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堺 |
「兄やん」役の高良健吾(こうらけんご)が
よく脱ぐし、よく脱がされるし。 |
糸井 |
あ、「電話の人」だ。
(笑)あの人の弱っぽさ、よかったね。 |
堺 |
実はものすごく強いんですけど。
腕相撲で一番強かったんじゃないかな、
みんなの中で。 |
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糸井 |
あ、そうなんだ。すごいなぁ。 |
堺 |
でも弱っぽいですよね。
高良君の弱芸(よわげい)はすごいですよ。
『蟹工船』でも弱っぽい役をやってて。 |
糸井 |
そうなんだ。見事だねぇ。
あと、尾崎豊歌いながら
お風呂入ってた人。
髭がモジャモジャの博士みたいな人。 |
堺 |
はいはいはい、「主任」の古舘寛治さん。 |
糸井 |
あの人も、すごかったね。
歌詞がすげえなと思ってて。 |
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堺 |
(笑)まずそこに惹かれたんですか。 |
糸井 |
珍しく言葉が立つ場所だから、
歌詞がすごく重要なのって
あそこぐらいしかないじゃないですか。
で、すっごくいいなと思って、
後でプログラム見たら、尾崎豊だった。
ガラス割るやつですからね。 |
堺 |
そうですね。 |
糸井 |
で、あいつ、そうですよね。 |
堺 |
あいつ、そうです。言われてみれば、そうだ。 |
糸井 |
あいつ、尾崎豊ですよね。 |
堺 |
そうですね、そうだ。 |
糸井 |
尾崎がモジャモジャしたっていうことですよね。
モジャモジャした尾崎が、
みんなのガラスを割って回ってた。
ものすごくいいんですよ、そういう小さいとこが。 |
堺 |
そうだ、言われてみれば。
でも、その歌は指定されてて、
ずっと練習してたって言ってました。 |
糸井 |
そうだろうな(笑)、うまかったもん。
いや、もうそういうね、
1個ずつがもうよくて。
顔つきまでよかった、いろんな人たち。 |
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堺 |
(笑)。 |
糸井 |
堺くんの子どもの役の子の顔とかさ。 |
堺 |
天才なんです。
小野花梨さんというんです。
天才なんですよ。 |
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糸井 |
やっぱり。 |
榑谷 |
殴るシーン、すごい痛そうでしたね。 |
堺 |
あ、痛かった、痛かった! |
糸井 |
思い切りいいですよね。 |
堺 |
あそこで思い切り相手を殴れるかどうかで
役者の器って決まると思うんですね。 |
糸井 |
大竹しのぶを感じるよね。
ああいう思い切りのところもよかったし、
控えめな芝居もよかった。
電話で、自分だと気づいていないお父さんに
さいごまで隠して、
微妙な表情をするシーンがあったでしょう。
そういう時って、どのくらいの分量の
芝居をしたらいいかって、悩まない?
あれ、誰でも悩むと思うよ。
どのくらい「お父さんわかってるのかしら」にするのか。 |
堺 |
ああ、なるほど、なるほど。 |
糸井 |
それを、結果は私が全部決めるから、
みたいな顔してたじゃないですか。
かっこいいなぁー。 |
堺 |
あの年(小野花梨さんは1998年生まれ)で、
時々、試し打ちしてくるんですよ。
こっちの反応を伺いに。 |
糸井 |
ああ、そう!
脚本外の台詞っていうのはあるんですか。 |
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堺 |
それはほとんどないですね。
でも生瀬さんはわりかし野放しにしてたかな。
それから、きたろうさん・・・・、
この2人がね、遊びたがるんですよ。
で、2人でやっぱり抑制されてて、
全体を見てもいました。
さらに、豊原さんを入れたその3人には、
この映画は、負ってるところが多いですよね。 |
糸井 |
その人たちがしないんだったら、
ぼくもしません、みたいなところがあるよね。 |
堺 |
そうです、そうです。
でも、ほとんどアドリブはないと思いましたよ、
これはね。 |
糸井 |
堺さん自身はどうだったんですか。 |
堺 |
アドリブは、なかったです。
今回は、本当に
人の芝居見てるっていうのが多かったから。
ただ、ただ観察してる。 |
糸井 |
ああ、そんな役でもあるよね。
主役は堺雅人なのに、
じつは、誰でもないですよね。 |
堺 |
そうです、そうです。
そこがおもしろいところ。
一幕もののお芝居で言ったら、
なんだかよくわからないけど、
あんまりライトも当たらないまま、
ずっとそこにいる人みたいな感じの
イメージなんですよ。
ぼくの役は。 |
糸井 |
そうですよね。
いやあ、この映画に関しては
いくらでも語れるんだけれど、
監督に感心したのが、まずは、あるな。
「そういう子が育ってるんだ」
っていう嬉しさですよ。
32歳って言ったらさ、
堺くんよりいくつも若いでしょ? |
堺 |
4つ下ですね。 |
糸井 |
4つ。すごいよね。 |
堺 |
でも、糸井さんの「品」っていう言葉で、
ああ、そういうことなんだなって。
それは料理だけじゃなくて、
作る映画だけじゃなくて、
いろんなことに言えるかもしれないですよ。 |
糸井 |
うんうんうん。 |
堺 |
わかりやすくないっていうか。 |
糸井 |
心はちゃんと込められているんだから、
わかってもらえなくてもいいんだ、
あるいは、ありがとうって
言ってくれなくてもいいんだっていう
満足感が品だと思うんですよね。
それをできる人たちが、
やっぱり世の中には結構いてさ。
全部言葉にしたり、
目立つようにしたり、
忘れてると思ったらわざわざ突っ込みを入れて、
もう1回言わせたり、
そういう、悪い意味での
テレビ的なものっていう時代が、
もしかしたら終われるかな。
それがうれしいですよね。
今しゃべってることだって、
「ここはどうしておもしろいかって言うとね」って、
もっとくどくだって言えますよね。
でも、これでいいや、
そのまま出しちゃえばっていうのも、
ぼくらのスタンスとしてはそこがやりたいんですよね。
で、そういうチルドレンが
やっぱり世の中にいるもんだなと思ってさ。
太字にしない強さ。 |
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堺 |
そうですね、太字にしない。 |
糸井 |
ぼくらも勿論テクニックとして、
いっぱい太字使って客を呼んどいてから
静かにしゃべるとかね、いろんなことはしますよ。 |
堺 |
(笑)。 |
糸井 |
だけど、こんだけのスケールのものを
任された映画監督に、そういう品があって、
その品にその出演者たちがちゃんと、
「じゃあ、ぼくもそれで仕上げましょう」って、
なんか素晴らしいティーパーティーができました、
みたいなね。 |
堺 |
うんうん。 |
糸井 |
飯島さんもそうなんですよ。
飯島さんも、
「聞いてくれるんだったら、言いますけどね」
みたいなところがあって。 |
堺 |
なるほど。 |
糸井 |
でも、「実は」っていうのを言わせると言うんです。
それが好きですよね。
(つづきます) |