ほめ道を往く。
「ほめられて伸びる派」のためのページ。

なくなりゆくものをほめることは、
なくなりゆくものの業績をたたえるだけでなく、
なくなりゆくものがなくなりつつある現状に対して
歯止めをかけることにもなります。
それは、なくなりゆくものを、すくうこと。
愛が地球をすくうなら、
「ほめ道」だって
なにかをすくうかもしれません。
で、なにをほめ、なにをすくうのか?
こちらです。お読みください。



第八十一回
フィルムケース
ほめる。
〜絶滅危惧種とわたし〜


あーー、大変だー!!
一刻を争う事態です!!

フィルムが絶滅の危機です!!
わたしの中で絶滅危惧種です!!

この先、世界中のフィルムメーカーさんは
どうなってしまうんですか?

今はもうデジカメでしょ? みなさん‥‥。
持ってない人もこれから買うならデジカメでしょ?

やばいっすよ、まじで。

何が一番やばいって
「フィルムケース」が無くなることですよ!

あれ、色んな使い道があったんですよ。

とりあえず、一番先に困るのが
500円玉貯金をしている人ですよ。

たしかあの「フィルムケース」には
500円玉が20枚入るんですよね?
だから1万円貯まるんですよね。

1万円ですよ!
浜口さんだったら一ヶ月生活できるんですから!
あと、東てるみさんも!

あれはねー
あの「フィルムケース」はねー
小物の整理にもめっちゃ役立つんですから。

ビーズとかさー
流行ったでしょ?
スワロフスキーとかですよ。

あれの整理もどれだけ
「フィルムケース」のお世話になったか。

あと、ピアスとかイヤリングをひとセットずつ
「フィルムケース」に入れて収納していた
カリスマ主婦を前にテレビで観たんですから。
「マダムに会いたい」に出てたんですって!

それだけじゃないんですよ。

こどもがあれでコマを作って遊んでたりしたんです。
真ん中に爪楊枝を刺して。
で、意外とよく回るんです、このコマ。

だんご虫を入れて帰って来たこともありますしね。

中には財布代わりに使ってる人だっているんですよ!
バス代とかきっかり入れておくと
すごい便利らしいんです。

とにかく「フィルムケース」は何がいいって
フタですよ、フタ。

大きさもさることながら、あの小ささにあんな密閉度の高い
すばらしいフタがついてるなんて。
ジップロックもびっくりですってば!

本来捨ててしまうもので
こんなに使われているものってほかにありますか?
みんなフィルムが必要だから買うけど
気が付けば、そこに残る「フィルムケース」
なんていうか、そう、あれみたいなんですよ。

夏の恋。

夏は終わってしまったけど
恋が残った。

みたいな?

「?」をつけてちょっと遠慮がちに書いたので
許してください。

で、「フィルムケース」を夏の恋だとしますよ。
まあいいじゃないですか、
ここはひとつ乗ってみてください、
騙されたと思って。

ね、夏の恋。

あなた、そんなにあっさり忘れることできます?

「もう夏が終わったから僕のことは忘れてくれ」
とか言われて
「あー、夏が終わっちゃったんならしょーがねーやー」
って、思えますか? ってんですよ。

問題はそこなんです。
底じゃないですよ、
底のように見えて、実はそこなんです。

だからですね、
何が言いたいかと申しますと。

「フィルムケース」がなくなると困る
ということなんです。

「忘れられない」

ということなんです。

この、何でも簡単に忘れるわたしが
「忘れられない」って思うんですから
これはたいしたもんですし、たいした問題なんです。

‥‥たぶん。

あー、本当に心配です。
フィルムメーカーにお勤めの方も心配です。
でもって「フィルムケース」メーカーに
お勤めの方も心配です。
そして、一番心配なのは今も「フィルムケース」で
500円玉貯金をしているであろう、むかしの友達です。

みなさんも絶滅の前に、
是非お手持ちの「フィルムケース」を
もう一度大事に思ってください。
で、可能であればあと10本くらいフィルムを買って
後世に伝えてください。

絶滅したらたぶん価値が上がりますし、
あなたの孫の孫の孫くらいが
そのフィルムと「フィルムケース」で
ひと財産築くでしょう。
きっと感謝されて、墓石に
「フィルムケース万歳」とか彫ってくれるはずです。
うん‥‥。

ところで‥‥。

夏の恋はなんで儚いんですか?




なんで儚いんですか、と訊かれても困りますが、
ともあれ、たしかに、誰しも、
フィルムケースのお世話になったことがあるはず。
これはたしかにゆゆしき問題です。
後世、自分の墓碑銘として刻まれるのは
ちょっと抵抗がありますが、
できればなくなってほしくないものです。
かといって、デジカメの便利さは
絶対うしないたくないのですが‥‥。
さまざまな矛盾を含みつつ、
今回も、けっこうな「ほめ道」でした。
さて、次回はなにをほめてくださるのでしょうか。

イラスト:さとうみどり

2006-03-14-TUE


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