原丈人さんと初対面。 考古学から『21世紀の国富論』へ。ベンチャーキャピタリストの原丈人さんと 糸井重里が会いました。 最初、コンテンツにしようなんて 考えてなかったのですが そのときの話が、とにかくおもしろかったのでした。 考古学者のたまごから 世界が舞台のベンチャーキャピタリストへ。 一歩一歩、「現場」をたしかめながら歩んできた 原さんの「これまで」と「これから」。 そこにつらぬかれている「怒り」と「希望」。  ぜひどうぞ、というおすすめの気持ちで おとどけしたいと思います。 ぜんぶで10回、まるごと吸いこんでください。 あなたなら、どんな感想を持つでしょう。


第10回 自分の足で立たせるというやり方。
原 最後にもうひとつ、
アフリカについて言わせてください。
糸井 ええ、もう、
なにが出てきても驚きませんから(笑)。
原 ご存知のように、アフリカというのは、
世界でもっとも貧しい地域です。

毎年、時間があったら
視察して回っているんですけど、
そうするとね、
たしかに教育なんかも重要なんだけど、
そのまえに‥‥食べるものがない。

糸井 つまり、そこが満たされてからだと。
原 食料については、さっきの「FAO」って機関が
食糧援助をしてるんだけど、
ここに任せておいたら、小麦だとか、米だとか
先進国の余剰農産物しか持ってこないんです。

でも、そんな炭水化物ばっかりあったって、
たんぱく質がなかったら、生きていけないでしょう。

そこで、もっとも効率のいい
たんぱく質の栄養源を探した結果、
「スピルリナ」っていうのを見つけたんですよ。
糸井 えっと、「藻」‥‥ですか?
原 ええ、クロレラなんかと同じね。

で、このスピルリナには
100グラムあたり、
65グラムから75グラムのたんぱく質が
含まれているんです。

牛肉なんかだと、約19グラムです。
糸井 はるかに多いですね。
原 このスピルリナをうまく栽培できたら、
効率のいい栄養源になるでしょう。

実際、WHOが
飢餓状態だったニジェールの子どもに
スピルリナを90日間投与したら、
元気になったという報告もあるんです。
糸井 ほう‥‥実証ずみだと。
原 すでに、アメリカ、フランス、イタリアなどが
スピルリナを栽培して、途上国に提供してます。

でもそこで、わたしがやりたいのは
「スピルリナ先進国」から
やりかたを学んで‥‥じゃないんです。

そういう国がやってなくて、
もっともっと、効果のあがることを、
やりたいと思っているんです。
糸井 ‥‥というと?

原 イタリアもフランスも、スピルリナをつくって、
チャドやニジェールなど
貧しい国に、タダであげてるんですよ。

でも、やっぱり‥‥もらってるかぎり、
ダメだと思うんです。
長期的なスパンで考えたら。
糸井 根本的な解決法じゃないですよね。
原 そう。ようするに、その国の人たちが
自分たちで栽培できるように
スピルリナを「品種改良」しようと。

世界の飢餓問題を、
そうやって解決したいと思っているんです。
糸井 アフリカの国々では、
いまはまだ、栽培できないんですか?
原 その国その国の土壌や気候に応じた
品種改良をしないと、ダメなんです。

だからいま、そういう品種改良のプロジェクトを
日本の九州大学と
千葉大学の農学部に、はたらきかけているところ。
糸井 そこでも「日本」の大学なんですね。
原 やはり、飢餓対策というのはね、
国連の大きなテーマなんです。

それを日本がリードして解決するために、
この計画をもちかけたんですよ。

そうしたら、担当部局である
経済社会理事会の大使に任命されまして、
いま、世界の飢餓対策のプロジェクトを
いろいろ、考えているんです。
糸井 いくつ大使やってるんですか(笑)。
原 改善したいと思うことを実現するために
いろんな立場を、
活用させてもらってるんですよね。
糸井 なるほどなぁ‥‥。

原さんの場合、どのケースも
「自分の足で立たせるんだ」というのが、
基本の姿勢になってるんですね。
原 ええ、そうかもしれません。
糸井 ご自分の成り立ちもそうだし。
原 ええ、まぁ(笑)。
糸井 お話が、ぜんぶ前向きというか、
光のほうに向かってるから、
明るい気持ちになるんですよ、聞いてて。
原 わたしはね、日本がこのままいくと‥‥。

いままでの日本というのは、
世界第2位の経済大国ということで、
ただ、お金を持ってるから
世界から必要とされてきたに過ぎないと思うんです。

でも、外貨準備高なんて
すでに中国に抜かれていますし、
将来的には、
インドはじめその他のいろんな国が
日本よりお金を持つようになる。
糸井 お金を持ってるだけじゃ、もうダメだと。
原 日本なしでは、地球は困ると
世界各国から思われなければならない。


糸井 でも、これからの若い人が
原さんみたいに考えはじめたら、
おもしろくなりそうだなぁ、この国も。
原 そうなると、いいんですけどね。
糸井 いや‥‥お話できて、おもしろかったです。
なんだか
エンターテインメントみたいな言いかたをしてしまって
申しわけないんですけれども(笑)。
原 あ、いや、とんでもない。
糸井 今日は、貴重なお時間を、ありがとうございました。
原 いえいえ、こちらこそ。

おわります

2007-12-03-MON

(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN