糸井 |
1928年の「名機関車」を探して、
南アフリカのヨハネスブルグに。 |
原 |
ええ、このあたりだろうってところに
ようやくたどりついたと思ったら、
なんと800両も放置されてたんですよ。 |
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糸井 |
機関車が? |
原 |
そう。 |
糸井 |
機関車が800両‥‥って
だれも見たことないでしょうね、そんな景色。 |
原 |
途方に暮れました。 |
糸井 |
そうでしょう(笑)。 |
原 |
いくらね、父が若いといったって
当時、もう86歳ですから、
探しまわるのは、わたしの役目でして。 |
糸井 |
助手として(笑)。 |
原 |
で‥‥300両くらい見て回ったときに、
とうとう、見つけたんです。 |
糸井 |
その、1928年の機関車を? |
原 |
はい。 |
糸井 |
あったんだ!
それにしても、モノクロ写真1枚から
本当に機関車を見つけ出しちゃうところが
原さん親子のすごさですよね‥‥。 |
原 |
そのあとはもう、大撮影大会がはじまって。
前からパチリ、うしろからパチリ、
仰向けになって車輛のお腹の部分をパチリ、
隣の機関車の屋根にのぼってパチリ‥‥。 |
糸井 |
原さんが、ですよね(笑)。 |
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原 |
ええ、わたしが。
父は、横からいろいろ指示を出して。 |
糸井 |
エンジンの内部とか
メカニックの部分も調べるんですか? |
原 |
まぁ、そうですね、可能なら。 |
糸井 |
それができない場合っていうのは、
なかの機械を類推するわけですか。 |
原 |
ああ‥‥それはね、たとえば
南アフリカじゃモーターなんかは作ってない。
たいてい、
スイスのメーカーのものだったりするんです。 |
糸井 |
あ、そうなんだ。 |
原 |
だからそのあたりは、経験と類推でなんとか。
少なくとも、型番さえわかれば大丈夫。 |
糸井 |
なるほどなぁ‥‥まるで探偵というか、
「現場に行って見つけ出す」というやりかたが、
きわめて考古学的ですよね。
将来有望な技術や才能に投資するという
ベンチャーキャピタリストとしての
原さんのお仕事にも、
そういう部分が、活きてるんでしょうね。 |
原 |
わたしのビジネスのスタートというのが
アメリカで立ち上げた
光ファイバーのベンチャー企業なんですけど、
思えばそれも‥‥。 |
糸井 |
鉄道模型から? |
原 |
そう、父がね、模型の客車のなかに
照明として「豆電球」をつけてたんです。
でも、電球が切れちゃったら、
いちいち換えるの、めんどうくさいんですよ。
そこで、光ファイバーで代用することを
考えついたんです、大学生くらいのとき。 |
糸井 |
それで、光ファイバーのベンチャーを? |
原 |
まぁ、直接的ではないにしても、
ひとつの発想のきっかけになったことは
たしかでしょうね。 |
糸井 |
ちなみに、お父さんは
そのアイディアについて、なんと‥‥? |
原 |
「いいじゃないか!」と。
「やれ、やれ!」と(笑)。 |
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糸井 |
でも、そのころから、
鉄道模型の経験は活かされてたんですね。 |
原 |
けっこう、いろんなところで便利なんです。
鉄道模型から学んだことって。 |
糸井 |
うん、原さんを見てると、そんな気がします。 |
原 |
モーターなんかは、もっと直接的な例ですよ。
模型に搭載する特別なモーターを
製造業者にお願いして作ってもらったんですけど、
その後、その技術が、業務用ビデオカメラなんかに
応用されるようになったんです。 |
糸井 |
いや、テクノロジーって、
そんなふうにして、発達するんでしょうね。 |
原 |
そういえば、1980年代ぐらいでしょうか、
ソニーの盛田会長が
芦屋の自宅に来てくださったときにも‥‥。 |
糸井 |
ええ、ええ。 |
原 |
父は、盛田さんに会うなり、
「模型の車輛のなかにセットできるような
小型のビデオカメラを作ってほしい。
まるで、わたしが運転してるかのような
映像が撮れるようなやつ」って
いきなり初対面で、頼んでましたねぇ。 |
糸井 |
あはははは(笑)。 |
原 |
ま‥‥ともかくね、わたしが、
機械やらシステムやら電気やらに詳しいのは
鉄道模型のおかげなんですよ。 |
糸井 |
そういうことなんですね。 |
原 |
うん、だからね、
わたしは鉄道ファンではないけど‥‥。 |
糸井 |
なにを言ってるんですか(笑)。 |
原 |
いやいや、ほんとに。 |
糸井 |
じゃあ「鉄道模型ファン」なんですか? |
原 |
やっぱり、鉄道模型についても、
考古学的な興味なのかもしれません。 |
糸井 |
やっぱりそこに、繋がってるんだ。 |
原 |
そう、少なくともわたしの意識としては、
鉄道ファンでも
鉄道模型ファンでも、ないんですよ。 |
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糸井 |
だから、こんなに模型の話を聞いていても
ラクなのかもしれないですね。
何というか、ある「距離感」を感じるんで。 |
原 |
ただし、そこらへんの鉄道ファンよりは
詳しいかもしれない、鉄道に。 |
糸井 |
やっぱり(笑)。 |
原 |
たとえば、パンタグラフを見ただけで
どの国のどんな鉄道なのか、
百発百中で、当てられると思いますよ。 |
糸井 |
それだけ「見てきた」という
自信があるんですね。 |
原 |
今でもわたし、世界の鉄道の分布図を
正確に描けますし。 |
糸井 |
‥‥これね、原さんのことを知らないと
「なに言ってんだ、そんなのウソだろ」なんて
思っちゃうんですよ、きっと。 |
原 |
お望みであれば、いつでも描きます。 |
糸井 |
いやいや、ぼくは、原さんという人を
知ってますから、信じますけど‥‥。
ただね、今日これまで聞いたお話だって、
スケールがデカすぎて、
もしも、ここが「飲み屋」だったら
信じてもらえなくても
しょうがないと思うんですよね(笑)。 |
原 |
あははは、そうかもしれない(笑)。 |
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<続きます!>
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