堺屋太一さん、
どうしましょう?

経済企画庁に出張しての鼠穴対談

第3回 インパクは、売りやすいか?

糸井 まあ、今回堺屋さんにうかがうには具体的に
どういった質問をしていこうかなと
考えたんですけど、インターネット博覧会を、
ひとつのイベント戦略と言いますか、
商品拡販戦略として、堺屋さんの立場から、
どうすればうれるのかということを
うかがいたく思います。・・・まあ、今は、
いろんな点のようにひろがっているものを
つなげる段階じゃないのかもしれないですけど、
「インパクという商品は、まず、売りやすい商品か?」
というところからうかがいたいと思います。
堺屋 どうですか?糸井さんの感覚的には。
糸井 固まる商品だと思うんです。
一部、地域限定型の商品ってありますよね。
そこだけで人気のあるものです。
明太子だとか。ああいう商品のようなものが、
バーチャルの世界で起こりうるだろう。
さきほどおききしたら、
テーマ募集のところで、非常に期間が短いですよね。
「あの短い期間で、応募大丈夫だったんですか?」
ときいたら、約3000位あったとうかがいました。

「すごいな」というイメージもあるんですけど、
国民の数からすると3000は少しも多くない。
あるいは今までのヒエラルキーのなかで、
「お上がやっているから、
 うちでも何かやらねばあかん」
というような、
いわゆる義務的な古い意識で参加することを
呼びかけているんじゃないかなと。

そういう参加者の数を全部どかしちゃったときに、
その商品が伝わっていくのはどのくらいかと言うと、
ぼくの感じでは3000じゃなくて100か200。
3000と言われたときには、
たぶんこのかたちでは、200だろうと。
ぼくは「売りにくい商品だ」と
今のところは感じているわけです。
つまり、概念を転換させなければならないところで、
例えば今の「命令でやれって言ったところをどかして」
というのはもう既にとんでもない価値転換ですが、
その場合に、自発的に下から浮かび上がってくるものを
拾っていくためには、それこそ、
今ぼくらがやっているこの話しあいのようなものが
必要ではないでしょうか。

例えばうちのホームページに載っていくと、
毎日20万の人が見るじゃないですか。そうすると、
「どうせ国が言うから、何だかわかんなかったけど」
というのが、多少見えてきますよね。
そういうところの戦略が、今のところの「インパク」には
決定的に欠けてることだと思います。
売りにくいのがわかっていても
やらなきゃならないときがありますから。
これを、どう考えるんだろうというのは、
非常にこうクイズとしておもしろいんです。
堺屋 新しい商品というのは、いずれにしても売りにくい。
しかし売れたら爆発的に売れることもありますよね。
ならば、日本では、例えば薬でも、
改良型の薬品ばかりで飛躍型の薬品は少ない。
ましてや、電気製品といったものになると、
飛躍型のものをつくるのはたいへんだ。
まあ、今度のプレステ2もそうかもしれませんけど。
糸井 あれも改良型ですね。
堺屋 日本で飛躍型の商品は何があるのかというと、
まあ新幹線はそうでしょうね、きっと。
あれは世界的に言って、そう。
あとは何がありますかね?
・・・引越しセンターがそうですよね。
あれも日本独自。そして、万博はそうなんですよ。
一方、オリンピックは改良型なんです。
だから、売りやすいんですよ。
万博は一回一回違う創造物だから売りにくいんですね。
だから愛知万博は大変なんですけど。
でも、「インパク」はもっと売りにくい。
糸井 ほんとに(笑)。
堺屋 世界ではじめてですから。
それで、インターネットに詳しいひとに来てもらうと、
今のインターネットの使い方、つまり
「便利な」インターネットの使い方になります。
しかし、わたしたちの見出しというのは、
「楽しい」「おもろい」インターネットなんです。
現在では、いまだに「便利な」インターネットの
範囲をこえてないんです。
糸井 それがお金をとりやすいんです。
堺屋 「楽しい」インターネットというのは、
おじいさんが見て楽しい、お父さんが見て楽しい、
お母さんが見て楽しい、一家で見て楽しい、
いろいろとそういう要素があって、
特に、さきほどおっしゃったように、
ある地方のひとが見て楽しい、というのを、
数限りなくついてゆくと、
自分の同好の士を探すことができていいんです。
私も、インターネットで同好の士を探すのを
よくやっとんですよ。
糸井 堺屋さんですと、格闘技とか?
堺屋 そうそう(笑)。女子プロレス。
あれもホームページで調べますよね。
自分の好きな選手の出ているのを探す。
そのときに通信しているひとと、
時に後楽園ホールで会って。
そういう、全国の隠れファンが集まれると
おもしろいと思いますね。
そしたら必ず増殖しますからね。

(つづく)

2000-03-31-FRI

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