SAITO
もってけドロボー!
斉藤由多加の「頭のなか」。

人類の叡知

現代にいきる私たちにとって、
「人類の叡知」という言葉は、遠大すぎてよくわかりません。

ところが、あるタクシーの中で、
まさに「人類の叡知の結集」らしきものを発見しました。
思わずシャッターを押したのがこの写真です。



  ↓拡大


ここには、都内にある高架で、
タクシーがくぐり抜けることが困難な場所は
全部で4箇所ある、とあります。
「少なくとも4箇所は」とか「4箇所以上ある」でなく、
きっぱりと「4箇所」。

たかがこれだけのことを結論として宣言するためだけにも、
以下のような工程を踏むことが必要になります。

経験豊富なベテラン・ドライバー十数名に、
過去、通り抜けができなかった場所を
ヒアリングしてまわる。
 ↓
ベテランドライバーの経験に基づいた
暫定的なリストができる。
しかし、それで過不足ない十分な結論か、
となると、そうでもない。
 ↓
A.そこでこのリストをさらに若手を含めた
都内中のドライバーに配布し、
な可能限り漏れなどの情報を集める。
 ↓
一定時間が経過したところで、
いったん打ち切り、ひとまず集計結果を出す。
 ↓
異論がなければ、この結果を「事実」として
発表・広報する。
 ↓
以下Aに戻って繰り返す。
もし、これまで未報告の個所が発見されればあれば、
その都度確認され次第「事実」とされていた
内容を修正する。


これらの過程から私たちの知る「事実」というものは、
次の二つの特徴をもっているといえます。

〇「事実」は多くの人間の合意のもとで成り立つものである

ということ、そして

〇「事実」は、時間の経過とともに変化する。

こと。

つまり合意した者の人数と、
経過した時間が大きければ大きいほど、
「真実」の信憑性が高まることになります。

写真にある、タクシーに掲示されたたった一枚の表示。
この一言を導き出すのに、
はたしてどれだけのドライバーの人数と
時間がかかったのでしょう・・
しかし、いまだに
「本当にタクシーが通り抜けられない高架は都内に4つだけなのか」

という疑問にたいする最終解答はこの世にない。
なにせ証明の方法がないのですから。

真実はひとつかもしれないが、
それは神のみぞ知るものであって
る人間たちが触れことはできない・・。
そう気づいた私たち人類は、
手に入れることができない真実のかわりとして、
まさに叡知を結集して「事実」をつくってゆく術を
身に着けたのかもしれません。
私たちの生活は、ですからひょんなことで崩れてしまう、
実にあぶなっかしいものの上に成り立っているといえます。

その拠り所となっているたくさんの「事実」。
これらは、絶対的に存在するものではなく、
実は多くの人間たちの努力によって守られているもの、という点で、
もしかしたら、「真実」と「事実」とは、
生まれながらにして対照的な存在なのかもしれません。


シーマンに関する情報は こちら(www.seaman.tv)まで。

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2001-12-19-WED

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