体温のある指導者・番外篇。
藤田元司さんと、チーム論や石の話など。

2 チームは人間そのものです。
 

糸井 プロ野球って、
超一級の人が集まる場所だから、
おもしろいですね。
藤田 それぞれが、
天下取ったヤツばっかりですから。
なかなか、話が、おさまらないです(笑)。
糸井 「王さま」の集まりですもんねぇ。
ピッチャーは、特にそうでしょう?
藤田 ピッチャーは、
なんかワイワイいいだしたら、
その場に、入っていかないんです。

知らん顔して、自分の世界にいっちゃう。
バッターは、ガンガン、
やりあいっこを、するんですよね。
糸井 ピッチャーっていうのは、
もっと「職人」タイプなんですか?
藤田 うん。
ピッチャーっていうのは、
割合と、仲間にならないんです。
糸井 そういえば、
「投手会」って、別に生きてますね。
藤田 ええ。必ず投手会っていうのはありましてね……。
糸井 あれ、不思議ですよね、思えば(笑)。
みんな、選手なのに、
ピッチャーだけ特別の会がある。
藤田 ええ。
投手会のほうが、よくまとまってるんですよね。
糸井 仲、いいですよね……。
藤田 直接の利害関係ないですから。
バッターには、
打順やポジションの争いがあるでしょう?
ピッチャーは、
ぜんぜん、ポジション争いがないですから。
糸井 そっかー。
藤田 ええ。
だって、仲良くニコニコ話したって、
ポジション争いですものね。
怪我したらシメシメって思うくらいですから。
糸井 (笑)営業マンの
集まりみたいなもんですからね。
なんか、ちょっと聞いてるだけでおもしろい!
もう、貯まってんだよね、藤田さんの中に……。
すごいなぁ。
藤田 そうですか。ありがとうございます。

さっきの話、やっぱりその点、
野手はむずかしいですよ。
意地っ張りで、気力の強いヤツで、
技も持っているヤツというのは、
よほど上手く使わないと
ちょっと1回ひねくれると、
力を、半分も出さなくなりますからね。

で、チーム内の不平分子になっちゃいます……。
糸井 その場合、
思いっきりおだてるほうがいいんですか?
藤田 そういう実力者に
「何番でも打てる」と、言い聞かせてやれば、
「あ、そうか」というかたちになりますから。
下位打線にも、裏のクリーンナップと伝えて。
糸井 昔の、駒田や岡崎がそうでしたね。
藤田 そういうふうに
まわりに言ってもらうように仕向けると、
自分たちで、えばってるわけですよ。
そういうふうな感じに持ってってやると、
ちゃんと、働くんですよね。

意地を持っているやつのその意地も、
うまいこと生かしてやらないと、
しょげるヤツと反発するヤツとおりますから。


川上さんが監督時代に、
選手の土井に、じょうずに接したんですよ。
「どうやるかな?」って見ていたら、うまい。

「何でも言え」と土井に言ったんです。
「影で言ったら、不平不満になるけれど、
 面と向かって言ったら、それは進言なんだ。
 オレは、おまえの意見はちゃんと聞くから」


そしたら、土井がよろこびまして……。
どっちかっていうと「言いたいタイプ」だから、
聞いてくれるし、言いたい放題言ったものを、
「不平不満じゃない」と思って聞いてくれる。
よろこんじゃって、働きましたよ。
糸井 へぇー。
藤田 あれ、うまいなと思ったですよ。
糸井 藤田さん時代の
駒田や岡崎なんて、
間違ったらえらいことになってましたよね。
藤田 失敗したら、
えらいマイナス要因になるところだった。
糸井 野手の中で、
よそのチームの主力が
ほかのチームに入ってきたとしても、
働かない場合って、理由は何なんですか?
藤田 トレードされる前に
一流の選手に見えていても、
いわゆる選手としての中身が
たくさん詰まっていない人がいます。
そういう人の中身には、
何か、余分なものが、入っているでしょう?
「もろい」んですね。

修行が足りないと言ってしまえば、
そういう言葉になるかもわかんないけど、
そんな選手を見ると、
「詰ってないなぁ」と思いましてね。
糸井 うん、そうなんですよね。
だから、そういう選手って、
打っても運で打ったように見えちゃう。
藤田 結局、そういう人は、
田舎の大将かなという感じがしましてね。
「練られてないな」と思うんです。
糸井 ダメなチームって、どういうもんですか?
藤田 結局ね、ダメな時は、選手ひとりひとりの
やってることが、ものすごく無責任なんですよ。

「よければ、いいや」
っていう程度で、見ていても、
「何がなんでも食らいついてやろう」
というところが見えない。
これは、もったいないですし、負け犬根性です。

ぼくは以前、そういう経験を
他のチームを訪れた時にしたんですが、
そういう時は、ミーティングでこちらが
「優勝しようや!」って言ったとしても、
みんなシラーッとしちゃったりして……。
ニヤニヤ横向いて笑っていやがったから、
コンチクショウと思ったんです。

「今年、頑張ろう!」って言ったとたんに
横を向いてね、シラケやがったり。
負けチームって、そうなるんですよね。
負け慣れてるチームってね……。

そういうチームほど、まぐれでトップになったら、
すぐ気を失っちゃって、自分たち何してるか、
わかんなくなっちゃうんですね。
糸井 うーん……
なんか人間の話みたいですね、チームって。
藤田 いえ、チームって、人間そのものですよ。
糸井 ひとりの人間なんですね。
藤田 ええ、そうなんですよ。
みんな、ひとつのものの中の部品ですから。
  (明日に、つづきます!)

2003-07-02-WED


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