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それでは、えー、ちょっとまとめますと、
ジャズに興味があるんだよね、って人に
来てほしいつもりなんだけども、
決して「ジャズ原理主義」じゃあないぞ、と。
やっぱり「音を楽しむ」、
すばらしいコンサートであるということが
基本になってきますよね。 |
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ええ、そうですね。 |
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あるいは「楽しむを楽しむ」‥‥これか。 |
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うん、あとは「ジャズにはある」けど
「他の音楽にないもの」を見てほしいなぁ。 |
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つまり、インプロビゼーション(即興演奏)。 |
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目の前で「音楽ができあがっていく」、
その現場に居合わせられるのが、ジャズです。 |
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なるほど‥‥たしかに、ロックでもなんでも、
レコーディングして
ビジネスにするって前提があるから、
ウケたものは
必ず自分の「特許」にしちゃいますよね。 |
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ああ、そうなんですか。 |
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つまり、「再現性」というか。 |
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決まったフレーズをやってますよね。
アドリブとは言ってるけれども。 |
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「あの、おなじみのアドリブが!」(笑)。 |
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その場ででき上がったライブも、
その場かぎりで、終わり。
次のときにはまた違うって音楽はね、
ジャズだけでしょう。 |
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うん、違わなきゃいけないんですよね。 |
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昨日と同じことやったら、
お客さんというよりも、
まず一緒にやってる仲間にバレます。 |
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ああ‥‥。
そういうところで、戦ってるんですね。 |
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また同じことやってやがるな、なんて
仲間に思われるのは、覚悟しないと。 |
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「あのときウケたと思って!」とか?
うわー‥‥すごいなぁ、それ‥‥。 |
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いや、まあそれでもいいんですよ。
つまり、「あれがお前の切り札だよね」って
思われればね。
「昨日出たあれ、いいからもう一度やって」って、
メンバーにそれとなく伝えることもあります(笑)。 |
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それはもう、仲間と共犯になるわけだ。 |
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うん、共犯、共犯。
あれをもういちど、
今日のお客さんにも聴かせてやってって
思うんです。 |
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逆に、どうやっても
「まったく同じになんかなりっこない」っていう
ジャズメンとしての自信も、あるわけですね。 |
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それは、そうです。
今日しかできないことを
いろいろやるなかで、
どこかで自分の決め技が出てくる。
でもどこでどう出てくるのか、出てこないのか、
そのへんは、永遠にスリリングなわけで。 |
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その‥‥なんていうんだろう、
いま、いちばん「世の中にないもの」だと思うんです。
そういう「不確定なもの」って。 |
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ああ、なるほどね。 |
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うん、そんなのみんなのまえに
出しちゃいけないという感じさえある。
音楽番組なんか見てても、
リハーサルでつくりこんで、
こうしたほうが安全だから
こういうふうにしましょうっていうのを
繰り返してるだけじゃないですか。
何が出るか分からないものって
出ちゃいけないとされてる。 |
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うん、うん。 |
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でも、ジャズって、その真逆。
同じことやったら「バレる」わけですから。 |
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これはねぇ‥‥スリリングですよ。
現場に居合わせないと、わからない。 |
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< 続きます > |