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以前、そのジョビンやら
ハービー・ハンコックやらといっしょに
ヴァーヴ・レコードの記念式典に呼ばれて、
記者会見の席が隣だったんですよ。
で、ジョビンはヴァーヴ・レコードで、
スタン・ゲッツと
アストラッド・ジルベルトが共演した、
あの「イパネマの娘」で作曲家として
世界的に有名になったわけだから、
とうぜんジャズに
恩は感じているだろうという前提のもとに、
インタービューアーが
ジャズとの関連を話してくださいと、
もちかけたんですけど。 |
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ええ、ええ。 |
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コードのサウンドだってすごく似ているわけだし、
とうぜん「いろいろ影響を受けて感謝しています」って、
ありきたりの返事をするのかと思っていたら、
ぜんぜん言わないんですよ、これが。
「私は私の音楽をやっただけです」って、言い張っている。 |
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それで、横に座っていた山下さんが
不思議に思って
ボサノバをもう一度、研究し直すんです。 |
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なんであんなに頑固に‥‥と思って、
いろいろ調べ直したら、
ジャズのおかげだと言いたくない理由が、
わかってきたんですね。 |
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ほーお‥‥。 |
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なんでもかんでも自分たちが発見して
流行らせてやったと言わんばかりの
アメリカの「ジャズ帝国主義」を、
晩年、毛嫌いしていたんですね。
どう聴いてもモダンジャズのサウンドを
使っているだろうとみんなが言っても
「いや、そういう和音は
すでにドビュッシーにあった。
私はそっちから学んだ」なんて(笑)。
リオのイパネマの店に行くと、
そこでジョビンが「イパネマの娘」を作曲したというので、
壁に大きく「手書き楽譜」が印刷してあるんです。
それをよく見ると、
アメリカ経由のあの音楽ではなくて、
ちゃんとサンバのリズムが見えるんですよね。
♪タン、タト、トン、タタ、タン、タト、トン、タタって。
英語の歌詞では消えているアクセントが、
ポルトガル語ではぜんぶ出てくる。
サンバの低音打楽器のスルドのリズムが
ちゃんと歌詞に入っている。 |
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楽譜にそう書いてあるんですね。 |
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それ、山下さんが
発見したみたいな感じなんですか? |
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いやいや、音楽家なら
見ればみんな、わかりますよ。
でも、そこまで行って
壁の生原稿を見たというのが、自慢で(笑)。 |
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それは、なかなかねぇ(笑)。 |
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でも、ジョビンもそうですけど、
ボサノバっていうのは
音楽的素養のある
上層階級から生まれた音楽なんですよ。 |
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ジョビンの相棒の作詞家だった
ヴィニシウス・ヂ・モライスという人は、
外交官だった。 |
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だから、民衆レベルには
あんまり根をおろしてないんだよね。 |
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現地ではね、消えちゃうかもしれない。 |
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でも、日本って国は、
ぜーんぶ残しちゃいますよね。
まるで「音楽の博物館」みたいに。 |
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それですよ。
いまやヨーロッパよりも
クラシックが盛ん、なんてことになって
このままいくと、
500年くらい経ったら
モーツァルトを覚えているのは日本人だけ。
だから「モーツァルトは日本人だ!」なんて
ことになっているかもしれない(笑)。 |
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「モー」のところは
「猛々しい」っていう字を書くんだよ、と(笑)。 |
全員 |
わはははは(笑)。 |
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名前のほうは「有る」に「人」と書いて。
つまり、「猛津有人」さん。 |
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ははははは。
こういう話を、いちいち掘り下げていったら
ショウになりませんが(笑)。 |
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でも、おもしろいですねぇ。こういう話。 |
< 続きます > |