SAITO
もってけドロボー!
斉藤由多加の「頭のなか」。

今つくってるゲームのはなし
新しいシーマンがパソコンの
デスクトップに生息するわけ


さて、この『シーメール』は、
ドリームキャストのゲームから
仕様が大きくかわりました。
いちばん大きく変わったことは、
このソフトは「ゲーム」であることをやめた、
ということでしょうか。
つまりこれはエンディングや
ゲームオーバーなどがないということを意味します。
ゲーム機でヒットしたタイトルが、
なぜにPC版では「ゲーム」であることを
放棄したのか?  という話をします。
(ドリームキャスト版も、
 もともとゲームらしくないものでしたが)

そのいちばん根底にあるのは、
「ゲーム機とパソコンでは、
 画面に向かっている際のユーザーの気持ちが
 180度異なる」ということです。
これはインターフェイスの違いからくる
操作性による要因もありますし、
それ以外にもマシンに向かう動機の違いが挙げられます。
ゲーム機を映画館の銀幕にたとえるならば、
パソコンは便利箱みたいな位置付け、でしょうか。

表1パソコンとゲーム機の違い

ゲーム機 パソコン
入力インターフェイス コントローラー キーボード&マウス
ハード特性 描画 (3D) 多機能
画面に表示される ゲームのみ(シングルタスク) マルチ (複数のソフト)
画面との向かい方 面と向かう ちょっと斜めに向かい合う(会社)
時間の密度 短期集中プレイ ゆっくり(ちまちまやってみる)

要するに、パソコンってのは、
映画館の銀幕にはなりにくい、ということです。
理由は、というとですね、
パソコンというのは
あちこちたくさんのソフトをさせる機械である、
ということであり、また、今のパソコンのデスクトップには、
独特の世界観にユーザーを引っ張り込むには、
邪魔をするソフトが多すぎる、ということです。
ゲーム専用機では定番の格闘ゲームが
パソコンではヒットしないのも、
パソコンでは人気のある
「シムシティー」のようなタイトルが
ゲーム専用機ではパッとしなのも、
すべて、ここに原因があるように思うわけです。

●他のソフトと共存する
そんな競争の激しい画面で、
シーマンのようなキャラの強いペットが
ビジネスソフトやメールソフトと
共存するにはどうしたらいいか?
そこから発想されたシーマンPC版は
ユーザーのエージェントとして
デスクトップに直接生息する生物となりました。
いわゆる一般的なパソコン用の
ゲームタイトルであることと比べて、
どこが変わったかを整理すると以下のようになります。

表2 一般的なゲームとシーメールの比較表
一般的なパソコンゲームの仕様 SeaMail
起動 プログラムメニューから起動 自動起動
育成場所 (水槽などの)ウィンドウ内 壁紙上にダイレクトに棲息
食べるもの (用意された)餌 メール
話題の対象 架空世界 日常世界(ユーザーの友人関係)
情報源 ゲームに対するコマンド入力 ユーザーのパソコン操作、行動、会話など

表にありますように、
シーマンのパソコン版は
とてもとてもへんてこなソフトになったわけです。
具体的にいうと、ですね、
餌となるメールが少ない(=ともだちが少ない)
飼い主のパソコンでは育たないペットということになります。
あるいは、たとえばこんなことをいってくる
エージェントなわけです。
「週末にこいつからのメールここのところ多いけど、
 もしかして気があるの?」
-----はい
「もしかしてもう付き合ってるのか?」
----はい
「そうか・・。って、お前、彼氏いるじゃないか。
 やつはもう知っているのか?」
----いいえ
「じゃあ、おれが代わりに前彼に言って来てやろうか、
『あたらしい彼氏ができました』って?」
(セリフは正確ではありません)

つづく

2001-03-29-THU

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