「フランコさんのイタリア通信」が本になります。 酒井うららさんと、 イタリアについてしゃべろう!


第7回 とっても人間くさいなぁ。

あやや イタリアって暮らしやすい国ですか?
酒井うらら 住む人によるんじゃないかしら。
シェフ 暮らしはじめることが、
もしかして、大変かもよ。
暮らしてしまえば、なんとかなりそうだけど。
あやや 大変なのかな。
酒井うらら 大変だと思うよ。
シェフ 村上春樹さんがローマに住むときに、
コネ社会で部屋が見つけづらいって
エッセイに書かれていたような気がする。
酒井うらら その代わり、コネがあったら一発なのよね。
イタリア人が言ってたけど、
日本人ていうのは知り合ってすぐ、
とってもニコニコして愛想がよくって、
でもいざ、それ以上、仲良くなろうと思ったら
すごく警戒するねって。
あやや そうですね。
酒井うらら イタリア人は手前で警戒してるけど、
ほんとに仲良くなったら
もうずっとそのまんまだよって。
そういう言い方をイタリア人がしていた。
あっちに侵略され、こっちで戦って、
町同士で戦い合いみたいなところで、
相手をそう簡単には信じないところが
たしかにあるんだと思う。
あのね、すっごい面白かったのは、
イタリア古典喜劇、
コメディア・デラルテっていうのがあって、
世界のギャグやコメディの基本になったって
言われるような喜劇の、
ワークショップに立ち会ったことがあるの。
日本の喜劇というのは根本的に
みんな、いい人たちで、
お互いのことを思っているんだけど、
何かの拍子に行き違って誤解が生まれて、
騒動になって、それでも解決してみたら、
あ、みんな、思い合ってたんじゃない、
はい、バンバンザイって、
大団円の終わりでしょ。
シェフ うん、うん。
酒井うらら 向こうの喜劇は根本的に全部反目し合ってるし、
信じてない。だけど表面的に合わせて、
このお金、ちょっと預けて、
あの人に届けてね、はい、はい、
だけど何もやってないから
蓋開けてみたらばらばらになってて、
最後はまとまんない。
シェフ (笑)。
酒井うらら あの、狂言の終わりみたいな、
やるまいぞ、やるまいぞ、みたいな、
ばらんばらんになって大騒ぎで終わる。
人間に対する出発点がもうこんなに違う。
笑いについてもそんな感じ。
忠義のために身をやつして、
なんていうのは絶対イタリアにはない。
なんこ 迷子になったりとかして、
周りの人に聞くじゃないですか。
すいません、いちばん近い広場はどこですか?
そうすると、わからなくっても、
教えてくれるのよ。
で、間違ってるから
また同じ道に戻ってきたりして。
分からないんだったら分からないって
言ってくれた方がいいのにって。
酒井うらら 分からないって言ったら
気の毒だって思うのよね。
なんこ とにかく助けたいって気持ちはあるんだけど、
でも分かんない。でも助けたい。
キノシタ それ、優しいね。
酒井うらら 日本だったら「なまじかけるな、うす情け」。
最後までフォローできないんだったら
やめときなさいっていうものね。
あやや お調子者が多い?
酒井うらら 人にもちろんよるけど、お調子者が多い!
あやや 「ライフ・イズ・ビューティフル」や
「ニュー・シネマ・パラダイス」、
とっても好きで。
あれ、イタリアですよね?
どんなときも、この場を楽しく過ごそうよっていうか。
酒井うらら そう、もちろんどんなときも
この場を楽しく過ごすんだけど、
その裏側に絶望、歴史的な絶望感、人間不信、
そういうものが、ひそんでいたりするのよね。
あややシェフ
キノシタなんこ
  やまかわ
ああ‥‥。
シェフ ところで、イタリアの学生は勉強家ですか?
酒井うらら うん、勉強家ですよ。
大学に行ける人が限られてることもあるけど、
勉強してるよー、向こうの大学生。
というか大学は勉強したい人がいくところで、
どんなに頭がよくても、
勉強したくないなら大学行く必要ないでしょ、
という考え方です。
勉強が嫌いだから学校に進まないってことは
恥でも何でもないわけね。
あやや いろんなものを認める価値感が
ちゃんとしてるんですね。
あのう、またぜんぜん違う質問で
もうしわけないんですけど、
イタリアって気候はどんな感じなんですか?
酒井うらら えーっと、北は寒くて南は暑いけど、
それぞれに四季がある。
やまかわ ミラノはいつがおすすめですか?
酒井うらら 北国はやっぱり冬、いいですよ。
ただし、寒くて湿気がある。
ロンドンの次に霧が出ると
言われています、ミラノは。
なんこ ああ、そうですね。
あやや はじめて行くなら?
シェフ ミラノのことはわからないけれど、
ヨーロッパって、5月、6月は
ほんとうに美しいですよ。
あやや 梅雨はない?
シェフ 梅雨はなくて。
シェフ 花も咲いて晴れてるけど
汗ばまない程度に暖かくて。
あやや あの、すごく変な話してもいいですか?
酒井うらら どうぞどうぞ(笑)。
あやや 日本は結婚したら浮気はだめだってことに
なってるじゃないですか。
酒井うらら うん。
あやや イタリアはどうなんでしょうか。
なんだか自由よみたいな印象が。
酒井うらら とんでもない、絶対ダメよ。
あやや あ、絶対ダメ?
酒井うらら カソリックの国だもん。
シェフ あー。
酒井うらら 絶対ダメよ。
離婚の条件にもちろんなるし、
ばれたらたいへんなことになる。
あやや でもやるんですよね、皆さん?
酒井うららシェフ
キノシタなんこ
  やまかわ
(笑)。
酒井うらら もちろんよ。しないわけがない。
シェフ ああ、人間くさいなあ。
あやや 男性も女性も?
酒井うらら まあ、それは圧倒的に
男性の方が多いでしょうね。
やまかわ それだけモテるってことですか。
何か一般的なイタリア男っていう
イメージがあるじゃないですか。
酒井うらら うん。色っぽいものね。
なんこ じゃあ、嫌われるイタリア男って
どんな感じの人ですか?
酒井うらら 嫌われるイタリア男?
ヤキモチ焼きで、もうほんとに、
がんじがらめにしてくるような男。
それはどこの国でもいっしょよ(笑)。
でしょ?
なんこあやや
やまかわキノシタ
やだー。
シェフ フェリーニの映画とか観てると、
マストロヤンニが誰にでも色目使って
よろしくやるんだけど
それでも女性から憎まれてないんだよね。
酒井うらら うん、うん。
シェフ 妻からでさえも、
ま、しょうがないわねって思われつつ、
離婚はされないで、
で、彼女がいて、
さらに人妻の愛人までいたりして。
あやや あ、でも思ってるイタリア男の
イメージはそんな感じですよ。
酒井うらら みなさん、マストロヤンニは
そこらへんにごろごろしてはいないわけです(笑)。
なので、あれはイタリア男たちの
願望でもあるのであります。
あややシェフ
キノシタなんこ
  やまかわ
そりゃそうだ(笑)。
シェフ そりゃそうだよね。
あんなかっこいい人、いないよね。

(つづきます)

2008-12-04-THU

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