ジョージさん、 俺の人生を 香らせてください。 男たちのフレグランス。


ジョージさんのお勉強篇 その1 はじめまして、松原さん。



シェフ なぜ伊勢丹新宿店本館の
あのゴージャスなフレグランス売り場のレポートを
「おじさん」がやるのか。
そこが疑問ではないですか。
ジョージ ムフッ。そうよね。
セレブ感やエレガンスから、
かけ離れているわよね。
西本 そうですね。
そう思われても仕方ないですね。
ですが、まずは説明させてください。
「そもそも」を。
シェフ はい。読者が納得するような説明を!
西本 そもそもは、僕の加齢臭問題です。
シェフ ああ、いきなり、それですか!
女子のみなさんが離れてゆきますよ。
ほら、みんなが遠ざかる足音がする‥‥
パタパタパタ‥‥。
西本 ちょ、ちょっと待ってください!
それはただの「きっかけ」なんです。
僕、ずっと「香り」のことが知りたくて。
僕のスペックを言ってもいいですか。
ジョージ どうぞ。
西本 ニシモトタケシ41歳、妻と2人の子供がいます。
通勤は1時間ほどです。
朝、ランニングをして汗を流し、
シャワーを浴びてから出勤してます。
数年前、ちょうど煙草を
止めたころだったと思うんですが、
においに敏感になっていた時期があるんですよ。
すると、朝でも満員電車だったりすると
隣のおじさんのにおいがするんですね

ジョージ ふんふん。
西本 それはスーツにしみ込んでいるのかもしれないし、
からだから発するものかもしれないんだけれど、
快適なにおいではなかったんです。
そのとき、「もしかして自分も?」って思っちゃった。
だったら「自分の香り」がほしいと思い、
それでジョージさんに相談したんですよ。
覚えていらっしゃいますか。
あれはたしか1年ほど前のことでした。
ジョージ そうだったわね!
西本 電車とかに乗っていい匂いの女性が
隣に座ったらすごく嬉しいですよね。
香りで美人って思っちゃいますよね。
シェフ 「美人の香り」あるね!
「ほぼ日」のある表参道周辺は、
いい香りのする美人が多いんですよ。
このへんでバスに乗ると、
すっごい背の高い足の長い女の人が
なんだこりゃっていう
いい香りをまとってたりするんです。
ジョージ あるわね、美人の香り。
西本 で、そこなんですよ!
男にも「いい男の香り」があるはずだと。
シェフ ちょ、ちょっと、自意識過剰じゃ‥‥。
西本 いや。俺はモテたいというわけでもないけど、
においだけでも
ちょっといい人として見られるんだとしたら、
それで加点してほしいなって思うんです。
少なくとも、満員電車で嫌がられる存在には
なりたくないんです。
シェフ ふうむ‥‥たぶん、それは、
加齢臭を消すとかっていう話とは
ちょっと別だよね。
同僚として、そんなに気になることはないよ。
ジョージ そうよ。におわないわよ?
シェフ あれだけ走って代謝がよくて
老廃物も出ていってるはずだから、
加齢臭がどうのってことじゃないと思うなあ。
西本 じつは、加齢臭自体、
自分もわかんないですよ、まだ。
ジョージ 加齢臭についてだったら、
まずボディソープにこだわりましょう、
っていう話よ?
シェフ それよりも、いい香りをまとうって方向で、
いいんじゃないかなあ?
ジョージ そう、あなたのにおいを探しましょう!
で、いいのよ。
西本 それで、その時、ジョージさんに相談したところ、
お薦めくださったのが、シュウ ウエムラの
「ディプシー ウォーター ローズ」
だったんです。
ジョージ そう! バラの香りが仄かにする、
ミスト化粧水なの。素敵よ。
西本 さっそく通販で買いました。
2625円。手ごろです。
ジョージ 容れ物も香水っぽく見えないしね。
ピンク色のシュッとしたかたちで、
シャワーコロンというか、
スポーツウォーターみたいなの。
西本 で、シュッシュシュッシュ、
去年も暑かったんでハンカチ代わりのタオルに
忍ばせたりとかして、楽しんでたんです。
ところが‥‥。
シェフ ところが?
西本 それが我が家で
すごい波紋を呼んでしまいました。
ジョージ アラッ! 波紋!
西本 妻にしてみたら突然ピンク色のものを
夫が嬉しそうにつけてる、
という状況なわけです。
その状況は、アヤシイと。
ジョージ しかもローズよ!
いかにも、自分で見つけて
買うものではなさそうよね。
西本 そうなんです、
「これをアナタが買うわけがない」
ってものが、突如出現したわけです。
明らかに僕にはないセンス、
つまり明らかに誰かが選んだものがある。
シェフ 「まさか‥‥浮気?!」
ジョージ オンナじゃないのよ、オカマよぉ!
って感じなんだけど!
西本 そんな不穏な空気にしばらく気付かず、
ジョージさんが、飛行機でキャビンアテンダントに
シュッシュッ
、ってしてあげると喜んでもらえる、
というような話をしてくれていたので、
僕もマネして妻にシュッシュッって
やってたんですよ。
どうだ、みたいなドヤ顔で。
‥‥それが彼女は怪訝な顔をするばかりで、
全然受け入れてくれないんですよ!
シェフ ま、あったりまえだよねえ。
ウキウキとローズミストを使う夫。
どこから持ってきたかも言わず、
まったく屈託なく、悪びれず使う夫。
そりゃ、怪訝な顔をすると思うよ。
ジョージ 「なんで女のプレゼントを私にかけるのよ、この男!」
ってかんじよね。
ああ、無邪気って怖いわ!
西本 「実はねこれはこれこういう理由で、
 ジョージさんっていう方、お前も知ってるだろう?」と。
あの方に「これがいいんだということで
お薦めしてもらったんだ」と。
それで誤解がとけました。
家庭内に一か月ぐらい漂った
冷え切った空気がそれでやっと‥‥。
シェフ 解決してよかったねえ。
西本 一方で、妻と「におい」について話す機会にもなって。
よくよく聞いてみると彼女も
「香水、最後に買ったのいつかしら」と。
30代、仕事を持っている一男一女の母でもある彼女は、
いま、香水を使ってないんです。
ただ「におい」についてはやっぱり気になると言う。
そこで「あなたの加齢臭もあるかもしれないし、
せっかくのいい機会だから、
香水のこと勉強していらっしゃい」と!
ジョージ 素晴らしい!
西本 「もしよければ家の中の香りとかも、
 一緒にコーディネートしていただいたら?」
みたいになったんです!
シェフ お許しが出た。その機会を私物化して
ジョージさんを使おうという
西本プロジェクトが、このコンテンツですね?
ジョージ いいわよ、乗った! 素晴らしい!
西本 で、武井さんに聞いたら、
なんでも本館1階の入って左側が
ずらりとフレグランス売り場になったと。
シェフ そうなんですよ!
「わたしのデパート」を取材したあとに、
いろんなブランドが混在する
大きな売り場ができたんですよ。
ジョージ 武井くん、行った?
シェフ 前は通るものの、
ちゃんとは、行ってないんですよ。
かなりキラキラしてて、
ちょっとハズカシー。
西本 ぼくら2人で行くのもなんじゃないですか。
そこに行くならやっぱりジョージさんに
ご同行いただいて
「フレグランスとはなんなの?」
っていうお勉強もしながら
お買いものをしたいなあ、と。
ジョージ よっしゃ。わかったわ!



























