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原 |
最後にもうひとつ、
アフリカについて言わせてください。 |
糸井 |
ええ、もう、
なにが出てきても驚きませんから(笑)。 |
原 |
ご存知のように、アフリカというのは、
世界でもっとも貧しい地域です。
毎年、時間があったら
視察して回っているんですけど、
そうするとね、
たしかに教育なんかも重要なんだけど、
そのまえに‥‥食べるものがない。
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糸井 |
つまり、そこが満たされてからだと。 |
原 |
食料については、さっきの「FAO」って機関が
食糧援助をしてるんだけど、
ここに任せておいたら、小麦だとか、米だとか
先進国の余剰農産物しか持ってこないんです。
でも、そんな炭水化物ばっかりあったって、
たんぱく質がなかったら、生きていけないでしょう。
そこで、もっとも効率のいい
たんぱく質の栄養源を探した結果、
「スピルリナ」っていうのを見つけたんですよ。 |
糸井 |
えっと、「藻」‥‥ですか? |
原 |
ええ、クロレラなんかと同じね。
で、このスピルリナには
100グラムあたり、
65グラムから75グラムのたんぱく質が
含まれているんです。
牛肉なんかだと、約19グラムです。 |
糸井 |
はるかに多いですね。 |
原 |
このスピルリナをうまく栽培できたら、
効率のいい栄養源になるでしょう。
実際、WHOが
飢餓状態だったニジェールの子どもに
スピルリナを90日間投与したら、
元気になったという報告もあるんです。 |
糸井 |
ほう‥‥実証ずみだと。 |
原 |
すでに、アメリカ、フランス、イタリアなどが
スピルリナを栽培して、途上国に提供してます。
でもそこで、わたしがやりたいのは
「スピルリナ先進国」から
やりかたを学んで‥‥じゃないんです。
そういう国がやってなくて、
もっともっと、効果のあがることを、
やりたいと思っているんです。 |
糸井 |
‥‥というと?
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原 |
イタリアもフランスも、スピルリナをつくって、
チャドやニジェールなど
貧しい国に、タダであげてるんですよ。
でも、やっぱり‥‥もらってるかぎり、
ダメだと思うんです。
長期的なスパンで考えたら。 |
糸井 |
根本的な解決法じゃないですよね。 |
原 |
そう。ようするに、その国の人たちが
自分たちで栽培できるように
スピルリナを「品種改良」しようと。
世界の飢餓問題を、
そうやって解決したいと思っているんです。 |
糸井 |
アフリカの国々では、
いまはまだ、栽培できないんですか? |
原 |
その国その国の土壌や気候に応じた
品種改良をしないと、ダメなんです。
だからいま、そういう品種改良のプロジェクトを
日本の九州大学と
千葉大学の農学部に、はたらきかけているところ。 |
糸井 |
そこでも「日本」の大学なんですね。 |
原 |
やはり、飢餓対策というのはね、
国連の大きなテーマなんです。
それを日本がリードして解決するために、
この計画をもちかけたんですよ。
そうしたら、担当部局である
経済社会理事会の大使に任命されまして、
いま、世界の飢餓対策のプロジェクトを
いろいろ、考えているんです。 |
糸井 |
いくつ大使やってるんですか(笑)。 |
原 |
改善したいと思うことを実現するために
いろんな立場を、
活用させてもらってるんですよね。 |
糸井 |
なるほどなぁ‥‥。
原さんの場合、どのケースも
「自分の足で立たせるんだ」というのが、
基本の姿勢になってるんですね。 |
原 |
ええ、そうかもしれません。 |
糸井 |
ご自分の成り立ちもそうだし。 |
原 |
ええ、まぁ(笑)。 |
糸井 |
お話が、ぜんぶ前向きというか、
光のほうに向かってるから、
明るい気持ちになるんですよ、聞いてて。 |
原 |
わたしはね、日本がこのままいくと‥‥。
いままでの日本というのは、
世界第2位の経済大国ということで、
ただ、お金を持ってるから
世界から必要とされてきたに過ぎないと思うんです。
でも、外貨準備高なんて
すでに中国に抜かれていますし、
将来的には、
インドはじめその他のいろんな国が
日本よりお金を持つようになる。
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糸井 |
お金を持ってるだけじゃ、もうダメだと。 |
原 |
日本なしでは、地球は困ると
世界各国から思われなければならない。
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糸井 |
でも、これからの若い人が
原さんみたいに考えはじめたら、
おもしろくなりそうだなぁ、この国も。 |
原 |
そうなると、いいんですけどね。 |
糸井 |
いや‥‥お話できて、おもしろかったです。
なんだか
エンターテインメントみたいな言いかたをしてしまって
申しわけないんですけれども(笑)。 |
原 |
あ、いや、とんでもない。 |
糸井 |
今日は、貴重なお時間を、ありがとうございました。 |
原 |
いえいえ、こちらこそ。 |