堺屋太一さん、
どうしましょう?

経済企画庁に出張しての鼠穴対談

その2 インパク取材のマスコミについて

堺屋 日本のジャーナリズムの共通点、
自分で熱くなるのはスポーツ記者だけです。
特に文化に関しては、
ひどく想像力を失っていまして、新しいことを、
理解して拡大して伝えることが、ないんですよ。
だから、何かを言われたら、
それを過去の何かの事例に当てはめて、
過去にあったどこかの箱のなかに入れて、
それで議論をしてしまうのが多い。

特に、インパクの記者会見に来ているのは、
経済部の記者という場合が多いので、
どうしても、インパクを
経済企画のように受け止めていますよね。
「何社出店しますか?」
「何億円くらいの価値がありますか?」
「経済効果は、どうですか?」
と聞かれますから。
糸井 そういうものではないと、
はっきり印象づけなければいけないですよね。
堺屋 でも、経済運動ではないとなったとたんに、
その人たちには、
まったく想像ができないんですよね。
一切、記事が書けなくなる。

そういう意味で、今インパクは、
非常に記事を書きにくいと言われています。
「会場は、何平米ですか?」と聞かれて、
「それは『平米』がないんです。
 ぜんぶウェブの上でやるものなんです」
と言うと、記者がそこで、ぽかんとする。
「何円かかるんですか?」
「それは、政府の予算はあるけれど、
 民間企業の間には、10億円かけるところもあれば
 1000万円ぐらいのところもあって、わからない」
と言うと、なかなか、わかってくれないんです。
その質問をするのは「総事業費は、なんぼ」と、
記事に、出したいからなんですよね。
総入場者数も、ネットですから
ふつうのイベントの入場者とは意味が違うので
わかりにくいですし、そうなってくると、
「電話代は、ぜんぶでいくらかかりますか?」
と、こう来る・・・。
糸井 そういう質問は、
「何がしたいのですか?」
と聞きたいわけでしょうか。あえて言えば。
堺屋 「何を狙っているんですか?」
と聞きたいのでしょうね。
糸井 なるほど、目的があって、
作る道筋のようにして見ているわけですね。
道そのものに面白さがあるとは思っていないんだ。
堺屋 そうです。
「地域開発」「経済成長」「技術革新」だとか、
そこで生まれる価値と、
20世紀型の財産価値であって欲しいのでしょうね。
糸井 そういう質問用の答えに関しては、
「ソフト開発」と言うしかないですね。
堺屋 そうです。
言わばコンテンツ創造だ、と言うしかない。
しかし、「コンテンツ」と言うと、
「その特許は、どこで出すんですか?」と来る。
糸井 またそういう方向が!(笑)
堺屋 それはまあ、もちろん実際問題として、
いずれはそういう問題が出るとは思うんです。
膨大なアーカイブができますから、
それを誰が管理するのか、
そういう問題はあるとはあるのですが、
それは、こちらの狙いでも目的でもない。
糸井 つまり、文化だと言ってしまうと、
「有用ではない情報」だと
受け止められてしまうんですね。
堺屋 「有用でない」と取るばかりではなくて、
つまり、それが何であるかを、言葉にして
アナウンスメントにできない。

(つづく)


インターネット博覧会「インパク」の助走にあたる
プレサイトがスタートしました。
まだまだ、でしょうが、もうぼくらのチームの仕事が
はじまっているので、どんなもんかいな、と、
見ていたいただけたらうれしいです。(darling 記)
http://www.inpaku.go.jp/index.html

2000-11-02-THU

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