ほぼ日 |
4月10日に発売された
『ミッケ!』シリーズ8巻目も、
すごく好評なんですよね!
おめでとうございます!
この絵本は、アメリカのものですが、
もともとはどこで探して
来られたんでしょうか。
今回発売された
『ミッケ!』シリーズ8/「がっこう」
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桑原 |
フランクフルトで見つけました。
毎年ブックフェアに年に2回行くんです。
その時に、当時の上司が、初めて見て、
面白いっていうんで、
「やろう!」ってスタートしたんです。
それが、10年ぐらい前。
それが最初の『ミッケ!』でした。
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ほぼ日 |
どのあたりが面白いと、
その時、思われたんでしょうか。
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桑原 |
普通、こういうゲーム性のある本は、
1回やると、答えがわかるので、
後でもう一度やり直したりしないじゃないですか。
でも、『ミッケ!』は、後から後から
実は隠されていた答えを見つけられたりして、
何度も何度も楽しめるんですよね。
そのときは1冊しかないものだと
思ってたんですが、
実はシリーズ化されていて、テーマを変えて
後から続々とアメリカで出版され始めました。
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ほぼ日 |
今は、全部で8冊ありますよね。
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桑原 |
はい。
最初はあまり売れていなかったんですが、
日本でもシリーズで出していくことにしました。
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ほぼ日 |
この6冊目の「ゴーストハウス」は、
かなり面白いんですよねえ・・・。
ちょっとこわくて。
(パラパラとページをめくる)
糸井がこの絵本の翻訳をすることになったのは
どういうきっかけだったんでしょうか?
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桑原 |
実はこの訳なんですが、
いちばん難しいと思ったのは、
タイトルなんですよね。
アメリカのタイトルは、
「I SPY(アイ スパイ)」です。
これを子供にわかりやすいように訳すには、
どんなタイトルにしよう?っていうのが、
ずーっとわからなかったんです。
それから、
この絵本の【問題】にあたる文章が、
英語では、やっぱりこう、
韻を踏んでるんですよね。
歌みたいになっている。
日本語だと韻を踏むことって難しいから、
そこをうまくリズムに合わせて
訳して下さる方って誰だろう、ということで、
「糸井さんなんじゃないか?!」
ということになったんです。
そしたら引き受けていただけて。
すごく嬉しかったなあ。
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ほぼ日 |
この『ミッケ!』は、隠れんぼなんかで、
相手を見つけた時の
「見っけ!」なんですよね。
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桑原 |
そうです。
子供たちが何かを発見できたときの
喜びの言葉ですね。
もともと「I SPY」はどういう意味かってことを、
英語のできる人に訊いたんですよ。
そうすると、これは海外で、部屋の中なんかで、
「探しっこ」するときの最初の言葉らしいんです。
「I spy with your little eyes.」
「I spy blue thing in this room. 」とか。
この部屋にある青いものを探してごらん
、っていう、なんとなく、ちょっとリズムを付けた、
でも、歌じゃないもの。
日本語でいうと、
♪にらめっこしましょ、あっぷっぷ♪ みたいな、
そういう時に使う、
最初の言葉だっていうのがわかったんです。
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ほぼ日 |
原題の意味に、感覚として近いですよね。
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桑原 |
そうなんですよ。
すごく素晴しいなって思って。
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ほぼ日 |
オソロシイ、うちの社長。
『ミッケ!』というタイトルひとつで、
この楽しみ方の全部が見えてきますよねー。
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桑原 |
それから、この糸井さんの訳文が面白いです。
いわゆる五七五みたいなリズムで
訳していただいていて、
読んでいるだけでも、楽しいですよね。
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ほぼ日 |
糸井は、自称「趣味の作詞家」ですから、
リズミカルに言葉を使うのって、
好きなんですよね。
でも、実は、けっこう苦労して
訳しているみたいです。
これ訳す日っていうのは、
他の仕事を一切入れずに
家にこもって出てこないんです。
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ほぼ日 |
最初はそんなに注目されていなかった本が、
だんだん人気が出てきたっていうことですが、
その理由ってなんでしょうか?
