イタリアって暮らしやすい国ですか? | |
住む人によるんじゃないかしら。 | |
暮らしはじめることが、 もしかして、大変かもよ。 暮らしてしまえば、なんとかなりそうだけど。 |
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大変なのかな。 | |
大変だと思うよ。 | |
村上春樹さんがローマに住むときに、 コネ社会で部屋が見つけづらいって エッセイに書かれていたような気がする。 |
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その代わり、コネがあったら一発なのよね。 イタリア人が言ってたけど、 日本人ていうのは知り合ってすぐ、 とってもニコニコして愛想がよくって、 でもいざ、それ以上、仲良くなろうと思ったら すごく警戒するねって。 |
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そうですね。 | |
イタリア人は手前で警戒してるけど、 ほんとに仲良くなったら もうずっとそのまんまだよって。 そういう言い方をイタリア人がしていた。 あっちに侵略され、こっちで戦って、 町同士で戦い合いみたいなところで、 相手をそう簡単には信じないところが たしかにあるんだと思う。 あのね、すっごい面白かったのは、 イタリア古典喜劇、 コメディア・デラルテっていうのがあって、 世界のギャグやコメディの基本になったって 言われるような喜劇の、 ワークショップに立ち会ったことがあるの。 日本の喜劇というのは根本的に みんな、いい人たちで、 お互いのことを思っているんだけど、 何かの拍子に行き違って誤解が生まれて、 騒動になって、それでも解決してみたら、 あ、みんな、思い合ってたんじゃない、 はい、バンバンザイって、 大団円の終わりでしょ。 |
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うん、うん。 | |
向こうの喜劇は根本的に全部反目し合ってるし、 信じてない。だけど表面的に合わせて、 このお金、ちょっと預けて、 あの人に届けてね、はい、はい、 だけど何もやってないから 蓋開けてみたらばらばらになってて、 最後はまとまんない。 |
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(笑)。 | |
あの、狂言の終わりみたいな、 やるまいぞ、やるまいぞ、みたいな、 ばらんばらんになって大騒ぎで終わる。 人間に対する出発点がもうこんなに違う。 笑いについてもそんな感じ。 忠義のために身をやつして、 なんていうのは絶対イタリアにはない。 |
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迷子になったりとかして、 周りの人に聞くじゃないですか。 すいません、いちばん近い広場はどこですか? そうすると、わからなくっても、 教えてくれるのよ。 で、間違ってるから また同じ道に戻ってきたりして。 分からないんだったら分からないって 言ってくれた方がいいのにって。 |
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分からないって言ったら 気の毒だって思うのよね。 |
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とにかく助けたいって気持ちはあるんだけど、 でも分かんない。でも助けたい。 |
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それ、優しいね。 | |
日本だったら「なまじかけるな、うす情け」。 最後までフォローできないんだったら やめときなさいっていうものね。 |
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お調子者が多い? | |
人にもちろんよるけど、お調子者が多い! | |
「ライフ・イズ・ビューティフル」や 「ニュー・シネマ・パラダイス」、 とっても好きで。 あれ、イタリアですよね? どんなときも、この場を楽しく過ごそうよっていうか。 |
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そう、もちろんどんなときも この場を楽しく過ごすんだけど、 その裏側に絶望、歴史的な絶望感、人間不信、 そういうものが、ひそんでいたりするのよね。 |
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ああ‥‥。 | |
ところで、イタリアの学生は勉強家ですか? | |
うん、勉強家ですよ。 大学に行ける人が限られてることもあるけど、 勉強してるよー、向こうの大学生。 というか大学は勉強したい人がいくところで、 どんなに頭がよくても、 勉強したくないなら大学行く必要ないでしょ、 という考え方です。 勉強が嫌いだから学校に進まないってことは 恥でも何でもないわけね。 |
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いろんなものを認める価値感が ちゃんとしてるんですね。 あのう、またぜんぜん違う質問で もうしわけないんですけど、 イタリアって気候はどんな感じなんですか? |
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えーっと、北は寒くて南は暑いけど、 それぞれに四季がある。 |
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ミラノはいつがおすすめですか? | |
北国はやっぱり冬、いいですよ。 ただし、寒くて湿気がある。 ロンドンの次に霧が出ると 言われています、ミラノは。 |
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ああ、そうですね。 | |
はじめて行くなら? | |
ミラノのことはわからないけれど、 ヨーロッパって、5月、6月は ほんとうに美しいですよ。 |
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梅雨はない? | |
梅雨はなくて。 | |
花も咲いて晴れてるけど 汗ばまない程度に暖かくて。 |
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あの、すごく変な話してもいいですか? | |
どうぞどうぞ(笑)。 | |
日本は結婚したら浮気はだめだってことに なってるじゃないですか。 |
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うん。 | |
イタリアはどうなんでしょうか。 なんだか自由よみたいな印象が。 |
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とんでもない、絶対ダメよ。 | |
あ、絶対ダメ? | |
カソリックの国だもん。 | |
あー。 | |
絶対ダメよ。 離婚の条件にもちろんなるし、 ばれたらたいへんなことになる。 |
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でもやるんですよね、皆さん? | |
(笑)。 | |
もちろんよ。しないわけがない。 | |
ああ、人間くさいなあ。 | |
男性も女性も? | |
まあ、それは圧倒的に 男性の方が多いでしょうね。 |
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それだけモテるってことですか。 何か一般的なイタリア男っていう イメージがあるじゃないですか。 |
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うん。色っぽいものね。 | |
じゃあ、嫌われるイタリア男って どんな感じの人ですか? |
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嫌われるイタリア男? ヤキモチ焼きで、もうほんとに、 がんじがらめにしてくるような男。 それはどこの国でもいっしょよ(笑)。 でしょ? |
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やだー。 | |
フェリーニの映画とか観てると、 マストロヤンニが誰にでも色目使って よろしくやるんだけど それでも女性から憎まれてないんだよね。 |
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うん、うん。 | |
妻からでさえも、 ま、しょうがないわねって思われつつ、 離婚はされないで、 で、彼女がいて、 さらに人妻の愛人までいたりして。 |
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あ、でも思ってるイタリア男の イメージはそんな感じですよ。 |
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みなさん、マストロヤンニは そこらへんにごろごろしてはいないわけです(笑)。 なので、あれはイタリア男たちの 願望でもあるのであります。 |
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そりゃそうだ(笑)。 | |
そりゃそうだよね。 あんなかっこいい人、いないよね。 (つづきます) |