山下 |
えーっと、まあこんなようなものが、
最初のころにあったのではないかと。 |
糸井 |
でも、今の演奏でも、
やっぱり、ところどころに山下さんの風味が
出てきますね。 |
山下 |
ええ、まあ、何やっても私は‥‥。 |
タモリ |
フリーである。 |
山下 |
すいません。 |
糸井 |
いえいえ、ありがとうございます。
ここから、
次のスイング時代へと続いていくと。 |
山下 |
ええ、まず「One O'Clock Jump」という有名な曲、
それから、グレン・ミラーの「Moonlight Serenade」、
最後に、同じくグレン・ミラーで「In The Mood」。
どれもきっと、みなさん、よくご存知の曲ですよ。 |
糸井 |
山下さん、そんなに急がなくても大丈夫です!(笑) |
山下 |
ああ、そうですか?(笑) |
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タモリ |
1930年代ぐらいの話ですよね。 |
山下 |
ちょうど、大不況から脱したぐらいで、
みんなちょっと裕福になって、
ビッグバンドを雇ったりすることができた時代。 |
糸井 |
景気がよくなって、みんな飲んだり食べたり。 |
タモリ |
踊ったり。 |
山下 |
とにかく未来は明るいぞと。 |
タモリ |
ビッグバンド隆盛、
ダンスホール全盛の時代ですね。 |
山下 |
ヤンキースタジアムをいっぱいにして、
一日中、ダンスコンテストをやってたとか。 |
糸井 |
娯楽的な音楽が要請された時代だったんですね。 |
タモリ |
その後、第二次大戦に向かうにつれて
だんだん、ビッグバンドというものは
衰退していってしまうわけですけどね。 |
糸井 |
今日はビッグバンドの編成じゃないですけど‥‥
どうするんですか? |
山下 |
それは、編曲の松本治さんのウデによって
「そういう音」がするはずです。 |
糸井 |
この人数で? |
山下 |
します。 |
タモリ |
スイングの時代になると、
「オレァ、アフリカから連れてこられてヨオ、
ほんと苦労したんだよなァ、
もう毎日毎日、農作業ばっかりでサァ‥‥」みたいな、
そういう辛そうな感じは、薄まってきてますね。 |
糸井 |
ぱぁーっと明るい音楽になる。 |
山下 |
ベニー・グッドマンという白人のスターが登場して、
ジャズという音楽が
真にアメリカ国民全体のものになっていくんです。 |
糸井 |
国民音楽に。 |
山下 |
黒人がやっていた「素晴らしい音楽」から、
白人スターが登場することによって
アメリカ全土に流行していく。
そして、このことによって一致団結できたから
アメリカは第二次世界大戦に参戦したんだってのが、
菊地成孔というやつの説でね。 |
糸井 |
ああ‥‥「せーいのーっ!」ってなれたんですね。 |
タモリ |
そうなんです。 |
糸井 |
その話を聞くと、逆にさっきの、
なにかとブルースという原点に戻りたがる人の気持ちも
なんだか、わかりますね。 |
山下 |
そう、いわゆる「あの、苦しかった時代」ですから。 |
タモリ |
だから、このあたりの、
グレン・ミラーなんかのビッグバンドを認めたがらない
ジャズファンもいるんですよ。 |
山下 |
ああ‥‥いる、いる! |
タモリ |
ブルースの伝統を受け継いでない、とか
音楽に「苦しみ」が感じられない、とかいってね。 |
糸井 |
今日の仕事はつらかったー、は
どこへいっちゃったんだと。 |
タモリ |
ま、私もキライですけどね。 |
糸井 |
え。 |
タモリ |
キライです、ええ。キライ。 |
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<つづきます> |