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桑原 |
最初はいわゆる平面的な写真が
多かったんですよね。
ウィックさんが立体的な写真を
撮るようになって、段々と本が売れ出しました。
ガラスの板にはりつけて撮影すると・・・↓
こうなります。
これが、↓
こうなります。
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ほぼ日 |
すごいセットですよねー。
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桑原 |
文章担当のジーン・マルゾーロさんと
ウィックさんが、コンセプトを話し合って、
テーマに合わせた小道具を
カタログやアンティークショップや
屋根裏部屋から見つけてくるらしいんですよ。
それが一番大変だろうなあと思います。
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ほぼ日 |
たしかに初期の平面写真の時代と比べて見ると、
立体になったことで、
一気にワクワク度が増しますね!
イラストは一切使ってないんですよね。
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桑原 |
イラストはないですね。
「写真がきれいだから」
って買って行かれる
女性もいらっしゃるって書店で聞きました。
いちばんすごいのが7巻目の
「たからじま」です。
縦横が5メートルもある大きな町の
ジオラマを作って、
それを5つの方向からカメラで撮って、
5場面の写真ができたんですよー。
いやあ、すごい。
『ミッケ!』シリーズ7/「たからじま」より
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ほぼ日 |
このウィックさんとマルゾーロさんは、
アメリカでは主にどんなお仕事を
されているんですか?
マルゾーロさん(左)とウィックさん(右)
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桑原 |
ウィックさんは
300誌くらいの雑誌の表紙を
撮ったりされているかたです。
それに、もともとゲーム本が
すごく好きらしいです(笑)。
マルゾーロさんは、『ミッケ!』の
アメリカ版を出してる出版社の
編集者でした。
自分で子ども向けの本も
どんどん書いてらっしゃるらしいんです。
2人は、一つ一つの写真に、
子供たちが自分自身のストーリーを
それぞれが見つけてくれたらいいなあ、
と思って
この本を作られているそうです。
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ほぼ日 |
ああ、それすごくわかります。
子供のころって、1人で遊ぶとき、
よく勝手なストーリーを作って、
リカちゃん人形や、字のない絵本で遊びました!
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桑原 |
(笑)
中には、
「あの本に載ってた写真の積み木、
買いたいんですけど」
って、お母さんから問い合わせが
あったりします。
「どこで売ってますか?」とか言われて。
「ま、ちょっと、日本じゃなくて、
アメリカで作っているので、
すいません、わかりません」と言いながら
こっちもお返事したりしまして。(笑)
思わぬ電話が来ますね。
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ほぼ日 |
へえ!
絵本で問い合わせが来たりするって、
みんな真剣に遊んでくださってる証拠ですよね。
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桑原 |
あ、でも、いちばん多いのは、
「とにかく見つからないから
教えて下さい」
って電話です(笑)。
ちょっと怒り気味で。
とくに最近増えましたね。
手紙も来ます。
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ほぼ日 |
教えるんですか?
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桑原 |
あ、教えますよ。
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ほぼ日 |
へえ! ずるいです!(笑)
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桑原 |
でもね、楽しくないと思うんですよ、
教えてもらったりすると。
「答えの本はありませんか?」
っていう電話があったりするんですが、
それがあると、絶対探さないと
思うんですよね。
自分で最後まで探したときの
喜びを味わうことが、
この本のいちばん面白いところだと
思うんです。
そういうふうに説明して、
どうしてもわかんなかったら、
またお電話下さい、
っていうことを言ってます。
どうしてもわからない、
という方に教えてあげると、
「わぁーっ!」って(笑)。
「あ、ここか!」みたいな反応で。
おかしいですね。電話口で大声で。
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ほぼ日 |
(笑)
そうなりますよねえ。
すごく楽しそう。
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桑原 |
家族でやってる方が多いですよね。
「お父さんは、『その答えはこっちだ』、
って言う。
娘は、『こっちじゃない』って言って
ケンカになって困っています」
っていう手紙がお母さんから
来たこともあります。(笑)
でも、『ミッケ!』で遊ぶ前までは、
娘と父親は、話すらしなかった、って
書いてくださっていて。
おかげで仲良くやっています、と。
そういう電話や手紙が、最近多くて、
ものすごく嬉しいんですよねえ。
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