糸井 |
藤田さんは、趣味の「石」を、
やってらっしゃったんですか? |
藤田 |
ええ。ぼくは、石、
やりはじめるの、早かったんです。 |
糸井 |
石って、最後に
行き着く趣味だっていうじゃないですか。
今もやってらっしゃるんですか? |
藤田 |
石はもうね、床が抜けそうになって、
みんなあげました。少し残ってますけどね。 |
糸井 |
あれって、そもそも、
どういう趣味なんですか? |
藤田 |
あれはね、あの、
もともとの石の形を変えて
削りだしていろいろかたちを作るのは、
あんまり、ぼくは好きじゃなくて、自然に、
いろんな姿になっている石が、好きですね。
例えば、自然にできた石が
富士山の形をしていたりね……。
それから、崖がこうあって、
そっから白い滝がダーッと落ちてる形の
いい石が、そのままあったり。
それから、険しい海の波が
かぶるような岩になってるようなものが
スッとあったり。
そういうものの、なんか、その姿を見る……。 |
糸井 |
見立てるんですか? |
藤田 |
ええ。見立てていくんですよね。
自然にできてるわけ。
極端なのは、崖があって、白い滝があって、
その滝に橋が架かっていたりする。 |
糸井 |
自然石で。 |
藤田 |
はい。
「養老の滝」っていう名前で、
これは有名な石ですけど。
自然でそうなってるのがあるんですよ。
これが、おもしろいんです。
一日中じーっとこうやって、
霧吹きでシュッシュッて吹いて。
で、水を吹いてやると、
石が生きてくるんですよね。
ぬらしてやると。 |
糸井 |
ふーん。 |
藤田 |
それをね、全国歩いて集めるんですよ。 |
糸井 |
移動するのは、野球の仕事があるから、
逆にいいですね。 |
藤田 |
うん、行けるんです。
土地土地に、
そういう石の好きな人がいましてね(笑)。
その家に行ってね。 |
糸井 |
趣味多いですね、藤田さん(笑)。 |
藤田 |
いや、ぼくは、いろんなもんやって、
長続きしないですけどね。
それで、石をいちばん持ってたのは、
名古屋の人だったですけど。
旅館をひとつ潰して、部屋に
ぜんぶ、石をずーっと飾っておいて……。
あれを見ると、見事なもんですよ。 |
糸井 |
禅とか、
そういうのに繋がるような? |
藤田 |
禅……ぼくは、川上さんに、
もう何回も、毎年誘われましたけど。 |
糸井 |
それは、ダメなんですか? |
藤田 |
ああいうね、じーっとしてね、
座禅組むっていうのはねぇ(笑)。
ちょっと教わりましたけどね、座禅もね。
とてもじゃないけど、腰が持たないです。 |
糸井 |
そうですか。 |
藤田 |
あれは大変ですよ。 |
糸井 |
座禅って、
ものすごい長い時間、組むんですか? |
藤田 |
朝、3時に起きるでしょう?
それから2時間、5時まで禅を組んで。
それから、6時に食事をするんですよね。
お粥で、お新香2枚ぐらいかなぁ?
音を立てて
お新香食べちゃいけないっていうんですよね。
で、それでこう、きれいに掃除をして。
それからまた、午前中2時間、座禅組んで。
それから、掃除したり運動したりとかして。
で、確か、1日の自由時間が
2時間ぐらいしかないんですよ。
あとは座禅。
それはまあ、座禅を組む修行の1ヶ月ですけども。 |
糸井 |
それで1ヶ月なんですか! |
藤田 |
1ヶ月やるんです。
それも真冬にね、岐阜の山ん中の、
正眼寺っていうところでね、1ヶ月(笑)。 |
糸井 |
藤田さん、やられたんですか? |
藤田 |
ちょっと行ったんです。
もう、アゴ出して帰ってきましたけどね。 |
糸井 |
え、1ヶ月のうちの……。 |
藤田 |
1ヶ月のうちの2、3日、行ってきました。
だから、禅とは言えないんですけど。
それで、終わると精進落としって言って、
郷へ行って、ドンチャン騒ぎして
帰ってくるんですけどねぇ。 |
糸井 |
よく精進落としっていう言いわけをしながら、
騒いでるのは、そっからきてるんですね。 |
藤田 |
もう、あれは、
あんな苦痛なところから解放された喜びでね、
やるんですよ(笑)。 |
糸井 |
現世に戻る、と。 |
藤田 |
そうです。
川上さんはもう、毎年、冬に
10年ぐらいは行きましたかね。
1ヶ月の修行の期間。冬場で……。
そこへ行って、それはもう痩せ細って、
厳しい顔して帰ってきますよね。 |
糸井 |
それは、
川上さんを変えたんでしょうかねぇ。 |
藤田 |
うん、やっぱり、変えたことは確かですね。
相当なナマグサだったですからね、あの人もね。
もうしたい放題ね、言いたい放題で、身勝手で、
ひどかったけど、そういうのは、消えましたから。 |
糸井 |
ふーん。 |
藤田 |
やっぱり、あれが効いてるんでしょう。
それと、物事のなんていうか、結論っていうか、
これが正しい正しくないっていう分かれ道を、
はっきり知ってくるんですね、禅を組むと……。 |
糸井 |
禅っていうのは、1回こう、
飢餓状態に置くってことですよね、
大きい意味ではね。 |
藤田 |
「こういう問題はどうか」
って持ちだされたときに、これが正しいよ、
っていう方向づけ、川上さんは早いですよね。
即座にできますから。 |
糸井 |
藤田さんは生臭いまんまでいられたんですか? |
藤田 |
もう、ナマグサの頂点だったですね。わはははは。 |
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(日曜に、つづきます!) |