第2回
「続コカコーラの話」
●スタンダードである、ということ
そもそもの不安、
それがコカコーラのマーケットであると思うのである。
見知らぬ土地にいったときこそ飲んでしまうのが、
コカコーラなのだ。
マクドナルドもケンタッキーも、
なぜかTowerレコードもそうにちがいない。
外人であふれている。
俺は六本木が1998年になるまで、
吉野屋で外国人が牛丼をたべているのを
見たことがなかったのである。
でも、いまだに「午後の紅茶」や「カルピスウォーター」を
飲んでいる姿を見かけたことはない。
マックユーザーである俺は、ウインドウズ95を
さんざん触ってみて、なかなか好きになれなかった。
マックの隅々まで知っている私にとっては
どう考えてもマッキントッシュの方が使いやすいと
思えてならなかったのだ(すくなくとも当時は)。
そこで、パソコンに精通している知人に
こう聞いたのである。
「つまるところウィンドウズ95を使うメリットって何?」
そうしたところ知人はこう答えた。
「シェアが高いことだよ」
なるほど。
Windows95が売れている理由はシェアが高いこと、
これはどんなマック支持者でも否定しようのない、
鉄壁の理屈ではないか。
大勢だからの安心感、これって人類共通の特性なのである。
●コカコーラにバージョンアップ戦略の道はない
コカコーラの話にもどる。
コカコーラというのは、ずっと同じ味だった。
健康ブームにのっかろうと「透明なコーラ」を出した途端
売れなくなって、あわてて、「コカ・コーラ・Classic」
と強調して出しなおしたくらいである。
宣伝でも、コーヒー飲料などのように
「XX製法により、いちだんと豊かなコク」なんてコピーは
ついぞ聞いたことがない。宣伝はいつも味に関して
ノーコメントである。
それはなぜか?
「変わってはならない味」だからだ。
極論すれば、コカコーラが本当においしいかどうかなんて
考えている人なんてほとんどいないである。
かわらぬコカコーラであることが重要なのだ。
かつてペプシコーラのテレビCMで
一般消費者にブラインドテストするものがあった。
過半数の人がペプシコーラをおいしいと答えた
という宣伝である。
実際、ペプシコーラとコカコーラを飲みくらべて
「さて、どちらがおいしいか」
と迫られて、その味の優劣を決めるなんて
「料理の鉄人」でレギュラーをつとめる
料理記者暦40年の岸本女史でさえ容易ではありません。
コカコーラとペプシコーラ、
VHSとβ、
若人あきらと郷ひろみ、
どれも本質に優劣をつけることなんて
素人にはできないのである。
過半数の人々がペプシコーラを選んだのは
ブラインドテストだったからだ。
(つづく)
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