ジョージさんのメモ
「満員電車の
 おじさんのにおいってネ」

「体臭+生活+仕事?色気」って数式でできあがるんだと思うのネ‥‥、おじさんのにおいって。一生懸命がんばっている、その結果のにおいなんだから本当は尊いものだとボクは思う。でもネ。いろんな生活。いろんな仕事。いろんな疲れや絶望が、渾然一体となってにおいを暗くしていくの。明るい色気があればにおいも明るくなって、まわりの人も明るくなるのに‥‥。モッタイナイなぁって思うワケ。






ジョージさんのメモ
「美人の香り」

半径2メートルほどにいる人をシアワセにする香り。その人が歩いたあとに、香りの道筋がついてしまうほどに強烈ではないの。近づいて初めて気づく‥‥、だから、あっ、この人の香りなんだなぁ‥‥、ってわかるのよね。そして、こう思う。「あぁ、この人にぴったりな香りだなぁ」って。いい女は、その魅力を濫用しないの。美とはそれそのものが香り立つもの。美人の香りはその香りを、際立たせる役目をするものなのよねぇ‥‥。

















ジョージさんのメモ
「シュウ ウエムラの
 『ディプシー ウォーター ローズ』」

さりげないの‥‥。バラの香りのする水‥‥、省略すれば「バラ香水」ってコトになるでしょ? でも、すべてにおいて、さりげない。香りも仄か。プラスティックの筒状の容れ物だってさりげない。自分に香って、けれどまわりに香りが広がらず残らない。香りの世界をためしてみるのに、ぴったりじゃないかと思うのネ。











ジョージさんのメモ
「キャビンアテンダントに
 シュッシュッ」

ロングフライトをたのしい「旅」にできるか、あるいは退屈な「移動」にしちゃうか。そのすべては、キャビンアテンダントと親しくなれるかどうかにかかる。そのキッカケに、ディープシーウォーターは重宝したの。キャビンアテンダントの視線を感じながら、プシュッと顔に噴きかけるのネ。ニコってなるでしょ? お水のスプレーなんですか? って。そう聞かれたら、バラの匂いがするんです‥‥、って、プシュッとかける。あらあらステキ。もう、そのキャビンアテンダントの記憶に残る、バラの香りのお客様になれるのよ。

















ジョージさんのメモ
「家の中の香り」

家に帰ってドアを開けた途端に、「生活の香り」がする。その香りが、油の匂いや得体のしれぬ「生活臭」であったりしたら、気持ちがどんより暗くなっちゃう。例えばネ。海外の高級ホテルのロビーにいって、あら、ココの香りって家の香りに似てるわねぇ‥‥、って言えるようなステキな香り。そんな香りが生活の香りな生活。ステキじゃなぁい‥‥、それこそが「セレブな気持ち」じゃないかと思う。どうかしら。











(つづきます)

2013-03-04-MON