろうとしますよね。 カソリックの影響もありつつ、 本心からそうなんでしょうけど、 弱い者、動物、子供、 もうほんとにみんな、大事にしようとする。 |
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だから、かなしい出来事を語る時に そんなふうになるのかもしれない。 フランコさんの視点は弱者に優しいんですよね。 |
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それがだいぶ、やっぱり現代っ子たちは 崩れてきちゃって、電車に乗っても、 バスに乗っても席を譲ってくれないって 嘆くお年寄りが増えてはきてるみたいね。 それがイタリアの伝統でもあったのにね。 地方では残ってると思うけれど‥‥、 ミラノがいちばんぶっ壊れてると思います。 |
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うららさんが留学していたころとは、 変わっちゃったんですか。 |
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私が留学してた70年代には、 日本人の女の子が住んでいるというのは、 ミラノでもまだ珍しく、 ほぼパンダ、珍獣あつかい。 あ、笑った〜、 イタリア語をしゃべった〜〜〜、 みたいな。 だから、けっこう大事に あつかってもらいましたが、 今は時代もあまり良くなくて、 人間関係もギスギスしがちなようなので、 こちら側がキチンと自分を出すことが 必要でしょうね。 |
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でもその「いいところ」が残っていることを信じて イタリアに旅行にいってみたくなりました。 |
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わたしもぜひ夫と! | |
わたしもしばらく行ってないから 行きたくなってきました(笑)。 |
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わたしも行きたいです。 | |
わたしもー。 | |
じゃあ向こうでみんなで落ち合ってゴハン食べましょう! | |
ふふふ、それができたらステキなのにね。 ぜひ本も、読んでみてくださいね。 |
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はーい、ありがとうございました! (おしまい) |