伊丹さんは『アート・レポート』っていう アートをテーマにした番組もやってたんですが それもすごくおもしろかったんです。 美術番組なんですけど、 科学番組とか料理番組みたいに ほかの番組のフォーマットでつくるんだね。 |
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へぇー。 | |
いろんな工夫をして、 毎回、毎回、ぜんぜん違う感じにしてた。 |
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どんな番組なんですか? | |
要するに、現代美術を紹介する番組なんです。 だけど、まったく現代美術に興味がない人に おもしろく伝わるようにしてある。 たのしくわかるように説明する。 |
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へぇー。 | |
たしか、15分ぐらいの短い番組だったんだけど、 たとえば、アンディ・ウォーホルの シルクスクリーンの版画を、 街の、質屋に持って行って、 いくらで引き取ってもらえるだろうか? とか。 |
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おもしろそー(笑)! | |
その質屋さんは、 アンディ・ウォーホルも、シルクスクリーンも、 もちろん知らないわけですよ。 だから、絵として虫メガネで鑑定して、 「こりゃ印刷ですねぇ」なんて言うわけ。 |
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(笑) | |
するとそれを持ち込んだ伊丹さんが、 「まさにそこが重要なんです!」とか言って、 ポップアートの解説をするわけ。 わかってもらわないと、お金にならないから っていうシチュエーションだから、必死でね。 |
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おもしろーい。 | |
パフォーマンスをやってる 海外のグループの説明をする回のときは、 「生放送でやっている」というふりをして、 苦情の電話をどんどん鳴らすんです。 つまり、視聴者が、 「これは、なにをやってるんだ?」 「意味わからないぞ」てんで、 電話をじゃんじゃんかけている、 という設定なんですね。 で、それに対して、いちいち電話に出て 伊丹さんが答えていく。 それで、観ている人は、 それがどういう芸術なのかっていうことが わかる仕組みになってるんです。 |
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へぇー。 | |
まぁ、スポンサーが 大喜びするような番組じゃなかったから、 そんなに長く続いたわけじゃないんですけど、 とってもおもしろい番組でしたね。 |
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あの、質問なんですけど、 そういう、伊丹さんがつくった 独特のセンスのある番組を、 当時の視聴者の人たちは どういう感じで受け止めてたんでしょうか? ふつうにバラエティー番組を 観るように観ていたのか、 それとも、ちょっとシュールなものを 目撃するような感じだったのか‥‥。 |
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うーん、そうですね‥‥ いまの、いわゆるお笑い番組って、 ものすごく親切なつくりになってますよね。 もう、とことんかみ砕いて、 どろどろになったものを 口移しで与えてくれる、みたいな。 |
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(笑) | |
伊丹さんがつくる番組は、 そうではなかったですね。 だから、やっぱり、視聴者って、 ほんとうはそんな、かみ砕きすぎて どろどろになったものを欲しいんじゃなくて、 ちゃんと自分で咀嚼できるものを欲しいって、 「思うんじゃない?」って 伊丹さんは思ってたんじゃないかな。 |
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ああ、そうですねー。 | |
だから、伊丹さんのつくるものは、 ものすごくコテコテな笑いだったり、 わきの下に手を入れてくすぐるような感じの 笑いではなかったですね。 それは、番組も、文章も、なんでも。 でも、おもしろいものって、ほんとうは、 そういうものなんだけどね。 |
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なるほどー。 | |
うかがっていて思うんですけど、 伸坊さんは、伊丹さんのお仕事のなかでも とくに、テレビのお仕事に すごく影響を受けてらっしゃるというか。 |
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うん、そうですね。 ぼくは、あんまり、ドラマとかよく知らなくて、 伊丹さんの俳優時代のお仕事とかは ほとんど見てない。 知っている分野のなかでいうと、 伊丹さんがテレビというフィールドで 企画したものとか、新しくつくったもの、 そこに込めたアイデアっていうのが、 ぼくにとってもおもしろいですね。 |
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(つづきます) | |
2009-08-27-THU |
27. 『伊丹十三のアートレポート』。 伊丹さんが企画・出演した それまで美術番組といえば権威のあるものばかり、 しかし伊丹さんは、 とりあげたのは、アンディ・ウォーホル、 アンディ・ウォーホルの回では、
ギルバート&ジョージの回では、 峡谷や巨大建造物の梱包で有名なクリストの時は、 番組としてとてもおもしろそうなのですが、 もともとデザイナーでありイラストレーターであり、 |