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糸井 |
これも『天才!』に書いてあったんだけど、
スポーツ選手には4月生まれが多いんですね。
それは単純で、3月生まれの子とは
初めから1年の差があるわけで、
スポーツチームは、背がでかくて、
先に進んでる子からピックアップして
選手を作るんですよ。
で、彼らのやってる練習っていうのが、
下の子はできないんですよ。
下手したら球拾いですよね。
で、球拾いは野球がうまくならないんですよ。 |
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堺 |
うんうんうん。 |
糸井 |
だから、プロフットボールの選手とか、
みんな4月、5月生まれなんです。
ていうことは、才能じゃなくて、
そこでの巡り合わせじゃないですか。 |
堺 |
ふうん。 |
糸井 |
おもしろいでしょ、ちょっと。 |
堺 |
うん。10月生まれのぼくとしてはなんか。 |
糸井 |
10月生まれ不利ですよ。ぼくは11月ですけど。 |
堺 |
よく、よくね。 |
糸井 |
よくここまで。 |
堺 |
よくここまで。 |
糸井 |
しのいできましたよね。確かにそうですよ。
だって、3月生まれの子は
1年上のお兄さんと机並べてるんだから、
「バカ」って言われたらお終いですよね。 |
堺 |
ぼく、徒競走で4位以上になったことなくて。 |
糸井 |
ああー。 |
堺 |
もうそもそも無理だろうっていう
負け犬根性って言ったら変ですけど、
ちょっと思いましたね。 |
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糸井 |
無理だろうっていうのはすごいよね。大きいよね。
運動神経なんかでも怪しいんだよ。
あの役者は天才で、っていうのも、
ほんとは、わからないんだよ?
その人が自分を強く、
誤解した結果かもしれないんだよ。 |
堺 |
(笑)で、今相当無理してやってるのかもしれない。 |
糸井 |
でも、そこまで含めて運命だからね。
あと、ある意味で運命は変えられるんですよね。
松井秀喜は左バッターじゃないんですからね。 |
堺 |
そうなんですか。 |
糸井 |
右利きですからね。
あんまり飛ばすんで、ガラス割っちゃうんで、
「お前左で打て」って言われたのが原因ですからね。 |
堺 |
じゃあ、あれは、拘束具なんだ、彼にとっては。 |
糸井 |
そうだし、あと、鍛えた脳ですからね。
だから、スランプ長いんですよ、あの人。 |
堺 |
はぁー。 |
糸井 |
一旦間違うと、自然に戻るのは
ものすごく難しいんですよね。 |
堺 |
はぁー。イチローは? |
糸井 |
イチローは、バッティングセンターで
練習してた人なんで、
ものすごい時間の修練を積み終わってるんですよ。 |
堺 |
へ〜え。 |
糸井 |
ものすごい高速の球を、
小学校の時から打ってたんですよ。 |
堺 |
へーえ。 |
糸井 |
で、それが、積算で10,000時間になった時に、
ある水準に達するらしいですよ。 |
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堺 |
へーえ。 |
糸井 |
それは吉本隆明さんが言ってる
「10年間」なんですよ。
なんでも、10年続ければものになるっていう、
その10年間。 |
堺 |
なるほど。 |
糸井 |
3時間ずつの10年間と、
10,000時間は同じなんですよ。
ビル・ゲイツは、コンピューターが珍しい時代、
使用料1時間あたりいくらみたいな
高いお金取られる時代に、
ただで使えるラッキーを手に入れてる。
ビートルズはハンブルクで
8時間ぶっ通しで演奏しろ、みたいな
こき使われ方してる。
で、それのおかげで10,000時間になってる。 |
堺 |
ふうん、ふうん。 |
糸井 |
ていうようなことがね、
『天才!』っていう本には
いろんな章立てに書いてあって、
全部まとめると、そいつのせい以上に
なんかあるよねっていう話。
だから、助監督には、
監督になれないっていうような
言い方もできますし。 |
堺 |
いいからやれっていうことですよね。
いいから、まず監督してみろって。 |
糸井 |
自分が社長になったつもりの人
ばっかりの会社は、強いですからね。
ここで搾り出さなきゃっていう時の本気さとか。
俺には無理だっていう人が集まってたら
何もならない。
「いいよ」って言われたらどんどんいきますね。 |
堺 |
うまくいく現場ってそうですよね。 |
糸井 |
任天堂の岩田さんも
そういうことを意図的にやったんだよね。
社長の直属の場所を作って、
すぐ答えの出るDSのソフトを作り始めたわけ。
すぐ答えが出ると、
「できる!」っていうので力が付いて、
山がひとつできる。
大きなソフトで売り上げている大きな山ひとつ、
だけでなく、小さな山を増やしていった。
そうやって、働ける現場をたくさん作ったんですよ。
それは意識的にやったんです。 |
堺 |
へ〜え。 |
糸井 |
やってみてできたっていう経験がその人を育てるわけ。
だから、ピックアップされない限りは、
やっぱり「いつかお前もな」っていうのは、
やっぱりだめなんですよ。 |
堺 |
うん、うん、うん。 |
糸井 |
それはもうね、お金で釣ってもだめだし、
地位で釣ってもだめで、
やっぱり「できた、完成した」喜びなんですよね。 |
堺 |
現場勝負っていうことですよね。 |
糸井 |
「いいね」って言われたり、
自分がいいねっていうものが重なったら、
何がいいかがわかるしね。 |
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堺 |
あぁー。 |
糸井 |
ぼくが最初に入った会社は
入った日に先輩から
「実はぼくは今日辞めるんだ」って言われて。
それで新人もへったくれも、
1回も仕事したことないぼくは、
しょうがないから、
コピーライターになったんですよ。 |
堺 |
(笑)。 |
糸井 |
それは運ですよね。 |
堺 |
そうですね。 |
糸井 |
先輩の方法を「ずっと見てなさい」、
「俺と同じように書いてごらん」だったら、
俺はこんな生意気な人間にならなかったと思う。 |
堺 |
ぼく、劇団に入った瞬間に、
劇団で上の先輩たちが喧嘩して
みんな辞めちゃったんです。 |
糸井 |
(笑)。 |
堺 |
2年目で、ぼく、劇団の
トップクレジットになっちゃったんですよ。 |
糸井 |
よかったね(笑)。 |
堺 |
そういう意味ではよかったです。 |
糸井 |
よかったですよね。
だから、なんかこう、
頭にあるものを奪っちゃったほうが
伸びられるんじゃないですかね。 |
堺 |
ですかね。 |
糸井 |
だって、実際俺、弟子にはものすごくきつくて、
社員には全然厳しくないもん。
弟子だと思うと、そんなんじゃだめだ、
と思うんですよね。でも社員だと思うと、
「頑張れば」なんですよね(笑)。 |
堺 |
へーえ。 |
糸井 |
これはもう全然違いますよ。
だから、映画界とかは、嫉妬とかさ、
せっかくここまで来たとか、
いろんな要素が渦巻くから難しいですね。
でも、そうじゃない作り方をする人は
どんどん出てるんですよ。
あと、メインでないところで育ってますよね。
だいたいね。
社長が得意じゃないところが育ちますよ。
おもしろいですよ。 |
堺 |
おもしろいですね。 |
糸井 |
堺くん、また、会いましょう。 |
堺 |
またいつ会えるかわからないと思うと、
いろんな話聞きたくなっちゃう。 |
糸井 |
暇を作りなさい。 |
堺 |
はい。 |
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糸井 |
ありがとうございました。 |
堺 |
ありがとうございました。
(おしまい) |