堺屋太一さん、
どうしましょう?

経済企画庁に出張しての鼠穴対談

第5回 放課後にはりきる時間

堺屋 何万人という大企業は個性がない。
今、個性のないひとが同じ規格に従って
大量生産を築いたのが、日本の現状です。
ところが教育も個性化個性化と言っているけど、
先生のほうは、
「やっぱりみんなと同じことはしなきゃあいかん」
ってゆうてるわけです。
やっと品川区が学区を自由にしたわけですけど、
この「インパク」は、そういう超個性、
個性の極地を引っ張り出したいですね。
糸井 うれしいですよねー。
つまり、どう時間をつかうのかというところが
ぼくには興味があるんです。
インターネットでぼくは毎日読者と
直にインターフェイスしてますから、
声がきこえてくるわけですよね。
全部職業を持っているわけです、だいたい。

ページでアンケートひとつとっても、
ものすごい熱心に答えてくれるんです。
今まで、ギャランティして、
仕事としてアンケートをとっていたものよりも、
うちで無料でおたずねしたほうが、来るんです。
このエネルギーって、
会社のために使えなかったんじゃないか。
ぼくは「放課後のエネルギー」と呼んでるんだけど、
勉強の嫌いな生徒は、
6時間目の授業が終わってからが「快」の時間ですよね。
それとおんなじことが、インターネットの場合で、
日本が今二重に動いているんじゃないかと思うんです。
つまり、会社のために、何か事業目標があって
そこに歩むための努力。これは、
ギャランティされてるから、やってるぶんだけやればいいな、と。
もうひとつは、自分のため、あるいは、
自分がそれをやっていること自体が楽しいと、
もうひとつの才能を、
おそらく女子プロレスのホームページ
つくっているひとも、会社勤めが終わってから、
会社以上に熱心にやっているわけですよね。
その、放課後と帰社後のエネルギーが、
日本を変えるんじゃないか、と。
堺屋 しかもね、会社におけるランキングと
帰社後のランキングが違うところが、うれしいんですよ。
国際会議に行っても、
外国代表団の大臣、次官、局長、課長、課長代理がいる。
でも、課長代理が
「わしは国務省では課長代理だ。
 でも、ワシントン第**町内では、聖歌隊長だ」
というわけです。この地位の逆転がうれしいんです。
役所では辛抱ですけど、教会でははりきって歌う。
このはりきる時間のひとを、
「インパク」で集めたいですよね。
県のパビリオンでも、
例えば、蝶や恐竜や、いろいろできます。
蝶なら、ぜひとも自分の好きな蝶々を選んでもらって、
単に標本化してもらうだけじゃなくて。
リナックスシステムで、それぞれの自己顕示欲で。

そのかわり優秀なものは表彰しますよ。
表彰したものをまた集めて、DVDに置き換える、
そういう転換をしてゆきますからね。
そこではお金にならなくとも、
そこで1等になったひとは、
次の注文があると思いますよ。
今のインターネットで
リナックスモードでやっているのには、
無料で出してたんだけど、
「夢は世界の有名人」と、
そういう可能性があるのがいいと思う。
糸井 お話をしていて思ったんですけど、
大阪で万博をやったときには、
目で見える敷地の広さがありましたよね。
修学旅行生で行くにしろ何にしろ、
「あんなところで何かやるよるね」
という街のサークルで、目で見えるものだった。
今度の場合は、例えば蝶々を集めているかたは、
蝶々の同好会のなかでは、
ある程度自足しているわけですよね。
これを、もうひとつステージを、
「あの舞台で踊ってみたい」という
気分にさせるための建設予定地のイメージが
バーチャルにどうつくれるかというあたりが、
今、どうやらカギですね。
つまり、インターネットというのは
必ず点でつながっていますから、
広さを出すことはできない。
すると、どういう舞台が?

(つづく)

2000-04-02-SUN

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