── |
すっごい野暮なこと訊きますけど、
ふつうじゃない装丁にしようとすると、
コストの問題と、ぶち当たりませんか? |
祖父江 |
ぶち当たりっぱなしですよ。
毎日コストとの戦いですもん。
デザイン作業より、そっちのほうで
時間がたりなくなってしまってますよ。
企画出しても、
だいたいは通らないですね。 |
── |
ですよね? というか、
それが通るときのほうを
知りたい感じなんですけど。
通るときは、どうやって通るんですか? |
祖父江 |
愛と‥‥‥‥粘着気質。 |
── |
ね、粘着気質! |
祖父江 |
通らないなら、
なぜそれが通らないか、
どこがそれを通さないか、
っていうのを明快にして、
「じゃ、ここをやめて、
そのぶんの予算を使って、
こうするのはどうでしょう?」
って、つぎのプランを出します。 |
しりあがり |
ふーん、なるほど! |
祖父江 |
で、それでも通らなかったら、
「じゃ、いまのはナシで、
新たにこういうプランで
どうでしょう?」って、出します。
愛をもってくりかえしてゆくと
だんだんと‥‥。 |
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しりあがり |
だんだんと。 |
祖父江 |
うん、だんだんと、
向こうのコストと、
こちらのイメージが擦り合ってきて、
「GO!」が出る。 |
── |
なるほど。 |
祖父江 |
‥‥情熱さぁ!
擦り合わないときも
たまにあるけど。 |
一同 |
(笑) |
── |
なんか、たとえばぼくが、
ふだんあまり自由にできない
若手のブックデザイナーとかだったら、
「祖父江さんは名前があるから
好きなことできていいなー」
みたいに思っちゃうと思うんですけど、
そういう問題じゃないんですね。 |
祖父江 |
う〜ん、でも昔は
とことん通らなかったから‥‥。
でも、あきらめないで、かといって
デザイナーのワガママでもなく、
情熱をもって著者や編集者、
出版社の制作部、
あと印刷・製本の人と
良いものをつくろうって
同じ方向を見られるようになれば
きっと平気ですよ!
そんなふうにつくった本は、
たとえ出来が悪くても
ステキな本になるんです。
プロである必要はないですよ。 |
── |
でも、その、プランを
つぎつぎに提示したり、
コストを下げようとするのって、
本のことを
よく知ってるからこそなんですよね。
だからこそ代案ができるというか、
粘れるっていう。 |
祖父江 |
最初は何もわからなかったです(笑)。 |
しりあがり |
今まで、何冊ぐらいつくったの? |
祖父江 |
えっと、わかんないけど、
そんなにたくさんはつくってないよ。
あの、ペースが遅いから。
1週間に1冊できないかできるか、
そんなんじゃないかな? |
しりあがり |
でも、1週間に1冊でも、年間50冊?
もう20年くらいやってるでしょ?
50冊×20年って、1000冊だよ? |
祖父江 |
そんなに、ないない。
昔は1冊だけに
1ヶ月以上かけてたし。
‥‥ないないないない。 |
糸井 |
半分は確実にありますよね、
きっとね。 |
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しりあがり |
ありますよね、きっとね。 |
祖父江 |
‥‥数えたことないけど、
きっともっと少ない。 |
しりあがり |
それさ、ちゃんと数えて、
1000冊目、なんかやろうよ。 |
糸井 |
うん。 |
しりあがり |
やったほうがいいですよね。 |
糸井 |
みんなに千円配るとか(笑)。 |
しりあがり |
お札で本つくるとか(笑)。 |
糸井 |
パーティだ! |
── |
損するだけじゃないですか(笑)。 |
しりあがり |
あ、そっか(笑)。 |
糸井 |
いや、それをみんなが
3千円で買えばいい! |
しりあがり |
あー、そうか(笑)。 |
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── |
ええと、1000冊目はさておき、
最新作が、いちおう‥‥。 |
祖父江 |
はい。『言いまつがい』。
いい出来です! |
糸井 |
そうですねー。 |
── |
だからこれ、掲載されてる人は
きっとうれしいですよね。 |
糸井 |
うん。こういうふうに装丁されて。
しりあがりさんの挿画もあって。 |
── |
どうもありがとうございました! |
一同 |
ありがとうございましたー。 |
(終わりです!)