もってけドロボー! 斉藤由多加の「頭のなか」。 |
Making Of Odama 第3回 エンディング音楽と謎のCMの紹介 ティーザーCMの放送をやっていたので ご存知の方も多いでしょうが、 「大玉」の発売が近づいてきております。 GameCubeをお持ちの方も、 お子さんが持っているというだけという方も、 是非買ってやってください。 ということで、今回は「宣伝」の記事です。 (本編のメイキングは過去に本連載でも書きましたので、 もしもっとくわしい話を、という方は こちらに連載をしております。 ご覧ください。) ということで今回は音楽とCMの話をします。
さてこのCMに流れている曲、 これは本編のエンディングテーマとなる Cold & Boldという曲です。 (ゴールデン・ボールと聞こえるかもしれませんが それは耳の錯覚です) まだ完成していない、戦国を舞台にした 「大玉」のエンディングテーマ曲、 つまりスタッフクレジットが流れるシーンで 使われているのですけど、実は、 「さあ、どんな曲にしようか?」と 開発途中のドタバタ中につくった曲です。 「こんな感じでいこうか‥‥」 そう考え始めたのは2004年の中盤あたりです。 ゲームの舞台はいちおう戦国とありますが、 どちらかというと「汗臭い体育祭」みたいなものです。 (↓そもそもの登場キャラクターがこんなですから。) (初期の企画書スケッチの比較 /実際のゲーム作品に登場するキャラクターとは異なる場合あり) 実際の運動会の大玉 だったら運動会の競技BGMなどで流れるような テンポの速い洋楽っぽい曲がいいなぁ‥‥ と考えて行き着いたのが ボンド映画のテーマ曲風というコンセプト。 初期の「ゴールドフィンガー」とか 「ロシアより愛をこめて」 「サンダーボール作戦」あたりは 個人的にも大ファンでして、 このハードボイルド風と、いっぽうの戦国モノとの 「ぜったい相受け入れないような違和感」がいいな、 と思いまして。 でもこういった思いつきは、 かなりしっかりとやらないと 誰もパロディとは気づいてすらくれないわけでして、 下手にころんで本当のミスマッチになってしまっては 意味がありません。 そのためにはTom JonesとかShirley Basseyのような 歌唱力の持ち主を迎え入れなければならないわけです。 いずれ見つけなければいけないな‥‥、 あとさき考えず軽い気持ちでつくりはじめたのが この曲だったわけで‥‥。 曲は誰が聴いても「ボンドっぽいぞ」と 気づいてくれるように、 メロディーや歌詞のアクセントまわしに 工夫しましたけど、 歌手はおそかれはやかれ見つかると思い込んでました。 歌詞の中には、 「ニンテンドー(任天道という架空の哲学」 という言葉をどうしてもいれたかったので、 サビはすぐにできました。 あとはビッグバンドのラテンっぽい展開でと こちらもスムースに出来ました。 この曲のミソとなるのは、転調のところですけど、 いい感じの転調にしてくれたのは、 アレンジをしてくれた、みのべゆたかさんです。 みのべさんという人はすごくて、 セガの子会社にアレンジャーとして 所属しているかたわら(当時) ジャズピアニストという顔をもっています。 なもんだからで私が自宅で曲を ギターやピアノで歌ってたら、 そのまま、あたかも秘書がメモをとるように、 さらさらと楽譜で速記してゆくのです。 これにはびっくりしました。 本物のプロというのは基本が違います。 音は多少汚くてもいいからコンピューターではなく 時代がかった生演奏で、という意図に沿い、 ギターとドラムスは老舗ライブハウス BAUHAUSのケイさんとトオルくん、 そしてベースはかつみさんという私の大好きな方々に お願いしました。 客のいないライブハウスレコーディングです。 ストリングスアレンジなどはセガ系子会社の杉山君。 彼には何度も手間をおかけしました。 そんなこんなでできた試作版はこちらです。 (本邦初公開/ボーカリストは秘密)
さて、この曲、そもそも先述のShirley Basseyのような 女性ボーカリストを想定していたのですが、 探してみるとそんな歌唱力をもっている人なんて、 はてさてどこにもいないことがわかってきた。 まったく、いない。 困った‥‥マスター入れの納期は刻々と迫るし、 なにせこの時期はおかしくなるほど忙しい。 2005年春、 「もうタイムアウトです。いれちゃいますよ!!」 ということで、いったんは、この男性ボーカルで マスターを入れることになったのです。 「あーぁ」と残念でした。 しかし、幸いなことに(?)わずかな調整不足などで 日本語版マスタープログラムは 海外版の後に再度いれるチャンスを設けよう、 ということになりました。 