原 |
今、主流の理論経済学派が説明するのは
「会社は株主のものだ」ということ。 |
糸井 |
でも、原さんは、そうは思わない。 |
原 |
そう、会社がなすべきこととは、
株主の利益を最大化することじゃない。
会社というのは、従業員、顧客、
取引先、地域社会など、
関係する人すべてのものであって、
それらの人たちの利益に貢献すべきものなんです。 |
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糸井 |
その考えを、理論化していくと。 |
原 |
そうです。アメリカ型の「金融資本主義」の
考えかたから脱け出して、
「会社は社会の公器」とする考えかたです。
わたしは、この考えを
「公益資本主義」と名付けました。 |
糸井 |
公益資本主義。 |
原 |
自社の人材、技術などのリソースを使って、
自分たちのやりたいことを成し、
社会に貢献し、みんなの役に立つこと。
それが、企業の第一の使命であって、
株主がうるおうのは、
その結果にすぎないんですよ、本来は。 |
糸井 |
順番がちがうんですよね。 |
原 |
で、そういう「会社の使命」を
実際の場面で果たしていくのは?
会社の従業員と、役員をふくめた社員ですよね。
だから、彼らこそ、会社にとって
もっとも大切な資産なんだってこともふくめて、
理論体系化しようと。 |
糸井 |
具体的には、研究所みたいなものを
つくるんですか? |
原 |
アライアンス・フォーラム財団という
財団法人があるので、そこに研究チームを。 |
糸井 |
ほう。 |
原 |
しかも、かれらアングロ・サクソンの
ロジックを用いて、
対抗理論を構築しますから‥‥。 |
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糸井 |
ああ、なるほど‥‥。
「自分たちの言葉」でやられちゃったら
無視しておくことができないわけですね。 |
原 |
そのとおりです。
そして、この公益資本主義という考えかたを、
学会や産業界で発表して、
賛同してくれる人たちの流れをつくる。 |
糸井 |
どのくらい、いそうなんですか?
耳を傾けてくれそうな人は。 |
原 |
アメリカ産業界のリーダーのなかには、
かなりいるでしょうね。
本当は、日本の産業界のリーダーが賛同し、
これを世界に広めるくらいに
持っていきたいのですが。 |
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糸井 |
そうですか。 |
原 |
繰り返しになりますけれど、
わたしの考える「公益資本主義」では、
短期的な株主利益を最大化するんじゃなくて、
中・長期的な視野で
会社の事業や研究開発をとらえ、
会社は思いっきり儲けることに精を出し、
これを実現させてくれた社員全員に報い、
社会に貢献するということを重要視します。 |
糸井 |
はい。 |
原 |
でも、これまでの証券市場、つまり
ニューヨークやロンドンの証券取引所というのは
短期的な株価を上げるための場所。
つまり、
「今日投資したら、今日儲けたい人」のための
マーケットなんですよ。 |
糸井 |
アメリカ型の経済思想のもとでは、
そういう人が圧倒的多数ですよね。 |
原 |
他方で、世界全体に目を向けてみると
全資金量の2割ぐらいは、
10年後、20年後のリターンを想定した
投資のしかたを考えている。 |
糸井 |
つまり、短期的な利益を追っかけるんじゃなく。 |
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原 |
そう、長期的な視野を持った人たちが
無視できない割合で、いるんです。
なのに、
そういう長期資金を取引できる市場って、
今はまだ、ないんですよ。 |
糸井 |
‥‥まだ? つまり‥‥。 |
原 |
そう。
ニューヨークやロンドンが放棄した
2割の長期資金。
それを取り扱う金融市場を日本につくる。 |
糸井 |
原さんが‥‥ですか? |
原 |
わたし。わたしの考えで、つくりたい。
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糸井 |
まったく新しい市場を、つくる。 |
原 |
まぁ、自分で証券市場を創業するという意味では
ないですけどね。
でも今、ほとんどの人、つまり全世界の8割が
短期的な利益を最大化すべく、
ニューヨークやロンドンで過当競争してるんです。 |
糸井 |
ええ。 |
原 |
だからこそ、
長期的な視野を持った資金を扱う
市場をつくれば、
それはきわめて、ユニークなものになるでしょう。 |
糸井 |
しかも、この日本に。 |
原 |
そう、この日本に、世界の将来をつくるんです。
そして、この日本を、
アメリカやヨーロッパ、世界にとって
なくてはならない国に、したいんです。 |
糸井 |
いや‥‥原さんならやりかねないな。 |
原 |
たしかに今、アメリカやヨーロッパは
あらゆる場面で、成功しています。
でも、彼らの「ものマネ」をするんじゃなく、
彼らが目を向けないようなところで、
もっと、地球や人類にとって
意義あることをやりたいんですよ、わたしは。
‥‥大げさな言いかたをすれば、ね。 |
糸井 |
原さんの話って、
いつも、人に希望を抱かせますね。 |
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原 |
それは、うれしいな。 |
糸井 |
原さんの考えでつくる「マーケット」か‥‥。
今、ジャスダックやら、東証マザーズやら、
ヘラクレスやらって、
新興市場が、どんどんできてる時代ですし、
不可能なことじゃないですよね。 |
原 |
今までの新興市場は、
アメリカの「ものマネ」が多かったんですが、
こんどは違います。
アメリカにまねてもらうものを、つくるんです。
‥‥実現可能性、ありそうだと思うでしょ? |
糸井 |
あるコンセプトに基づいたマーケットを
つくるってことですもんね。 |
原 |
そのとおりです。
そして、そのマーケットは
「公益資本主義」という理論でつくるから、
そのマーケットで決められる「株価」も
「公益資本主義」の理論に基づく。 |
糸井 |
ということは‥‥。 |
原 |
つまり、そこは
「社会貢献度が高い企業であればあるほど
株価が高くなる」という市場なんです。
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糸井 |
なるほど。 |
原 |
そのようにして
資本主義の根本原理も進化させていかないと
サブプライムの次は排出権取引、
そしてその次も‥‥と、
金融バブルは延々と続いていくでしょう。 |
糸井 |
‥‥うまくいきそうですか? |
原 |
アメリカの産業界で話をしていても、
そんなマーケットをつくったら
乗り換えるよって人、たくさんいますね。 |
糸井 |
そうですか。 |
原 |
ええ。 |
糸井 |
ロンドンやニューヨークをあとにして。 |
原 |
そう、グッバイ・ロンドン、
グッバイ・ニューヨーク‥‥ってね。 |
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<続きます!> |