ディレクターの岡安さんには申し訳なかったのですが、 私は正直ホッとしました。 歌が、というよりも、大滝秀治さんの催促メッセージなど 細かな点にも修正の余地がかなりあったので、 再調整できる余地ができたことになりますから。 そしてこのボーカルをやっていただいた方と 出会ったのはまさにその時期です。 いやはや幸運の女神というのは実在するのですね。 人間、いつもは聞き流してしまうような対象にも、 必死で探していると敏感に気付くようになるんですね。 ある夜、私は都内ナイトクラブで歌う 「すごい声を持つ人」を偶然発見したわけです‥‥‥‥。 その人は、まさしくステージの上で Shirley Basseyを歌っていました。 その場で、「あの女性と話しがしたいのですが」 と席に呼んでいただき、 エージェントの連絡先を確認した次第です。 Jさんというこの外国人女性ボーカリスト、 最初は怪訝そうでしたが、説明するうちに どんどんとやる気になってくれて、 この曲に命が吹き込まれました。 (「声を吹き込む」、の語源は 「命を吹き込む」からきているんでしょうか?) 出来上がりはこんな感じです。
(こちらの曲はCD発売の予定はありません。 イロメロミックスやアップルiTuneStoreなどで 配信を予定しています)
こんな話を読んでて、ゲームのクリエーターは、 曲づくりまでやるのか、と 読者の方にはお思いの方も いらっしゃるのではないでしょうか? ええと、たぶん私は「特殊」だと思います。 ものずきなんです。 過去の連載を見ていただければお分かりのとおり、 ゲーム作りを口実に趣味を堪能している感があります。 ヤバイ時期(!)になぜかいきいきと こういうことをやる自分がいます。 実のところゲーム作りっていうのは あまりに長期なものだから、 こういう仕事はたのしくて仕方がない。 もしかしたらストレスを発散しているのかも というくらいです。 しかもこの話は次のCMの話に続くことになります‥‥。
ゲームの話に戻りますと、 弊社が手がけるゲームタイトルというのは 説明しにくいそうです。 たしかに広告などでの説明のしやすさ、 というのは、ゲームにとって生命線かもしれませんね。 事実、雑誌のライターさんが 「大玉」の説明にはかなり手こずっている。 メジャータイトルの続編だったら ややこしい説明が省略できますからシンプルです。 でも新分野系の場合は遊び方からですからね。 そう簡単にはいかない。 なもんだから、それを15秒CMに、となると、 これまたやっかいなわけです。 「ああでもない」「こうでもない」と、 テレビドラマさながらに企画会議をやるわけです。 でもね、先の話とかぶりますが、 こういうやっかいな問題にぶつかっている時というのが、 自分はいちばん生き生きしていることに気づきます。 任天堂の宣伝部の人には怒られるかもしれませんが、 私たちにしてみればタイトル発売は 2、3年に1度の「夏」なわけで、 そりゃ、お祭りのように楽しいわけです。 そんなノリで、提案させていただいたのが、 本広告とは別に「思い切り違和感のあるCM編」 というもので、以下の落書きのような コンテでの提案でした。 最後のキメ画像は、巨人がジャンボジェット機に またがるシーンとなっています。 なんでこんなCM案なのか、という話になりますが、 実は、この「大玉」というゲームには 通称「ガリバー」とよばれる場面の存在があります。 大きな侍大将を小さな兵たちが寄ってたかって倒す、 というシーンです。 ↓こんな感じのシーンです これがこのゲームの見所のひとつでもあります。 まるで大きな獲物に襲いかかる蟻の集団のようでしょ? 「ちいさい存在をなめたらいかんぞ」 という意味あいをこめたシーンです。 そんなもんですから 一度見たら忘れないようなガリバー映像を ボンド映画のオープニング風につくりたい、 というのが予告CMの趣旨でして、 低制作費・深夜帯オンエアという条件で この「謎の予告CM」が実現したという次第です。 この15秒の映像、ゲームの説明には 何もしていないのですが、カッコよくいうと 背景にある世界観をビジュアルで見せたい、 ということになるのかな。 とにかく、山崎邦正さんをフィーチャーした べたべたの(笑)本広告が この後につづくことになっております。 期待してください。 (この原稿がアップされる頃には オンエアが開始されているかもしれません) さて、この広告の効果はあったのでしょうか??? スタッフのI君は編集が完了し試写しながら 「うーん、こりゃ変だ!!」 とスタジオで唸っていたのですが、 これはどういう意味なのか気になる‥‥。 売れるといいなぁ。 (そんなこんなで「大玉」は4月13日発売です。)
|
2006-04-09-SUN
戻る |